
食品ECのCV率UP! 自社ECでギフト購入を増やす動線&UI改善ポイント
おいしい食品は贈り物・ギフトの定番だが、日本における「食品、飲料、酒類」のEC化率は約4%と低く(※1)、食品はまだまだECとしての伸びしろのある領域と言える。では、その食品ECでギフト購入を促進するために、事業者はどんなことに取り組めばよいのだろうか? 今回は、創業以来一貫して自社ECサイト構築支援サービスを手掛け、食品自社EC特化型カート「aiship for Food」も展開する株式会社ロックウェーブの種田雄太氏によるセミナー「食品ECのCV率UP! 自社ECでギフト購入を増やす動線&UI改善ポイント」の模様をレポートする。
本レポートは2025年3月に開催したオンラインカンファレンス「食品ECカンファレンス ~今取り組むべき最新事例を公開~」でのセミナー内容を基にしています
「地元」と「ギフト」――データに見る食品EC成功のキーワード
種田氏はセッション冒頭、原価率の高さや、賞味期限・温度帯管理といったオペレーションの複雑さ、送料のハードルといった食品ECならではの難しさを指摘。さらに、元々実店舗を運営している事業者がECに参入するケースが多く、EC専任者のリソースが不足しがちであることも課題だという。
一方で、ロックウェーブによる調査データからは「食品ECで成功する」ショップの傾向も見えてきたという。種田氏は、同社顧客の直近30万注文から抽出したデータから、北海道・京都・福岡の3地域のピックアップ(※2)。3道府県では、EC注文の平均約1/4が本店所在地と同じエリアからの注文で、最も多かった菓子店ではなんと約39%が同一エリアからの注文だった。この数字から、オフライン上の認知の高さがEC利用につながり、ECが地元の顧客にも多く利用されていることがわかる(もちろん食品メーカーやDtoC専売の食品ECの場合には当てはまらないが)。
さらにロックウェーブでは「本店所在地と同一県内に住むユーザーが、配送先として指定した住所と注文した住所の一致率」を調査。その一致率は、年商規模約5000万円以上の(主に食品を取り扱う)ECショップのほうが、同約5000万円以上のショップよりも顕著に低かったという(※3)。これは年商規模の大きなショップほど注文者が別のエリア・人を配送先として指定していることを示しており、つまり、売れている食品ECほど、地元のユーザーがECサイトを利用して、贈答目的=ギフトとして購入することが多いと、種田氏は結論付けた。
「このように食品とギフトは好相性です。ギフトに対応することで季節のイベントごとに1年を通して販促できますし、自家需要に比べて単価の向上も見込めます。そして最も魅力的なことは、ギフトを受け取った方が新しいお客様になってくれる=新規顧客獲得の可能性です。気に入ってもらえればリピート購入も期待できます」(以下、発言部分は全て種田氏)。
ポイント1:「おいししそう」に見える商品画像への注力
続いて種田氏は本セッションのメインとなる、《CVをアップさせる食品ECサイトの改善ポイント》を解説。1つ目に挙げたのが「商品画像の見直し」だ。食品ECでは「おいしそう!」と感じさせる、いわゆるシズル感のある写真が購入意思決定に直結する。温かさの伝わる湯気や味を想像させる断面の見せ方、ツヤや奥行きの演出など、視覚的においしさが伝わる写真の工夫は欠かせない。
「当たり前と思われるかもしれませんが、写真はダイレクトにCVを上げる重要な要素。主力商品以外も『おいしそう』な写真が掲載できているか確認いただきたいです。実際、ECサイトを利用する75%のユーザーが商品写真を頼りに購入を検討し、約半分のユーザーはレビューや説明よりも大きくて鮮明な写真を重視するという調査結果もあるほど(※4)。さらにギフト用途の場合は、箱や包装、手さげ袋なども掲載し、どんなふうに相手に届くか、渡せるかという『贈られる体験』までを写真で伝えることが非常に重要です」。
種田氏は「ギフト用である詰め合わせ商品のページになると、写真が箱とパッケージのみで掲載枚数が減りがち」と注意を促しつつ、複数の種類がセットになっている場合でも、それぞれの商品画像を載せることで顧客が安心して購入できるようになると解説。同氏が好例として挙げたのは京都の老舗米屋、八代目儀兵衛のギフト用ECサイトだ。詰め合わせギフトの商品画像として《開封したところ→外梱→個包装→中身》の順で写真を並べられていて、贈られた人の『体験』を提示するとともに内容を直観的に説明する効果もある。
画像提供:株式会社ロックウェーブ(カンファレンス登壇資料より)
ポイント2:「間に合わない」ユーザーには代替とeギフトを提案
2つ目のポイントは「いつ届く?を早めに伝える」こと。「カートに追加する前の商品詳細ページに、『最短お届け日』を目安として表示することで、ユーザーの不安を解消できます。記念日や特定のイベントに合わせたギフト購入では、『いつ届くのか』が意思決定を左右します」。また、「○時までの注文で最短○日着」といった提示は、注文が遅くなると希望日に間に合わないことを知らせ、“今すぐ”の注文を促進する副次的な効果もあるという。
さらに、「配達日画面(お届け予定日の表示)でユーザーが離脱している場合は、『間に合わないこと』が離脱要因であることは明らか」と種田氏。これに対して、無理をして物流を早める以外にも対策はある。
「希望日に届けられない場合、配達予定日を表示している場所の近くに代替品や即日発送可能商品を紹介しているページへのリンクを設けることで、離脱を防げます。例えば好きな菓子店のECサイトでギフトを購入する場合、『クッキーが間に合わないなら、フィナンシェでもいいかな』と思うお客様もいるはずです」。
画像提供:株式会社ロックウェーブ(カンファレンス登壇資料より)
「間に合わない」お客様への提案としてもう一つ種田氏が挙げたのがeギフト(ソーシャルギフト)だ。eギフトは、相手の住所や電話番号を知らなくてもSNSやメールで受取用のURLを知らせることでギフトが贈れる仕組み。eギフトなら母の日や父の日といったイベント当日であってもWebのメッセージカードを付けて“その日”に贈ることができる。
さらに種田氏は、実店舗でも広く販売している商品に限って、ECサイトに取扱い店舗一覧ページへの導線を用意し、実店舗へ案内することも提案。事業者として商品を販売できるうえ、顧客は特定日に間に合わせることができるので、実装できれば親切な案内となる。
ポイント3:操作負荷の低いUIでスムーズな購入体験を実現
種田氏が挙げた最後のポイントは「ギフトオプション選択をスムーズに」。ギフト需要を確実に取り込むには、熨斗(のし)やラッピングといったオプションをスムーズに選べるUIも重要だ。選択肢が多いほどオプション選びはユーザーにとって煩雑になりがちなので、画像クリックで直接選択できるインターフェースや、ギフト用途を選択すれば選択肢が自動で絞り込まれる機能を実装することで、スマートフォン上でも直感的な操作が可能になる。
画像提供:株式会社ロックウェーブ(カンファレンス登壇資料より)
「『目的・用途を先に選択してもらう』ことはユーザーの負担を減らすだけでなく、事業者側にもメリットがあります。例えばマナーにそぐわない注文が来た場合に電話などで直接確認する必要がなくなるため運用効率が向上します。また、“選択”自体がユーザーの利用目的を知るアンケートにもなるため、季節のイベント以外の注文データを集められます」。
ECで食品ギフトを購入する場合、ユーザーは自分で手に取っていない分「どんな商品か、より理解したい」「きちんと届けることができるか」といった不安を抱いている。種田氏が挙げた3つの改善ポイントは、こうしたユーザーの不安をECサイト上で解消していくことに他ならない。ギフトを軸に食品ECでCVアップを図るための、サイト改善のヒントが詰まったセッションとなった。
画像提供:株式会社ロックウェーブ(カンファレンス登壇資料より)
※1:「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」において、物販系分野のBtoC-ECで「食品、飲料、酒類」の市場規模は2兆9299億円、EC化率は4.29%となっている(2024年9月発表 経済産業省)
※2:年商規模を問わないそれぞれの都道府県ごとに複数のショップを含む直近300,000注文の注文者の都道府県のみを対象に抽出
※3:おおよその年商規模でグルーピングした10社ずつ、直近の7万5000注文を対象
※4:Retail Technology Review、Indeed、LinkedIn、Wish Pond、Understanding Ecommerce、Deep Image
同志社大学法学部卒。株式会社ニトリにて複数店舗でのマメジメント業務を経験した後、2021年1月株式会社ロックウェーブに入社。カスタマーサクセス、フィールドセールス、プロダクト開発部門、幅広いポジションからECサイト構築の支援を担当。現在はプロダクトマーケティングマネージャとして、市場のニーズをプロダクト「asihip」に反映させる一貫で、自社のマーケティング施策全般に従事している。