【第九回】ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ

佐々木 伸一

【テラオ株式会社 ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ】
オリジナルの日本酒と型番の自転車グッズ。どちらでも無駄なお金をかけずに成果を上げた著者のノウハウを全10回でお届けします。

◆自転車グッズのキアーロ
http://www.rakuten.ne.jp/gold/dandelion/

ありふれていて、どこにでもあるもの。商品の価値=原価だと自分たちが思っているのは、私にとっては「甘え」にしか見えませんでした。


☆前回までのバックナンバーはこちら

◆あさびらき十一代目 源三屋
http://www.rakuten.ne.jp/gold/asabiraki/

・第一回「27歳職歴なし無職(借金有り)からの出発」
https://ecnomikata.com/column/9195/

・第二回「パソコンを持たないネットショップ店長誕生」
https://ecnomikata.com/column/9380/

・第三回「思わぬヒット商品、誕生。」
https://ecnomikata.com/column/9596/

・第四回「強みを生かすとヒットが生まれる。」
https://ecnomikata.com/column/9886/

・弟五回「評価されなかった頑張りと結果。」
https://www.ecnomikata.com/column/10144/

・第六回「チームビルディングが教えてくれた。」
https://ecnomikata.com/column/10330/

・第七回「震災。そしてさよなら大好きなあさ開。」
https://ecnomikata.com/column/10533/

・第八回「日本酒屋が見た自転車グッズ屋」
https://ecnomikata.com/column/10780/

答えはいつだって「現場」にある。

答えはいつだって「現場」にある。いま現在は、特に人手が足りない時を除いてなるべく離れるようにしていますが、特に最初の頃は率先して出荷作業を毎日していました。

出荷作業の中で気が付いたことをヒントに、想像して、形に変えて、実践する。

それだけで見る見る売り上げが増えていきました。


とにかく実際に触って商品を覚えたくて、日々の出荷作業をしている中で気が付いたことが一つありました。

「自転車カバーってこんなに売れるもんなんだ!」

あの銀色の普通の「どこにでもあるような1,500円~2,000円する自転車カバー」が1日に10枚も20枚も売れていくんです。

近くの自転車屋さんでも、ホームセンターでも、100円均一のお店でだってもっと安いのも売っているはずの商品を何でネットでわざわざ買うんだろう?

前職からの経験上、こういう時はレビューにだいたい答えが書いているもの。

購入されたお客さんのレビューを一つ一つ読んでいるうちに、いくつかのキーワードを見つけました。

「丈夫」「破れない」「防水」「子供乗せ」

あとは「いつも100均で買うけどすぐ破れて嫌になった」というコメントもちらほら。


なるほど!

お客さんは「丈夫で破れない」カバーを、近所で売ってるのより多少お値段が張っても良いから欲しくて探しているわけか。


あと確かに子供乗せを自転車の前後に付けると大きくなるから、それ用の大きいサイズのものはきっとご近所ではあんまり手に入らないんだな。


ちょうど自社オリジナルの自転車カバーに、少し良い薄手で丈夫な生地を使った商品があったので、すぐに商品ページに「100均のカバーと全然違うと高評価!」と追記し、商品名には上記のキーワードを入れました。

お客さんが探すであろうキーワードで「私が扱っていますよ」と見つけてもらおうと考えたわけですね。


私の目論見通り、自転車カバーの販売数は増え、価格変更(値上げ)もあって、利益率も大きく改善しました。


しかし、程なくして。

あまり商品レビューの評価が上がってないことに気が付きました。


何故だろう?

丈夫な生地を使っているから100均で売っているようなものと比べても5倍以上の強度はあって、注文通りに破れにくい。価格には値ごろ感もあるし、薄手で自転車にかけやすく畳んでも場所を取らない。

あまり評価の高くないレビューをチェックしていて「あ!」と声が出ました。


そうなんです。

自転車カバーが丈夫だったかどうか?は、商品が届いてから問題なくカバーをかけ続けている間には・・・絶対にわからないんです。

なぜなら「どれぐらいの期間、破れなかったか。」でしか計測できませんからね。


だから、お客さんは、こちらが良かれと思ってオススメした薄手で丈夫な良い生地のカバーを見て・・・

「何だか思っていたより薄くて不安。」

そう感じていたんですね。


つまり。


届いた時点でお客さんが丈夫かどうかを判断し、満足感を得るポイントは「生地の厚さ」だったんです。

すぐに私は、それまでオススメしていた薄手で丈夫なカバーのワングレード下にはなりますが、今どき珍しいほど分厚い生地を使った自転車カバーをメインのオススメ商品に変更しました。

このカバーです。

http://item.rakuten.co.jp/dandelion/01009031/

もちろん、最初にオススメしていた薄手の生地のカバーの方が丈夫ですので、そこはキチンと「自転車カバーは買い替えを前提とした消耗品です。より丈夫なカバーをお求めの場合は⇒こちらをおすすめします。」という一文を加えることはサボりません。


どうも商品を買ってもらおうと思って、実際より良く見せようとし過ぎるあまり、松竹梅の「梅」をまるで「松」のフリをして販売することがEC業界には多過ぎると私は感じています。

でも、それでは期待して買ったお客さんの失望を招き「実物を触れないネットでの買い物なんて所詮はこんなもんだ。」という悪い印象を持たれかねません。

梅は梅として。

竹は竹として。

松は松として。

キチンと区分けと説明をサボらずにすることで、結果としてキアーロの自転車カバーは、松竹梅の各グレードがいずれも増えて販売枚数は300%以上に達しました。


こういうことをオープンで書くと(或いは書かなくても売れているのを見つけられると)、ソッコーでパクられるのがネット通販の怖いところです(笑)。

でもですね。

お客さんの事を一生懸命に考えて「こうすれば喜ばれるかな?」という商売人の一番やるべき仕事をサボって、他店の売れてるものをとにかくパクる程度の人には負ける気はしませんね。
いや、負けるかもしれないけれど(笑)、負けたくはない。

私の一番の強みは「お客さんの事を想像し」「市場の隙間を見つけること」ですから、この手のことは恐らくほぼ無限に見つけ続けられます。

寝ても覚めても「どうやったら自分たちの商品でお客さんを喜ばせられるか」を考えてきた自負だけはありますから。



もう一つ。

実はこの章の画像にとても大切な大きなヒントが隠されています。

お気づきになりましたでしょうか?


答えは次の章で。

検索対策って上位表示させること?

検索対策って上位表示させること?お客さんは「検索で上位表示される商品」が欲しいわけではありません。それよりも大切な事を見落としてはいませんか?

自分の目的と違うものは、検索結果の一番上にあっても「買いません」。

あさ開からキアーロへ転職して、お客さんの年齢層がこんなにも違うのかとビックリしました。

中でも驚いたのはケータイからのご注文比率。

2年前ですらキアーロのご注文の半分が既にスマートフォンからでしたが、現在は75%近くまでに達しています。

もはやパソコンからネット通販をする人の方が少数派で、これからさらにそうなって行くのは疑いようもありません。

余談ですが。

私は5年後にはブラウザ経由で買い物をする人が居なくなっているんじゃないかとすら思っています。


話を戻します。


それなのに、ページを作って商品を販売している私たちは、どうしても未だにパソコンの画面で物を考えがちです。どうしてもパソコンを使って作業をしているので仕方がないのかもしれませんが。

前述の自転車カバーを例に出すと。

確かに検索されるワードを想像して、商品名などに盛り込む作業は大切ですが、何もお客さんはそればかりで購入を決定するわけではありません。

例えば、自分の乗っている自転車に合うサイズなのかどうかは、絶対に必要な情報ですが、ページに記載があったとしても検索結果では判断付かないことが多いですよね。

特にスマートフォンでは検索結果で表示される情報がかなり少なめですので「サムネイル画像の情報」は非常に大事になります。


それなのに。

多くのショップは検索結果で上位表示されることに血道をあげてしまい、こういうことをしないでしまいます。

例え検索で一番上に表示されたとしても、自分の探している商品以外は買わないんです。それなのに闇雲に検索ワードを入れて、テクニックだけで上位表示させている商品は「邪魔者」以外の何物でもありません。

お客さんは「検索の上位に来るものを買う」のではなくて「自分が欲しいものを(もしかしたら具体的に意識しないまま)探している」んだと私は思っています。

だから、私にとっての検索対策とは「上位表示すること」ではなくて「探している方に見つけてもらうこと」です。


良く楽天市場とAmazonのお買いものが比較されますが、概ね楽天市場さんがけちょんけちょんに貶されますね(笑)。

「検索が使いにくくて商品が見つからない」「ムダな情報ばかりで買いものしにくい」

だからAmazonの方が便利で良い!という論拠なようです。


確かにそうかもしれません。

「既に欲しいものが決まっている場合」

は特に、過剰な情報は煩わしい以外の何物でもないのでしょう。


でも。

やっぱりあさ開のお酒もこの自転車カバーも、ちゃんと伝えないと見つけてもらえないと売れないんです。


逆に言えば。

誰かが作った良い品があって、それを伝えることで見つけてもらうことで、それを欲しいと思う誰かが、この世の何処かにいるかもしれなくて。

だから、ちゃんと伝えるのと見つけてもらえるようにするのが、私たちの仕事何だと思います。

インターネットってのは、その為の(とても有効な)手段の1つに過ぎないんです。


ネットで大人気で飛ぶように売れて、どこも競いあうように売るような商品も良いんですが。


私はそんな「ちゃんと陽を当てる」ことで「必要としている誰か」が喜んで買ってくれるような、そんな地味な商品をこれからも世の中にきちんと「じゃあ、これなんてどうですか?」って提案できる商人でいたいと思っています。

検索対策って、そういう事なんだと思っています。


そうすると、自然に「見つけてもらって売れる」訳ですから、結果として検索結果だって上位表示されるようになっていきます。


売上に再現性を持たせる。

売上に再現性を持たせる。
なぜ売れたか?をきちんと理解して把握すると、一過性のトレンドやブームで終わらずに売り上げに再現性が生まれます。

普通の空気入れが販売数4000%まで前年から増えたのもそんな理由からでした。

2年間を通して営業を続けていると、特定の商品が特定のタイミングで急に売れることが何度かありました。

例えば、道路交通法の改正で傘さし運転が厳罰化されて傘スタンドが急に売れたり、最近だとポケモンGOの大ヒットで自転車用スマートフォンホルダーが売れたり、というのは非常にハッキリとしていて解りやすい「ブーム」です。

それ以外にも「あれ?何でこのタイミングで、この商品がこんなに?」という事がいくつかあったんですね。

ここを「わーい、何だか知らないけれどいっぱい売れたー♪」だけで見過ごしてしまう人は、だいたいその後で苦労するタイプの人です(笑)。


ちなみに。

キアーロでは逆にスマートフォンホルダの取り扱いを一切ストップしました。間違いなく1か月半で100万200万の売上にはなったと思います。

が、売上よりも自分たちの扱った商品で、世の中で「悲しい事故が起きる」のが嫌だったのです。

私たちは自転車を安全に快適に使ってもらって、幸せな記憶を残してもらうことを使命にしたいもので。


12月には子供自転車用のカバーがとても売れました。

何でだろう?と考えて「クリスマスだ!」と気が付きました。クリスマスプレゼントにご両し…サンタさんから新しい自転車をプレゼントされるお子さんが多いから、ピカピカの大切な宝物を大事にきれいに使って、長く安全に乗り続けてほしいからです。

じゃあ、キチンと「自転車」「子供用」「クリスマス」「プレゼント」のワードを入れましょうよ。


5月には小学生用のヘルメットがとても売れます。新入学の時期でもないし、これはなかなか理由に気が付けなかったのですが、全国の小学校で「交通安全教室」が開催されるのはこの時期なんです。

学校からヘルメットの着用を義務付けられている親御さんは、慌ててご近所の自転車屋さんなどで買おうとします。

が、普通のお店では幼児用はともかく、小学校高学年用のモデルはなかなか置いてないんですね。あってもデザインは同じものだし、普段そんなに売れるわけでもないから店頭在庫は少ないのに、同時期に小学校の学区という狭いエリアで需要が急に高まるから売切れがち。

そりゃネットで売れないわけがないんです。

キチンとその時期に、安全基準を満たした商品であることを明示していますか?

全国のお子さんが皆ちゃんとヘルメットかぶるようになって痛ましい事故が無くなる世の中に近づけるチャンスなのに。


この夏は、昨年は30本程度しか売れていなかった自転車の空気入れを1,200本以上販売しました。実に4,000%の伸び率です。

ちょっと価格を下げ過ぎてしまったのもあって、あまりに売れすぎてメーカー欠品を出したのだけが心残りですが(笑)。

夏場は温度が高くて自転車の空気が抜けやすい時期であることを昨年に知ったのに加えて、浮き輪やビーチボールにビニールプール、各種球技のボールなど「レジャー」で需要が高まることが解ったので、しっかりと準備してきたからです。


キチンと商品のトレンドを見ているだけでは「ブームの後追い」でしかありませんし、そのブームが去った後にはどうやったらまた売れるのかが解らず商売に再現性を見出せません。

その裏にあるお客さんの要望や行動を、いかに売り手がちゃんと考えて見つけてもらえるように準備をするか。それが出来始めると売りたいものをきちんと売れるようになってきますし、そういった商品が店内に増えていきます。

買っていただいている「理由」を正しく理解し、時にはお客さん自身が意識していない潜在的な需要に先回りをする。

それが、言葉だけはしょっちゅう聞く「お客さま第一主義」という事のような気がします。


お店から見ただけの売り手都合のお客さま第一主義や、言われたことだけを無条件で受け入れることは、少し違うんじゃないかな?と思うんですよね。

次回、最終回予告。

いよいよ次回が最終回。

型番商品は「転換率が低くて当たり前。」「リピートしない。」やってみたらそんなことはありませんでした。

これから先、どんどんECは「便利」になっていって、もしかしたらAI(人工知能)がいれば良くなるかもしれません。

自動運転が普及すれば「自転車」という乗り物自体がなくなるかも知れません。実際にお隣の中国にあった何億台もの自転車は、この数十年でほぼ無くなっちゃいました。

じゃあ、私たちは何のために何を目指して商いをしていくのか?

その答えが、何となく「必要とされるお店」の理由なんじゃないかなー?なんてことを最近は良く考えています。


本日はここまで!ぜひぜひ「いいね!」&シェアお願いいたします!

最終回は9月30日の更新予定です。


ああ、やっと終わりだ(笑)。




著者

佐々木 伸一 (sasaki shinichi)

1972年11月1日岩手県大船渡市生まれ。2004年に前職の岩手の日本酒蔵「あさ開」で、PCの知識ゼロのバイト上りの平社員からEC事業を立ち上げ、楽天ショップオブザイヤーを通算6度受賞する人気ショップに。2014年結婚を機に退職し、大阪で自転車グッズの卸売業を営む妻の実家に婿入り。現職のEC部取締役マネージャー。運営する自転車グッズのキアーロは前年比200%超で売上げ推移。

自転車グッズのキアーロ
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あさびらき十一代目源三屋
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