「山と街の境界」をどう攻略する? コロンビアに学ぶ“グラデーション”領域に順応するCX革新
株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン Eコマース&CRM マネージャー 石田顕教氏
「アウトドアの楽しさを、すべての人へ」というブランド哲学を体現するコロンビアスポーツウェアジャパン。登山やキャンプで定評を得たウェア類は、街で着るのに「ちょうどいいデザイン」としても好評だ。
ところが、従来の商品管理で意図しなかった「街」という利用シーンがもたらした課題が浮上した。ECサイト上でのカテゴリ分類や導線設計が難しいのだ。
本稿では、同社 Eコマース&CRMマネージャーの石田顕教氏が、この課題を解決するために最新テクノロジーを駆使してCX(顧客体験)を再設計したアプローチについて解説する。
※本記事は2025年10月開催「ECのミカタ カンファレンス」で行われた石田氏とawoo株式会社 Japan Country Manager 遠藤光一氏とのとのセッションをレポートしたものです
「母の愛」から生まれた、誰かのためのアウトドア哲学
コロンビアスポーツウェアジャパン(以下、コロンビア)は、1938年に米国オレゴン州で誕生した世界有数のアウトドアブランドだ。
日本法人の設立は1997年。長きにわたり愛される同社のブランド哲学「Unlock the Outdoor for Everyone(アウトドアの扉をすべての人に)」は、創業者の娘で“第二の創業者”と呼ばれるガート・ボイルの「家族を想う気持ち」に端を発している。
ガートが夫や息子のために釣り用ベストを手作りしたことがブランドの原点であり、「誰かのために」という視点が根底にある。そのため、アウトドア上級者だけでなく、初心者や日常に快適さを求める人々にも開かれた商品設計が特徴だ。
石田氏はブランドの独自性についてこう語る。
「他のアウトドアブランドが『冒険家』起点であるのに対し、コロンビアは『誰かのため』から始まっています。『ちょっと山に登ってみたい』といった気持ちを持つ人の味方でいること。それこそがブランドのコンセプトであり、テクノロジー開発やEC戦略にも通じる重要なキーワードです」
山から街へ“グラデーション”領域に順応する施策
コロンビアの顧客層は、本格的な登山・キャンプの実践層から、街中でアウトドアスペックを好むライフスタイル層まで非常に幅広い。特に「山でも街でも使える」商品が多く、ECサイト上でのカテゴリ分類や導線設計が難しいという特有の課題があった。
「『ちょうどいいデザイン』のものが多い分、利用シーンのグラデーションが広く、従来のECサイトのカテゴリ分けでは誘導しきれない側面があります。商品設計の意図と、お客様が買う目的をどうマッチングさせるか。そのナビゲーションが大きな課題でした」(石田氏)
この課題に対し、同社はawoo株式会社の最新テクノロジーを活用し、CX(顧客体験)を再設計した。石田氏が紹介した具体的な施策を見ていこう。
1. 店舗接客のロジックを再現する「ファインダーツール」
一つ目は「ファインダーツール」の導入だ。
画像提供:株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン(カンファレンス登壇資料より)
これはバッグ、アパレル、シューズといった主要カテゴリに対し、ユーザーが自分に合った商品を直感的に探せる対話型UIである。
登山・釣り・旅行・通勤といった「使用シーン」や、価格帯、サイズなどを起点に商品を絞り込むことができる。特筆すべきは、従来のディレクトリ構造では拾いきれない文脈を補完するため、店舗接客経験者の知見を活かした質問設計がなされている点だ。マニュアルで構築された誘導ロジックにより、オンライン上でも「接客」に近い提案が可能となり、実際に売上への貢献も確認されているという。
2. エントリー層の背中を押す「WITH OUTDOOR」
「WITH OUTDOOR」は、検索流入を起点にエントリー層との接点を広げることを目的としたオウンドメディアであり、靴の選び方などの入門記事に加え、防災×アウトドアといった周辺文脈を取り入れたコンテンツを展開している。
画像提供:株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン(カンファレンス登壇資料より)
例えば、ペットボトルとヘッドライトで作る簡易ランタンなど、アウトドアギアの汎用性を伝える記事は、購入のハードルを下げるだけでなく、ブランドの世界観を広げる役割も果たしている。
「アウトドアの趣味に一歩踏み出そうと考えている人の背中を後押しするのがブランドミッションであり、それをオンラインで実現するためのメディアという位置づけです。今後はアウトドアに関する深掘りコンテンツを拡充して、リーチからナーチャリングへと段階的にユーザーとの関係性を深めていく方針です」(石田氏)
3. 商品理解を深める「ラベリング技術」
三つ目の施策は、ラベリング技術の活用だ。
画像提供:株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン(カンファレンス登壇資料より)
商品画像を解析し、素材・機能・着用シーン・体験価値などの特徴を自動でハッシュタグ化。「#登山」「#撥水」「#通勤」といったタグを通じて、カテゴリを横断した商品一覧へと誘導する仕組みを構築した。
これにより、ユーザーは検索リテラシーに依存することなく、感覚的に欲しい商品や関連商品を発見(セレンディピティ)できるようになった。特に「山と街」のグラデーション商品が多いコロンビアにとって、従来の検索では埋もれていた文脈を拾い上げる有効な手段となっており、導入後半年でサイト内の回遊性と売上の改善が顕著に表れているという。
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アウトドアの楽しさを、誰もが自分らしく体験できるように──。
コロンビアスポーツウェアジャパンは、創業からの哲学に根ざした「人への想い」と、「テクノロジー」を両輪に、ECにおける顧客体験の最適化を進化させ続けている。


