新商品発売を機にBtoB ECを開始 「顧客目線」で高めたデザイン性とユーザビリティ
「TAJIMA」ブランドの建築用工具を展開する株式会社TJMデザインは、顧客が自由にカスタマイズして使える新商品の発売を機に、BtoB ECサイトを立ち上げた。こだわったのは、デザイン性とユーザビリティ。サイト構築には受発注・請求・営業をDX推進するBtoB ECプラットフォーム「Bカート」を使用し、EC事業領域のコンサルティングで多くの実績を持つ株式会社久の支援を受けた。両社はどのように連携し、強い信念を形にしていったのか――。TJMデザインの馬場氏と久の小山氏に話を聞いた。
従来の受注サイトでは実現できないカスタマイズ
――まずはTJMデザイン様の事業概要について教えてください。
株式会社TJMデザイン 経営サポート本部 DX推進部 マネージャー 馬場氏(以下、TJMデザイン・馬場) 当社は創業100年を超える建築用工具の総合メーカーです。取り扱うアイテム数は約3000。埼玉の秩父と中国・上海に工場を構え、カッターやコンベックス、のこぎり、レーザー墨出し器など「TAJIMA」ブランドの製品を製造・販売しています。
――どのような経緯でBカートを導入することになったのですか。
TJMデザイン・馬場 導入のきっかけは「セフボックス」の発売です。当社では職人が工具などの作業用具を腰に下げて使えるセフホルダーを製造していますが、工具を収納するための工具箱(セフボックス)を新たに発売することになりました。セフボックスは色を選べたり、名入れができたりする仕様なのですが、従来の発注サイトではこの対応ができなかったため、これを良い機会と捉えてBtoB ECに挑戦することになりました。
いくつかのカートシステムを検討しましたが、BtoB取引を前提として開発されたSaaSであること、そして基幹システムとのデータ連携ができる点が決め手となり、Bカートを導入することになりました。導入は2023年の夏で、社内検証を経て2024年1月から本格的に稼働しています。
――販売店・代理店向けと建築会社(ユーザー)向けに2つのサイトを構築したと伺いました。これにはどのような狙いがあるのでしょうか。
株式会社久 取締役 小山氏(以下、久・小山) 最初からそのような構想があった訳ではありません。総合的なBtoB ECサイトも検討しましたが、導線や受注後の作業フロー、ユーザビリティを考慮して2つのサイトを構築することをご提案させていただきました。
TJMデザイン・馬場 企業間取引特有の商習慣をふまえた上で、当社側の負荷が高くならない業務フローをご提案していただきました。こうしたECビジネスは当社にとって初めてのチャレンジですが、BtoB ECの総合支援で多くの実績がある久様は本当に心強いパートナーだと感じます。
“顧客目線”で高めたデザイン性とユーザビリティ
――今回サイトを構築するにあたり、特にこだわった部分はありますか。
久・小山 サイトデザインとユーザビリティにはこだわりました。具体的には、ユーザーが選択したカラーに合わせ、シミュレーション画面上のセフボックスの色も変わるような仕様にカスタマイズしました。また、名入れの際はキーボードで打ち込んだ文字がそのまま画面に反映されるよう工夫しました。いずれも重視したのは「顧客目線」です。商品のイメージをいかに伝えるかということにフォーカスし、従来の受注サイトでは実現できなかったユーザビリティを実現しました。
――「TAJIMA」は創業100年を超える建築工具の老舗ブランドです。世界観やイメージを引き継ぐために、どのような工夫をされたのですか。
TJMデザイン・馬場 BtoB ECサイトでは、製品画像をクリックすると公式ホームページに遷移し、詳細なスペックを見られる仕組みになっています。双方のページで表現や写真に齟齬があるとブランドの世界観が壊れてしまうので、BtoB ECサイトはピクセル単位で文字や画像の配置を調整していただきました。
久・小山 ブランディングの観点からするとイメージの引き継ぎは重要ですが、ECサイトの最終目的は物を売ることです。TJMデザイン様のご要望を加味した上で、 ブランドの世界観を担保しながら ユーザビリティを向上させるUI/UX設計や、受注データを基幹システムや倉庫管理システム(WMS)に流す仕組み作りが今回の構築のポイントでした。
――BtoB専用SaaSのBカートは標準機能が充実していますが、株式会社久様に構築を依頼したからこそ、実現できた仕組みはありますか。
TJMデザイン・馬場 標準機能では実現できなかったセフボックスの色や名入れのイメージを具現化していただいたのはもちろんですが、先ほど小山さんがおっしゃったように、基幹システムとデータ連携できることが当社にとっては大きな魅力でした。
久・小山 当社では「ECコネクター」という、異なるサービス・システム間のデータ変換・連携が簡単にできるクラウドサービスを提供しています。これにより「Bカート」の受注データを基幹システムに連携したり、会員データをMAツールに連携したりできるようになります。TJMデザイン様の場合、既存の受注サイトでは基幹システムとの連携がお済みでした。新たなBtoB ECサイトではそのフローを崩さないためにも、「ECコネクター」が役立ちました。
基幹システムとデータ連携も大きなメリット
――既存の商慣習や業務フローを考慮すると、企業間取引のEC化に踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
TJMデザイン・馬場 そうですね。確かに既存のシステムをガラッと変えるのはリスキーですし、取引先からの反発があるかもしれません。そういう意味では、当社にとってもBtoB ECサイトの開設は挑戦でした。ただ、既存の受注サイトでは実現できなかったことができるようになったり、さまざまなデータを連携する体制が整ったりと、多くの点でメリットを感じています。
――Bカートを導入して、成功しやすいのはどのような企業でしょうか。
久・小山 一概には言えませんが、TJMデザイン様のように導入の目的が明確な企業は成功の確率が高いと思います。目的や課題を明確にしないままBtoB ECサイトを作ってしまうと、複数システムのデータ管理に手間と時間がかかり、結局サイトを閉鎖してしまうことにもなりかねません。業務を効率化し、しっかり売上を伸ばすためにも、Bカート導入の際は基幹システムとのデータ連携など業務全体の自動化も併せて進めた方が良いと思います。
TJMデザイン・馬場 サイト構築後、自走できる環境を整えられるかどうかも重要です。当社も導入直後は久様にさまざまなサポートをしていただきましたが、Bカート自体が非常に使いやすいシステムなので、今では事業部門の担当者がひとりで運用できるようになりました。
――最後に、今後の目標や展望についてお聞かせください。
TJMデザイン・馬場 セフボックスだけでなく、今後カスタム品も増えていきますので、商品カスタムに合わせたリアルなイメージをBカートを通してユーザー様に届けられたらと思います。
久・小山 TJMデザイン様は別事業として、システムキッチンや厨房機器も扱っておられますので、そちらでもBtoB ECサイト構築のお手伝いができればいいなと思います。