サプリメントの越境EC展開、やってみてわかった日本国内展開との違い【アジアンブリッジ×ヴェントゥーノ セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

越境ECを成功させるためには良質な商品を開発するだけでなく、販売する国の文化に適したサービスの提供も必要になってくる。日本国内では売上に直結しにくいサービスが海外で思わぬ効果を生むことや、日本では当たり前であることが海外で通用しないこともある。

今回は2024年10月17日にECのミカタが開催した「越境ECカンファレンス」から、越境ECに取り組んで感じた“日本国内と海外の違い”について解説したアジアンブリッジ株式会社 代表取締役社長 阪根嘉苗氏と株式会社ヴェントゥーノ チーフ 三好清胤氏の対談の模様をお届けする。

台湾への越境ECで感じた、6つの「良い」違い

株式会社ヴェントゥーノ(以下、ヴェントゥーノ)は、健康食品や化粧品の通販を行なっている会社だ。2018年に越境ECを開始し、台湾に向けて酵素腸活サプリや口臭ケアサプリ、美白クリームを販売している。

そのヴェントゥーノの越境ECをサポートしているのが、アジアンブリッジ株式会社(以下、アジアンブリッジ)だ。同社はビューティー&ヘルスケア領域の日本商品を中心に、台湾およびタイでの流通支援を行っている。ECだけでなくモール運用や店舗展開、貿易まで一気通貫して事業者のサポートをしている。

アジアンブリッジ株式会社 代表取締役社長 阪根嘉苗氏(以下、アジアンブリッジ 阪根) ヴェントゥーノ様は台湾に3つの商品を越境ECで販売されており、国内のECにも以前から取り組まれていますが、両者の違いを感じることはありますでしょうか。

株式会社ヴェントゥーノ チーフ 三好清胤氏(以下、ヴェントゥーノ 三好) 台湾への越境ECを通じて感じた国内との「良い」違いは6つあります。

1. 日本のECを横展開しやすい
2. まとめ買いの文化がある
3. 商戦の時期が多い
4. KOL、インフルエンサーの影響力が強い
5. Eメールの開封率が高い
6. アンケートの回答率が高い

まず台湾は親日国であることがあげられます。また、日本だとインフルエンサーの発信から直接購入につながるケースは少ないですが、台湾では直接購入につながるケースが多く見られます。過去に約30万元で依頼したインフルエンサーの発信に対して、20万元強の直接の売上があがったこともありました。さらに、インフルエンサーの素材を二次利用した期間では、CPOが35%改善した結果も出ています。

アジアンブリッジ 阪根 Eメールを使った販促施策に関しては、どのような効果の感じていらっしゃいますか。

ヴェントゥーノ 三好 私たちが台湾で配信しているステップメールの開封率は平均すると50~60%です。日本だと10~20%を想定しているので、台湾の方の開封率の高さには驚きました。メールだけでなくアンケートの反応もよく、170人に回答を求めたところ約30人が回答してくれました。5人ほどを想定していたのでこれも驚きでしたね。

アジアンブリッジ 阪根 日本の商品に対する関心の高さは台湾の特徴の一つです。特にヴェントゥーノ様の商品は日本製なので、一度購入してくださったお客様も注目してメールを見続けてくれているのだと思います。

では、まとめ買いについては具体的に何個で買われるお客様が多いのでしょう。

ヴェントゥーノ 三好 まとめ買いは、3個・5個・10個あたりまでがよく買われる個数です。一番多いと感じるのは、3個買いで(日本円にして)1万円前後の金額感です。特に商戦時期になるとお客様の購買意欲は高まります。そこで、まとめ買いのオファーを作ったところ、7割ほどのお客様がまとめ買いをしてくださりました。平均の客単価も1万6000円~1万7000円に高まりました。

アジアンブリッジ 阪根 まとめて安い時期に買い、家族や友人に配る商習慣が台湾にはあります。この点もまとめ買いにつながる理由だと思います。

株式会社ヴェントゥーノの商品 画像提供:アジアンブリッジ株式会社/「ECのミカタ 越境ECカンファレンス2024」登壇資料より

コールセンターの活用で返品率低下を実現

アジアンブリッジ 阪根 ここまであげていただいた「良い」側面がある一方で、台湾の越境ECで感じるネガティブな面もお聞かせください。

ヴェントゥーノ 三好 ネガティブな面は3つあると感じています。

1. 返品率の高さ
2. 物流コストの高さ
3. 決済方法が少ない

日本だと返品はあまり発生しません。台湾に限らず越境ECならではかもしれませんが、返品率が10%を超えてくるケースもあります。

アジアンブリッジ 阪根 台湾の消費者は法律で手厚く守られており、ECで購入した商品は受け取っても開封しても返品できる制度になっています。越境ECの場合、台湾国内の法律は対象にはなりませんが、台湾の消費者は返品に慣れているので日本よりも高い返品率になると考えられますね。

ヴェントゥーノ 三好 返品率を5%まで低下させようと、私たちはコールセンターを活用しています。日本とは異なり、台湾の方は半分以上の割合で電話に出てくれます。直接話すと意外と素直に受け取ってくれるケースも多いですし、アウトバウンドで電話の営業をすると「(電話を)待っていました」というほどの温度感で話を聞いてくださるので効果的です。コールセンターを活用した営業でも利益を10〜15%ほど残せています。

アジアンブリッジ 阪根 台湾の方はコミュニケーションをとるのが好きな傾向がありますよね。物流コストと決済方法についてはいかがでしょう。

ヴェントゥーノ 三好 日本の送料と比べると2倍以上かかってしまうので、売上に占める送料の割合がどうしても高くなってしまいます。

また、越境ECでは決済方法が数種類しかなく、現地の人が好む決済方法が使えません。そのため、お客様の選択肢が狭まってしまいます。

アジアンブリッジ 阪根 タイの決済方法はオンラインバンキングやモバイルバンキングでの「銀行振込」が多く、台湾では「コンビニ受け取り・コンビニ決済」や「代金引換」が一般的です。しかし、越境ECでは使えない手法ですよね。越境ECで使えるのは「クレジットカード決済」や、日本の事業者による「後払い決済」です。

パートナー企業と連携すれば課題も乗り越えられる

アジアンブリッジ 阪根 ヴェントゥーノ様は6年間、越境ECに取り組まれていますが、振り返って「スタートする前に知っておきたかった」といったことはありますか。また、これから越境ECを始める事業者様にメッセージをお願いします。

ヴェントゥーノ 三好 定期購入の継続率や返品率、物流コスト、国民性などを知っていれば、より戦略を組んでから開始できたのではと感じています。

越境ECを始めるにあたって言語の壁を気にする人は多いかもしれませんが、パートナー企業で日本語を話せる会社も多いので心配はいりません。私がパートナー企業を選ぶときに重視しているのは、レスポンスが早いことと現地に拠点があること、そして実績があることです。越境ECの立ち上げは大変ですが、展開する過程での学びを多く得られるので、ぜひ積極的に挑戦していただきたいです。

阪根 嘉苗(さかね かなえ) アジアンブリッジ株式会社 代表取締役社長
2004 年 リクルートグループに入社。営業部、人事部を経て2010 年にアジアンブリッジ株式会社を設立。日本企業の台湾進出のコンサルティング事業をスタートさせ、日本のベンチャーの4社の台湾ローンチを支援。2016年より日本のD2Cブランドの対台湾および対タイ消費者向けの販売の一気通貫支援を開始。ビューティー&ヘルスケア領域の大手を中心にのべ100億以上の海外流通を実現する。早稲田大学大学院卒 アジア太平洋研究科卒

三好 清胤(みよし きよつぐ) 株式会社ヴェントゥーノ チーフ
2015年4月に新卒入社。2018年2月に「事業領域拡大」を目的として発足した「インバウンド事業プロジェクト」にジョイン。後に「越境EC」にも勝機があると判断し、同プロジェクトにて2018年5月より台湾越境ECを開始。市場調査からパートナー企業の選定、マーケティング戦略や売場づくり、商品販売後の分析や商品在庫、債権の管理、事業計画の策定などの業務に携わる。現在も、収益性の向上、売上の拡大をモットーに日々取り組む。一番好きな国はベトナム。


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