築地市場、もしも消えたらどうなる?~ドンマイコラム勘違いオムニチャネルな脱線EC~

佐藤 英俊

ネットショップの教科書に依存し過ぎて失敗する(失敗しながら成長する)人のための、ちょっとやそっとでうまく行かないからってドンマイなコラム。

①1千万人を熱中させた『Pokémon GO』がECを滅ぼす
https://www.ecnomikata.com/column/10823/

マーケットプレイスは「場所」が問題

 小池都知事が築地市場の豊洲移転延期を表明。居酒屋では知事選の意趣返しとも囁かれる様相です。(9月19日現在)

 そもそも、築地には老朽化(ネズミやアスベストの)問題があるから移転することになりました³。それに反対する人たちにも事情のあることは想像できますが、果たして消費者ファースト(知事曰く「都民ファースト」)の議論なのか疑問も残ります。

 いっそ、移転しないで、『築地市場を取り壊したら』を妄想してみます。

 はい。無理は承知ですし、世界一活況の魚市場の価値を理解しないほど野暮でもありません。あくまで戯言です。いつでも逃げられるよう、私は靴紐の解けていないことも確認しています。

³http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07002670Y6A900C1SHA000/

 「中抜き」はご存知ですね。流通から所謂「卸」を省いて、生産者と消費者を直接結び付けるものです。卸の機能を煮詰めると「金融」と「物流」です。これらが解決できれば、卸で費やされるコストの一部を生産者と消費者双方の暮らしに還元できます。

 そして、もう一つ「販売チャネル」という課題に関して、ECが生産者と消費者に大きく貢献(一部既得権益を破壊)してきました。メーカの直販然り。農林水産業の産直然り。

 もし、築地市場が(市場と卸が違うのは承知ですが、ここは戯言なので無視して)なくなったらどうなるのでしょうか。

 銀座の一流寿司店が滅びてしまうと言われれば残念です(行けないけど)。しかし、銚子や三崎に機能分散したら倒産するのでしょうか。クロマグロが絶滅したら食べられなくなります。しかし、消費者が美味しい寿司を求める以上、入手手段なら解決できる可能性が高いのではないでしょうか。

 マグロの解体ショーという観光資源がなくなるのも残念です。しかし、それは東京オリンピックという一過性のためのものでよいのでしょうか。確かに、回る寿司屋やスーパーでは風情に欠けます。でも、地域振興の資源として他に譲っていいかもしれません。

 いずれにしても、「場所」は重大な要素です。ECの優れている点としては、「販売チャネル」のみにとどまらず、「金融」「物流」の課題も(ある程度)解決できていることです。築地市場など時事ニュースにいちいちECを絡ませて妄想することも、何かの発見を生むかもしれません。

街の●●さんはどこへ行ったのか

 卸・仕入れから小売へ話を移しましょう。

 街の本屋さん⁴。街の酒屋さん⁵。すっかり姿を消しましたよね。書店は、この十数年で四割ほど減少しました⁶。それでも、大型店や立地の良い店舗は生き残っています。

 商品の陳列が多く在庫が豊富なら、お客様が当てにしてくれますし、購買に繋がる可能性はぐんと大きくなります。それはわかりきっているけれど、「うちの店は狭いんで」という言葉が返ってきます。本当でしょうか。

http://www.infomarks.co.jp/bookstore-2/
http://www.infomarks.co.jp/liquorshop/
http://www.1book.co.jp/001166.html

家賃ってどうなのよ

今回は、家賃と床面積の関係を改めて考えてみましょう。

 立地がよいと何がよいのかというと、人通りの多いことです。今でも、駅ビルには本屋さんや酒屋さんが営業をしています。

 ECにおける「立地のよい」とは、会員数や延べ訪問者数の多さです。逆に考えると、家賃や管理費が無料の物件に、それらを期待するのは虫のよ過ぎる話だと言わざるを得ません。

 ネットショップに空間の制限はありません。

 「どこにいても距離や交通手段に関係ない」というのは、ECでさえ物流を伴うので大嘘でした。ここで語るのは、「床面積」です。事実上、殆ど制限はないと言い切ってよいでしょう。あるのは、限りがあるという思い込みと、内装や陳列にかける手間とお金の制限です。

 そして、床面積が無制限であるということは、入り口も一つに制限される必要はないということです。裏口と言っては響きが悪いかもしれませんが、多い分だけ千客万来の繁盛が期待できます。通りには人々がお財布を持って歩いています。

【図:床面積が増えると入り口の数も増やせる】

 頭に入れておいて欲しいことの一つとして、広告は来店を促しますが、「来店」と「入店」は微妙に違うことを理解してください。トップページやLPを訪れてもらったのは「来店」ですが、まだ店の前まで来ただけです。 

【図:店の前まで来た人と、入り口を潜った人】


著者

佐藤 英俊 (Heyday Satoh)

一級小型船舶操縦士。潜水士。座右の銘は「Discover new horizons! - 新しい視野を発見しよう」です。「視野=水平線・地平線」という言い回しが素敵ですよね。しかも、複数形。つまり、水平線は一つではありません。丘に登れば、別な水平線を見ています。一緒に新しい水平線を目にしましょう。

世界で最初の「震度計」を世に送り出したという異色の経歴。その後、IT 系に転じ、日本で二番目に co.jp ドメインを取得。21世紀に入って起業。カリフォルニアに居を構え、日本発のマルチメディア技術をハリウッドと世界の映画産業に浸透させた。モノ作りや新規事業の実体験を活かしてクライアントの支援をしている。

長年の夢、まだ叶っていない夢は、吐噶喇列島を旅すること。

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