Amazonマーケットプレイスで最大限の効果を導く秘訣
ECビジネスを考える人にとっては、お馴染みのAmazonマーケットプレイス。自ら仕入れた商品や自社のオリジナル商品をインターネットで販売しようと思い立ったときに、出品しやすく魅力的なプラットフォームだ。でも、お馴染みで、導入しやすいからこそ、すでに商品を出品している人にも、あるいは、これから出品しようとしている人にも、Amazonをどう活用していくべきなのかを今一度、考えるキッカケを作りたいと考えた。今回、話を聞いたのは、Amazonマーケットプレイスに出品している、ペットゴー株式会社(以下、ペットゴー)代表取締役社長 CEO 黒澤 弘氏だ。
適正なペットライフをもたらす「ペットゴー」、Amazonとの経緯、そしてその転機は?
ペットゴーは、2004年に創業したペットに関するITベンチャーだ。もともとは消費者と企業とのペットに関する情報格差を縮小することで、ペットライフをハッピーにしたい考えがあった。つまり、消費者の多くがペットのことを知らないという場合が少なくない一方で、企業もあまり消費者のことを知らずにいる。両者にミスマッチが起き、結果的に「ペットライフがうまくいっていない」というケースもある為、それを埋めるべく、消費者のペットライフに関する情報(ペットデータ)を把握する必要があった、という。「どういう種類」の「どのくらいの年齢」の犬猫を飼っていて、「どこに住んで」いて、「何を購入しているか」、というようなデータは、適正なペットライフを過ごす上で、貴重な情報というわけなのだ。今では、調査の依頼をメーカーから受ける他、その情報自体を多くの人にシェアするなどもしているようだ。
そんなペットゴーとAmazonの出会いは、Amazonが2007年4月に「マーチャント@Amazon.co.jp」(現在の大口出品)を立ち上げた時のことだ。当初は苦戦もした。Amazonの勢いを同社もそれほど実感することはなかったのだ。だが、あるきっかけからAmazonで爆発的にペット用品の販売が伸びることになる。その起爆剤とは何だったのだろう。
黒澤氏は「フルフィルメント by Amazon」(以下、FBA)をあげる。FBAは、Amazonの倉庫に商品を預け、そこで受注管理、出荷業務、出荷後のカスタマーサービスに至るまで、一手にAmazonが請け負う総合的なサービスである。なぜ、それがペット用品で特に必要とされたかといえば、「ペット用品を買うお客様は、その《品揃え》と《配送スピード》に特に強いこだわりをもつ人が多かった」からのようだ。いうなれば、FBAはそこのニーズにきっちり応えていたということになる。
品揃えにも、スピードにも応えうるAmazonのFBAが、ペット用品ユーザーのニーズに合致
まず、《品揃え》についてだが、氏はこう話す。「ペット産業は今、だいたい1兆7千億円くらいになります。そこで、まず売れるのはやはり食べ物です。犬だとペットシーツや、猫だと猫砂も売れるのですが、ペットフードは別格です。それがないと生きていけないものですから、当然といえば、当然です。ペットフードというのは品揃えがすごく多いし、サイズもいろいろあるので、売り上げに占める割合も大きくなります。一方で、500gから、1、3、8キロ等、さすがにそれらを全部自社倉庫に在庫としては置けません。が、AmazonのFBAを利用すれば、お客様のニーズに合わせて、柔軟に倉庫で保管できる」と。種類豊富なペットフード販売におけるポテンシャルを最大限に引き出すAmazonのFBAというサービスが、ペット用品の売り上げの大きな要因となっていると言っても過言ではない。
続いて《スピード》。例えば、売上の多くを占める、ペットフードを注文するシーンを考えてみると、もうすぐ家にあるペットフードが切れそうだから注文するというケースは多いであろう。当然、そのお客様は配送の早さを重視する。ゆえに、受注から出荷まで、全ての工程をスピーディに行うことが求められる事になる。この配送スピードについては「弊社もまた自社ECをやっていて、Amazonにはできて、自社ではできないということがどうしてもある。この配送スピードにこだわるお客様のニーズに自社ECだけで応えることは難しく、AmazonのFBAを利用することで、それらのお客様を獲得することに成功している」と話す。
Amazonが運営する倉庫へ商品を納品し、受注管理、出荷業務、出荷後のカスタマーサービスに至るまで効率よく、また迅速に対応できるFBAというサービスは、顧客満足度を高め、リピーターを生み、出品者への信用も増して、売上を押し上げていく。Amazonがお客様の利便性を第一に考えた結果生み出されたFBAというサービスは際立って、ペット用品を購入するお客様のニーズにもマッチしていたから、黒澤氏はAmazonでの販売の伸びとFBAを強く結びつけて説明するのだ。
海外進出にも活用できるポテンシャルを秘めている
また、Amazonのサービスを使うことで、海外進出が容易にできるだけの可能性も持っていることも同氏は示唆していて、FBAに関連して、こんな話をしてくれた。「ペット用品のメーカーで、ペットの食器を日本で売っていたところがあったのだが、その会社は、オリジナルで作ったかわいい食器を、AmazonのFBAを使って、海外に売り出したところ、その会社の海外での販売比率が5割以上になったというのです」。中国で生産し、日本に仕入れ、そこからアメリカやヨーロッパのAmazonの倉庫にFBAを使って納品する。そうして、全く新しい、欧米ではまねのできないようなペット用品を日本発で拡大していく。そんなことが実際に起こっているのだ。あとは、グローバル展開を視野に入れるEC事業者がふえるにつれ、このようにAmazonのサービスを海外進出の足がかりにして発展していく事例も、今後増えていくだろう。「グローバルでECができるようになっていくのが、これからの主流であって、それがAmazonをプラットフォームとして使い、さらにFBAを活用して簡単に行うことができる。実際、ビジネスをする上で、そこまで考えてぼくたちもやらないと。」とも。
そして、氏の発言を聞いていて、Amazonとの付き合い方次第で、ECの未来も変わってくるのではないか、という印象を抱いたのも事実だ。黒澤氏は「世界最大のECプラットフォームと考える、Amazonの仕組みやサービスを最大限活用することで、世界に通用するECのノウハウを蓄積したい」と話していて、氏にあるのは、もはや単純に売り上げを追うだけでなく、貪欲にAmazonを活用し、そこから吸収した知識や経験を自らECの未来に繋げていこうという、発想なのだ。
Amazonとの付き合い方で、未来も変わる
もしも、「ただAmazonに出品して、あとは売れたら注文のまま出荷しています」といった感覚でいたとすれば、それはあまりに勿体ないこと、と黒澤氏は語っている。のめりこんで、がっちりやれる企業でこそ、その成長の可能性はかなり見込めるのではないか。「いかに商品を早く出荷するか」や「どうやって欠品を起こさないで取り組むか」といった、自社ECの運営だけでは知り得ないノウハウをAmazonから吸収しようという、その“貪欲さ”が、大事だ。Amazonというプラットフォームには吸収できることがたくさんある、としている。
Amazonマーケットプレイスは、圧倒的な集客力とFBAによる物流の強みを持った、強力なプラットフォームである。今回の取材で心に残ったのは、そのプラットフォームにただ頼るだけではない、黒澤氏の主体的な姿勢だった。EC事業者の意識次第で、Amazonは目には見えない価値をもたらしてくれる。それを享受することこそ、このサービスにおける本当の意味なのだと、今回の取材を通じて知らされた。Amazonが築くECの未来は、EC事業者にとっての未来も必ずや明るく照らす。ECの発展は、EC事業者がどれだけAmazonを活用できるか、なのだ。どうか、その門を叩いてほしい。
構成:石郷“145” マナブ