【第5回】カスタマーサポートをあきらめない

飯山 奈穂

ヤマトコンタクトサービス株式会社

ECは、成長のステージ毎に戦略や戦術を進化させねばなりません。多くのEC事業者が「販促」にリソースを割きつつ成長していきますが、いずれカスタマーサポートに手をいれなければならないステージが訪れます。カスタマーサポートをおろそかにすることは、止血せずに輸血をしているような状態といえます。しかしながら一方、ECのカスタマーサポートに関する情報やソリューションが少ないのでは?と感じています。
第5回はヤマトコンタクトサービスが提供する、EC事業者さま向けのカスタマーサポートソリューションについてご紹介します。

カスタマーサポートをあきらめていました

EC運営は実に多忙です。仕入れ等商品管理、在庫管理、販促、セキュリティや会員管理などの店舗運営・・・・。わたくしは以前、小売チェーンのEC事業責任者をしていましが当時の率直な感想は「ECの運営=“忙殺”」ということ。そして、毎日さまざまな業務に追われるなかで正直、カスタマーサポートをあきらめていました。いつ・どんな問合せがくるか予測不可能で、マニュアルを準備していても「イレギュラー」なんてしょっちゅう。クレームはいったん起きれば膨大な処理が発生することもわかっていて、備えができないことを言い訳に対処療法で乗り切る―。EC事業者の交流会などで相談してみると、意外にみなさん同じ悩みを抱えているのがわかり「何かよいサービスはないものか・・」といつも考えていました。

カスタマーサポートをしっかりやる、といっても・・?

EC事業者側に勤務していた頃、EC関連の情報は販促や集客に偏りがちで、カスタマーサポートに関する情報は少ないな、と感じていました。最近ではチャットやWeb-RTCといったチャネル強化のツールやシステムの情報が増えてきましたが、チャネルを高度化するだけでは結局対応する人手が必要になりますし、ボットだけで対応完結するか?は商材やECの特性にも依存しそうです。
その他で思いつくのはやはり、
・問合せ対応の増員
・コールセンターのアウトソース
がベーシックな打ち手ですが、増員は採用難や人件費の固定化を避けたい思いがありますから「コールセンターにアウトソースってどう?」と思い至るわけです。

コンタクトセンターってどういうところあるの?どう選べばいいの?

しかしいざコールセンターを検討しよう、と考えても「うちの規模で頼めるの?」「どう選んだらいいの?」「大手の名前は知っているけど、それ以外はどんな会社があるの?」など、意外と知られていないコンタクトセンターについて簡単にご紹介します。

コンタクトサービスのアウトソーサー市場はマイナンバーや電力自由化などを背景に堅調に伸びていますが、大手6社で8割以上を締める寡占化市場といえます。(コールセンター白書2016より)規模の小さなアウトソーサーやメーカーや事業者のコンタクト部門がアウトソーシングも受ける(ヤマトコンタクトサービスもこの分類)ことも多く、得意・不得意がわかれているのが最近の傾向です。対応業務も電話の受発信だけでなく、データ入力等のBPO業務を担っている会社も多く、株主や会員組織の事務局、金融の督促、電話秘書、通販の受注受付などコンタクトセンター業界はECや通販に限らず、実に幅広い領域のカスタマーサポートを担っています。さらに近年は、チャットやWeb-RTCなどIT機能に特化した新規参入もあり、「何を提供してくれるか」の見極めが重要です。

ECのカスタマーサポートは現場負荷解消が難しい

EC・通販のカスタマーサポートといえば、商品に関する問合せ、配送確認、トラブルやクレームへの対応などさまざまですが、アウトソースの場合「一次受け」で事業会社にエスカレーションとなる場合が多くあります。事前に商品に関する情報の共有、ポリシー(キャンセルポリシーや返品・返金など)や処理フローを綿密に決めておかないと、いざ開始すると負担はアウトソースする前とまったく変わらない、となりかねません。
特に、ECにつきものの「配送」に関するカスタマーサポートは、エスカレーションになる確率が高い業務のひとつです。汚破損、受け取りそびれ、住所間違い、など対応を誤ると二次クレームや顧客の離脱といったリスクも高く、一回発生してしまうと他の業務が止まるぐらいに多方面・同時並行のリカバリー手配・処理が必要になります。

ヤマトコンタクトサービスの“配送カスタマーサポート”

ヤマトコンタクトサービスでは、事業者さまの負担軽減のために“配送”に特化したサポートサービスを提供しています。問合せ受付・対応から、同時に発生する事務処理をワンストップで承ります。エスカレーションが不要で事業者さま側の負荷を軽減するだけでなく、「正確な情報」「確実な解決」「対応スピード」が高い顧客満足度を実現します。

①配送問合せサービス
モノの流れを理解した担当者が、迅速・適切な応対で、お客様満足度を向上
②お品物追跡サービス
ギフトや生鮮・高額品など、お届けまでしっかりサポート
③お届け先不明確認サービス
住所不明や長期不在など、迅速に対応し確実なお届けをサポート
④返品・不良品引取り手配サービス
電話一本で、お客様からの返品・回収を確実に手配

図1)ヤマトコンタクトサービスがハブになることで負荷軽減
図2)問合せに関わる処理の対応

配送に関する対応だけでなく、受注受付や商品に関する問合せなど「総合コンタクトセンター」としてご利用いただくことで、更なる運用負荷軽減を実現します。

図3)一般的なアウトソースとヤマトコンタクトサービスへのアウトソース比較

忙しいときだけ利用したい、に応えます。

皆さんのECで「繁閑の差」はどれぐらいでしょうか?総合通販で無い限り、扱う商品に応じた繁閑が生じるEC事業者のほうが一般的でしょう。生鮮であれば旬の時期、ギフト商材なら母の日・父の日・クリスマスなど行事や季節によって注文量や出荷量が変動する場合、コンタクトセンターを年間で契約したり、カスタマーサポート要員を年間通じて雇用するのは負担が大きいといえます。
また、アウトソーシングとはいえコンタクトセンターを立ち上げるには時間がかかり、前述の業務フローやポリシーのすり合わせを含め一般的には1ヶ月以上かかることがしばしです。
そこでヤマトコンタクトサービスでは、シェアリングエコノミーの考えで、コンタクトデスクをクイックに立上げ、短期での利用も可能とするサービスをリリースしました。7月にプレスリリースをし、ECのミカタでも記事に取り上げていただきました。
「ヤマトとebisumartが9月から新サービス!コンタクトセンターもシェア」
https://www.ecnomikata.com/ecnews/15328/
一般に、コンタクトセンターと契約いただくと、その事業者さま用に回線を設置し、「名のり」はその事業者さまの名前となります。名のりが事業者毎とはつまり、業務フローや回答のスクリプト(話法)がその事業者毎に特化する、ということです。さらに事業者毎に顧客情報や注文履歴を閲覧するなど、問合せ内容を記録する応対履歴ツールもそれぞれカスタマイズで設置となり、これらがコンタクトデスクの立上げ期間や費用に直結するわけです。

図4)シェアリングデスクと通常の比較

これら課題をクリアするために、ヤマトコンタクトサービスではクラウドECプラットフォーム「ebisumart」を提供する株式会社インターファクトリー様と提携しました。
「ebisumart」を利用するEC事業者様に、「ebisumart」のオプションサービスとしてヤマトコンタクトサービスの配送問合せサービスを利用いただくものです。
「ebisumart」向けに電話回線をあらかじめ用意し、注文情報や応対履歴ツールおよび名のりを標準化しています。「ebisumart」のオプションサービスですから、ヤマトコンタクトサービスとの個別の契約は不要、短期の契約であっても利用可能となり、クイックでフレキシブルな利用を実現しています。
今後、さまざまなパートナー企業と提携し、ご利用可能な事業者さまを増やしてまいりたいと考えております。

自社コンタクトセンターをレベルアップしたい

EC事業者さまの中には、既にコンタクトセンターを自社運営している会社もあります。そういった方からは「オペレータの育成・教育を手伝って欲しい」という相談をたびたびいただきます。単なる処理ではなく、リピータやロイヤルカスタマー育成に繋がる「顧客満足」を目指すのであれば、コンタクト業務における「応対品質」は重要なファクターですが、EC運営全般をみながらオペレータ育成・教育まで内製化するのは困難といえます。
ヤマトコンタクトサービスでは、品質管理のノウハウのご提供をしています。事業会社さまに代わりカスタマーサポートを担う方々へのトレーニングを含め、品質ガイドラインの策定や品質を維持し続けるために必要な業務フロー設計まで幅広く承ります。自社の事業規模に合わせてプランニングいたします。

将来的には自社運用を目指したい

いずれ本格的にカスタマーサポートをしたいが、初期はアウトソーシングでスタートしたいという事業者さまも多くお会いします。ヤマトコンタクトサービスでは、「運用移管」についても手厚くサポートいたします。一定期間ヤマトコンタクトサービスをご利用いただき、その後自社のコンタクトサービス立上げ・運用を移管するというものです。あらかじめ当社で運用した際の実績をもとに予測をたて、規模や必要な環境などを具体的にご提案いたします。システムベンダーに対し、ニュートラルな立場でみなさまの事業とそのお客様の目線で最適なカスタマーサポートをご提案いたします。


カスタマーサポートを、EC事業社さまがあきらめなくて済むように。ヤマトコンタクトサービスでは今後もさまざまなサービスをご提案してまいりたいと思います。

次回は最終回となります。


著者

飯山 奈穂 (Nao Iiyama)

ヤマトコンタクトサービス株式会社 CRM戦略部長

情報デザイン・工業製品のインタフェースデザインを経て、インターネットの黎明期から十数年にわたりweb・ITのコンサルタントとして、総合通販、航空券やホテル予約、証券・保険など多様なサービスのネット化・新規ネット事業立上げ・webブランディングに携わる。国内小売チェーンの事業責任者としてネット事業を立上げ、その後CRMコンサルタントを経て、2016年より現職。VOC(Voice Of Customer)を活用したオムニチャネル時代のCRMを担う。

コーポレートサイト:http://www.y-cs.co.jp/