国分グループ本社とヤマトHD、共創戦略で高齢化・過疎化・物流問題に挑戦

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大矢根 翼

左:国分グループ本社株式会社 代表取締役社長執行役員 兼 COO 國分晃氏、右:ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長 長尾裕氏

国分グループ本社株式会社(以下、国分)とヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトHD)は、「持続可能な地域社会の創造に向けたパートナーシップ協定に関する記者説明会」を2026年1月15日に開催した。登壇したのは、国分グループ本社株式会社 代表取締役社長執行役員 兼 COO 國分晃氏、同社 取締役常務執行役員 山崎佳介氏、ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長 長尾裕氏、ヤマト運輸株式会社 取締役副社長執行役員の恵谷洋氏。

両社は人口減少・高齢化、物流2024年問題、一次産業の担い手不足、気候変動など、「一社では解けない課題」に対して、商流(国分)と物流(ヤマト)の強みを結集する。

食の地域課題が深刻化

冒頭、國分氏は社会課題の複雑化と深刻化に触れ、「高齢化や人口減少による買い物困難者の増加、一次産業の担い手不足、物流2024年問題、そして気候変動による食の安全安心への新たな挑戦など、これらは一社単独では到底解決できない課題」と述べた。

食品流通の知見と地域ネットワークを持つ国分と、全国を網羅する物流インフラと現場力を持つヤマトHDの両社のパートナーシップにより、「食のサプライチェーン全体を強靭化し、地域社会に新たな価値を提供できる」と國分氏。

画像出典:「持続可能な地域社会の創造に向けたパートナーシップ協定に関する記者説明会」資料

長尾氏は生鮮品のスピード輸送による流通拡大や、地域の移動販売・移動支援など、物流網を地域課題の解決に転用してきた取り組みを紹介。「今回の協定を通して社会・環境・地域に顕在化する様々な課題と向き合うことは、(ヤマトグループの)中期経営計画『サステナビリティ・トランスフォーメーション2030』を推進する原動力」と位置づけた。

また長尾氏は、パートナーシップを踏まえてロジスティクス拠点の活用など、全国の経営資源を活用して「運ぶ」にとどまらない付加価値を提供していくと語った。

5つの共創テーマで「つなぎ直す」

協定の具体像について、山崎氏は「持続可能な地域社会の創造」というビジョンのもと、5つのテーマで整理した。対象となる社会課題は、食料調達および卸売業の持続性、特に高齢化が進む地域での一次産業の持続性、宅急便に必要な地域拠点の維持、買い物困難者の顕在化。「地域課題を解決した先に企業発展がある」と、課題の顕在化と同時に高まる食へのグローバルな関心も強調した。

▼共創領域① 買い物困難地域における移動販売・定置販売拠点の構築
買い物困難地域への卸売事業として、国分グループは2010年に「国分ネット卸」をスタートした。サービスは拡大しており、ヤマト運輸は北海道を中心に移動販売や定置販売網を構築している。

今回の取り組みでは、販売網を全国へと拡大することで、「国分グループの各地域の物流センターからヤマト運輸様の営業所をつなぎ、山間部や離島などへの食品や生活必需品をお届けする仕組みを構築していきたい」と山崎氏は語る。

国分グループ本社株式会社 取締役常務執行役員 山崎佳介氏

▼共創領域② 地域営業拠点・施設を活用した生産地型集約拠点の構築
物流2024年問題や生産地の労働力不足で、生産地から消費地の物流が弱まっている現実に対し、ヤマト運輸の営業所・集配網を集約機能として活用するという。集めた商材を国分側が加工・商品化することで、生産者の手間を減らしながら多様なニーズに応えることで収入拡大も狙う。

具体的には、各拠点で車両が出庫した後のスペースで青果などを扱うほか、生産者の生産プロセスの一部を担うフルフィルメントセンターとしての役割が期待されている。

画像出典:「持続可能な地域社会の創造に向けたパートナーシップ協定に関する記者説明会」資料

▼共創領域③ 航空機(フレイター、ベリー)、宅急便ネットワークを活用した遠隔地間での食品流通の拡大
「少量生産や短い消費期限のために商圏が地域にとどまっている魅力的な商品が多数存在する。それらを物流でまとめ、大きな物流単位とし、他地域で流通させることで、新たな商流に変えていける」(山崎氏)

時間制約の大きい食品流通では、ドライバー不足に加え「鮮度の壁」がある。ヤマト運輸の航空輸送力とネットワーク、国分の仕入れ基盤を掛け合わせて国内外における食品流通の強化を狙う。

▼共創領域④ 都市部におけるプロセスセンター(流通加工施設)や在庫型センターなどの消費地型拠点の構築
品質劣化リスク、店内加工の省力化ニーズの高まりを背景に、低温プロセスセンターを整備する。「地球温暖化による猛暑で、夏場には青果物などの品質劣化が問題になっている」と、山崎氏は青果物のプロセスセンターを大田市場近郊に開設する計画の背景を語った。現場はすでにオペレーションの準備段階に入っているという。

画像出典:「持続可能な地域社会の創造に向けたパートナーシップ協定に関する記者説明会」資料

▼共創領域⑤ 生産者と小売や外食事業者、消費者をつなぐダイレクトマーケットの創出
「地域の特色ある商材や生産者とのつながりを求める声が多く、一方で生産地側では、その発掘や販路構築にかけられるリソースが不足している」と山崎氏。同時に物流ネットワークに存在する需給ギャップを、ヤマト運輸と国分の顧客基盤に紐づけることで解決することを狙う。

ヤマト運輸の顧客・生産者接点と、国分の小売業・外食事業者ニーズを組み合わせた価値創造に加え、ヤマト運輸のECプラットフォームを活用したDtoCマーケットの機能構築も進めるという。

物流網の再編集で持続可能な食品インフラへ

今回のパートナーシップ協定は配送量を増やすだけではなく、生産地から消費地までの各工程に存在するボトルネックに対応して拠点やネットワーク機能を再編集する。

長尾氏は「全国に約2,800の集配拠点があるが、すべてが宅急便単独で経済的に成立するとは限らない」と説明した上で、地域の実情やニーズに合わせて既存拠点に新たな機能を加え、サービスとして成立させていく考えを示した。

同時に國分氏は生産者の経済状況に対する危機感も示し、食品生産の持続可能性を高めるための施策として「生産地型集約拠点の構築」で触れられた負担の軽減を挙げた。

長尾氏はD2CのEC事業者としての食品生産者に関して「仕組み自体は確かに作りやすくなっていると思うが、それが消費者の目に届くかどうかはまた別問題。今後の支援としては事業者様の売り場を提供すること、あるいはプロモーションを支援することが重要」と語った。期待が寄せられるのは国分の全国的なB2Bネットワークと、ヤマトHDが持つ5000万人規模の顧客基盤だ。

長尾氏は「地域の旬の商品などを紹介する売り場として機能を持たせるのは、今後十分可能性がある」と語り、「ヤマトフードマーケット」などが地域色豊かなECプラットフォームへと発展する可能性も示唆した。

画像出典:「持続可能な地域社会の創造に向けたパートナーシップ協定に関する記者説明会」資料

魅力的な商品があっても、消費者に認知され・手元に届けられなければ生産者の生計を支えられない。“足のはやい”食品の持続可能な物流ネットワークが構築されれば、多くの商材を物流に乗せられるようになるだろう。こうした物流網を活用することで、これまで企画段階で断念せざるをえなかった新たなEC市場も開拓できるかもしれない。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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