Makuake STORE「大手モール一括展開」の勝算 応援購入の“その後”を救う一手を公開
応援購入サービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケが、2016年にスタートさせた「Makuake STORE」事業において新たな動きを見せている。2025年10月、同社は楽天市場、Yahoo!ショッピング、TikTok Shopという大手ECモールに「Makuake STORE」を出店。この各種モール内Makuake STORE(以下、Makuake STORE for ECモール)は、「Makuake STORE」で商品を販売している各事業者が個別に契約することなく、大手ECモールへ販路を拡大できる仕組みだ。
この「Makuake STORE for ECモール」は、すでに実証スタートから半年間で出品数が300品に迫り、毎月70品ペースで新規の出品が増え続けているという。そもそも「Makuake STORE」は、「Makuake」でのプロジェクト成功を経て一般販売された商品を扱うECプラットフォームだが、2025年10月から本格始動したモール版は「『Makuake』で実績を作った後に、一般市場で継続的に販売しにくい」という課題に対する早期解決策と位置づけられるだろう。
今回は「Makuake STORE for ECモール」出店の戦略と展望について、同社 執行役員 グロース本部 本部長の菊地凌輔氏に話を聞いた。
手間なしで3大モールへ出店! 「運営・物流・販促」を丸投げできるモデル
「Makuake STORE for ECモール」のスキームはシンプルかつ合理的だ。マクアケ側が楽天市場、Yahoo!ショッピング、TikTok Shopという集客力のあるプラットフォームに公式店として「Makuake STORE」を出店。事業者は自社で店舗構築や運営を行うことなく、「Makuake STORE for ECモール」に出品する形で一般販売を実現できる。
マクアケは販売ページ作成などのプロモーション、倉庫での保管、発送業務までを代行する。事業者が負担するのは、売上高に対する一定の手数料と、保管料・送料のみだ(ギフトラッピングにも対応)。
「Makuake STORE for ECモール」は、楽天市場とYahoo!ショッピングには実証フェーズとして2025年4月、TikTok Shopには同年8月に出店した(ここからの実証フェーズを経て10月から本格始動)。2025年11月5日時点で出品数は296品に達し、このほかに360品が出品内諾済みだという。利用事業者の中心は中堅・中小企業や個人事業者。リソースが限られがちな事業者がこの仕組みを活用し、出品から数カ月で各モールのカテゴリ上位に食い込む事例も生まれている。
菊地氏は、「支援体制が整い、毎月70商品を市場に投入できるペースになりました。想定以上のスピードで拡大しています」と手応えを語る。

画像出典:Makuake STORE 楽天市場店
「Makuake」で成功しても一般販売で苦戦――“1000万円の壁”の正体
なぜ今、マクアケが「販売代行」に注力するのか。そこには明確な課題意識があった。
菊地氏によると、応援購入サイト「Makuake」を利用したことのある約500社への調査で、以下の実態が浮き彫りになったという。
◎ 7割の事業者が年商1000万円以下
◎ 約半数が自社サイト以外の販路を持たず、カートシステム(インスタントEC)利用
※2024年10月調べ
一方で、年商1000万円を超える事業者の7割は、Amazon、楽天、Yahoo!の三大モールに出店していた。つまり、事業をスケールさせるにはモールの集客力が不可欠だが、そこには人材・ノウハウ不足という“1000万円の壁”が立ちはだかっていたのだ。
※2024年10月調べ
「Makuakeでは熱狂的な支持を得てデビューしたのに、一般販売に移った途端、売れなくなる、という声を事業者からも多数伺いました。 “着火”はできても、その火を広げられていない現状があり、単発の打ち上げ花火で終わらせてはいけない。この調査結果は正直、忸怩(じくじ)たるものでした」(菊地氏)。
この課題感から生まれたのが、「Makuake」と「Makuake STORE for ECモール」が連携することで販路の拡大を実現する体制だ。デビュー段階(ゼロから1への支援)から事業成長段階(1から∞への支援)へと、売上高1000万円の壁を乗り越えるための一気通貫の仕組みが整えられた。特にTikTok Shopへの展開は、動画の質が売上を左右するため、ガジェット系動画クリエイターを社員採用して動画制作やライブ配信をサポートするなど、プラットフォームの特性に合わせた支援を行っている。
「Makuake」の“資産”がモールを制する“最短距離”を示してくれる
大手ECモールへの出店から約半年が経過し、「Makuake STORE for ECモール」ならではの“勝ち筋”も見えてきた。単なる出品代行にはない独自の特徴やメリットは以下の3点だ。
事業者が個社で出店しても検索上位になることは少なく、売上高の伸びも期待しにくいだろう。しかし、どのECモールでも「マクアケ」や「Makuake」という検索が一定数確認され、「あのMakuakeの公式店が、このモールにもあるのだ、と認知され、それが出品事業者への信頼にもつながっています」(菊地氏)。「あのMakuake発の商品なら」という認知が、ブランドの信頼性を担保し、購入のハードルを下げているのだ。
通常の新商品はレビューゼロからスタートするが、「Makuake STORE for ECモール」の商品は、デビュー時の熱量の高い応援コメントや顧客属性データをプロモーションに転用できる。ある大手飲料メーカーの新商品では、「Makuake」でデビューし、すでに多くのサポーターレビューが蓄積されていた。それを分析したプロモーション策が練られたことで、「Makuake STORE for ECモール」を通じての販売では、通常なら1年かかる「認知→収益化」のサイクルの数カ月短縮に成功したという。
そもそも「Makuake」と大手モールでは、いわゆる客層が違う。またモールごとにも人気商品や客層に違いがある。「楽天向きの商品か?」「TikTok向きか?」と自社で全モールに出店して検証するのはコストがかかるが、「Makuake STORE for ECモール」なら一括で出品し、どの客層に刺さるかをテストマーケティングで見極めることができる。
なかでも「レビュー資産」の活用は、最大の武器だ。
「通常、大手メーカーでも新商品は、初年度は割引販売をして認知度を高め、収益化は2年目以降というのが普通です。しかし『Makuake』と『Makuake STORE for ECモール』が連動することで、初速から利益を出せるモデルが証明されつつあります」(菊地氏)
マクアケが掲げるビジョンは「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」。「Makuake」で生まれた火種を、「Makuake STORE for ECモール」という新たなエンジンで大きく広げていく。EC事業者にとって、この一気通貫モデルは「リソース不足」と「販路拡大」を同時に解決する強力な選択肢となりそうだ。


