荷物の配達手段は自転車!他には無い「エコ配」の魅力
モノを発送するときに、どういう手段を取りますか。その手段の一つに「エコ配」があります。エコ配は、主な配送手段を自転車とし、CO2の排出量が物流業界平均の約70%と最小の環境負荷での集配を可能とします。地球環境改善に特化したエコロジーな配送方法がエコ配です。そんなエコ配を誕生させた株式会社エコ配の社長室 広報担当 須山嘉揚さんにお話を伺いました。
小荷物専門のエコ配の誕生秘話
「エコ配は2007年7月に開始しました。それまで物流業界では、佐川急便やヤマト急便などトラックを使って大きい荷物を送ることが主流だったので、もう少し小さい荷物に特化したビジネスモデルを追求したところ、自転車でリアカーを引っ張るスタイルにたどり着きました。このスタイルには、トラックでは通ることができないような細かい道を通って配達をすることができるメリットがあります。トラックを大きな血管に例えると、自転車は小さい毛細血管のような宅配便であり、それが弊社の主流です。
エコ配は80サイズまでの小荷物専門で、そのほとんどをリアカーで運ぶことができるため車両維持のコストが安く済みます。お客様にとっては、小さい荷物の方が場所を取らず、何よりもコストを390円に抑えることができるところが魅力です。例えば、東京から大阪まで80サイズの荷物を翌日送ると他社ならば1,000円近くになってしまうところが、エコ配は390円で済みます。」
荷物を送るときに、全てが大きい荷物とは限らない。中には、小さい荷物を送りたい人も居るだろう。エコ配は、その想いを叶えるためにも小荷物に特化した。このエコ配の登場により、小さい荷物でも楽々に送ることができるようになった。
雨の日も風の日も台風の日も配達する、そこにある想い
エコ配では、リアカー1台で約100~150個の荷物を9時から14時までに届けて、16時から19時を出荷の時間にしている。須山さんは「7割近くの荷物が午前中に届く」という。もちろん、天候や道の込み具合によって異なるものの、大体は午前中に届く。たった390円で翌日の午前中に届くという宅配は、おそらく、エコ配だけだろう。さらに驚く点は、大雪が降らない限り自転車で配達している点だ。
「自転車で配達が出来ない時は、大雪で坂が登れない時です。とはいえそれ程の大雪が降る日は滅多になく、私が現場に居た頃は一年に一回程でした。実際に、私は台風の時にも配達したことがあります。他社の配達でもストップするような大荒れの天気の時でも、私は荷物を届けました。お客様も「こんな天気でもエコ配が来てくれたんだ」ととても驚いていました。」
そしてエコ配では、徹底した効率化も行っている。まず、エコ配の配達エリアは、東名阪に特化している。それは、一般的に宅配で荷物が届けられる場所の7割が東名阪に集中しているからだ。さらに、例えば、他の物流だと東京の営業所から大阪の営業所にトラックで荷物を届ける際に、届け終わって帰ってくるときに荷物が何も無いスカスカな状態で帰ってくる。そこに無駄があるとを考え、エコ配では、トラックで東京の営業所から大阪の営業所まで荷物を届け、帰ってくるときに大阪から東京に送る荷物を積んでくる。これにより、トラックの利用が一回で済み、CO2の削減に繋がる。エコ配の仕組みを整理すると、まず各拠点の営業所にトラックで荷物を集約し、そこから自転車で配達していく仕組みとなる。
配達員が嬉しいことはお客さんからの“ありがとう”
暑い夏に自転車で荷物を届けると、「暑いのに大変だね」とお客さんがお茶をくれることも多々あるそうだ。暑い中、一生懸命荷物を届けてくれる配達員に、お茶をあげたくなる気持ちはよく分かる。1人の配達員の距離は10km以内であり、近いエリアを周っていくイメージだ。地域によっては届け先が遠く離れている部分もあるため、そこはバイクや車を使うそうだ。現在、配送のコースが250コースあるが、その内7割を自転車で回っている。残りの3割もゆくゆくは全て自転車にして、CO2を0にしたいそうだ。
「エコ配をやっていて嬉しいことを社内のアンケートで聞くと、やはり、お客様から「ありがとう」と言われることです。時代がどんどん進化していけば、東京から大阪まで荷物を運ぶことなどはロボットがやってくれるようになるかもしれません。しかし、荷物をお客様に手渡しすることは人間にしかできません。きっと、これは何十年後も変わらないはずです。そのお客様とのコミュニケーションが「楽しい!」という声がアンケートには多く書かれます。」
現在の悩みは、ECが進化する一方、エコ配の利用者が伸びていないことだ。今後は、配達荷物の本数を伸ばしていくことを課題としている。それでも、エコ配の知名度は徐々に上がってきている。特にメディアに露出してはいないが、ただ会社にエコ配の荷物があるだけで宣伝効果となるそうだ。
「エコ配を利用する手順は、弊社に問い合わせして申し込みをして頂きます。申し込み後、伝票が20枚届きます。荷物を出すときに伝票を書いて、それを荷物に貼って、伝票に書いてある電話番号に「荷物を取りに来てください」と電話すると荷物を取りに伺います。以前は先払いの伝票でしたが、現在は利用した分だけ後から払うというシステムに変わりました。」
物流だけでなく、サービス業にも力を注ぐ
エコ配では、年に一度、WEBを通してアンケートを実施している。回答が多いときには、1,500件も集まるそうだ。そのアンケートによると、エコ配を利用する理由の95%が「価格が安いから」だ。さらに、「エコ対策」という理由も少なからず存在する。また、「時間指定ができるようにして欲しい」や「夜間(18時以降)にも配達して欲しい」という声もあるそうだ。その解決策として、「人員を増やすしかありません」と須山さんは言う。難しいことはあるものの、実現することを目指している。その他にも、今後の展開として掲げることがあり、それを次のように語った。
「弊社の社長はよく、“エコ配は単なる物流企業ではない。そこに付加価値を持つ、サービス業でもある。”と言っています。この言葉通り、今後はサービス業にも力を入れていきたいです。そういう意味もあり、去年エコ配のアプリを開発しました。アプリ内で問い合わせ番号を検索すると、「荷物を届けているドライバーがこの位置にいます」と位置情報が分かります。さらに、ドライバーをクリックするとプロフィールが出てきます。弊社は女性の配達員が多いことも特徴です。実は、男性の配達員だと、化粧をしていないことを理由に居留守を使われてしまうことなどもあるんです。それが女性だと事前に分かれば、お客様には「女性に配達してもらえる!」安心してもらえると思います。今後もこのようなお客様の役に立つサービスを追求していきたいです。」
数年前から「エコ」という言葉が浸透し、環境に良いことを行う人も増えてきている。しかし、その中でも「何をして良いか」が分からない人も居るだろう。そういう人こそ、荷物を送る際は「エコ配」を利用してみてはいかがだろうか。環境に良いだけではなく、コストを抑えて送ることができる。しかも、対象地域に限りはあるものの、自宅まで荷物を取りに来てくれるため、手間を大幅に省くこともできる。
送る人にとってのメリットが多いが、荷物が届く人にとっても、“自転車で届けてくれる”というわくわく感がある。普通に届く荷物でももちろん楽しみだが、”自転車”だと一層楽しみが増すのではないだろうか。一生懸命自転車を漕いで荷物を届けてくれる、そこには「荷物と一緒に送り主の大切な想いを届ける」という強い想いがある。その配達員の想いを受け取り、荷物が届いたときは、とびっきりな笑顔で「ありがとう」と感謝をすると配達員も嬉しい気持ちになる。このように、荷物を送る人と荷物が届く人、そして配達員、全ての人を“嬉しい気持ち”にするのが「エコ配」だ。