【第一回】海外EC動向 プラットフォームの鍵は、商材に合った「探し方」提案
EC業界で大きく成功している企業はいずれもプラットフォーム・マーケットプレイスです(exアマゾン・楽天・ヤフオク・メルカリ・ZOZOTOWN etc)。
今後、新たにプラットフォーマーとして成功するための鍵の一つは「商材に合った探し方」の提案です。今回のコラムでは、すでに上場している米国の家具ECプラットフォーム「Wayfair」の事例をYJキャピタル大久保がご紹介します。
商材に合った探し方って何?
早速ですが、プラットフォームに求められる「商材に合った探し方」の提案とは、何でしょうか。
例えば、洋服なら、「自分にあったサイズを探せる」、「コーディネートから探せる」、「今持っている服との着合わせで探せる」といった洋服に特化した探し方の提案のことです。
つまり、一般的なプラットフォームで可能な「安い順」や「レビューの多い順」といった探し方ではなく、その商材ならではの最適な探し方のことを指します。
では、「商材に合った探し方」の提案が、新たなプラットフォーマーにとってなぜ重要なのでしょうか。それは、”総合型“プラットフォーム(アマゾン・楽天のようなALLジャンルを販売するプラットフォーム)と差別化するのに最適な戦略でもあるからです。
総合型プラットフォームは、ALLジャンルを扱っているがゆえに、商材に特化した探し方の提案が困難です。このようなの事情が、ZOZOTOWNやWayfairのように、商材に特化したプラットフォームが台頭する一つの背景となっています。
Wayfairってどんな企業?
Wayfairは2002年に設立されたホームファッション特化のECサイトです。設立当初は、ニッチ商材(電気スタンド特化ECや鳥かご特化ECまで)を扱うECサイトを運営し、その数は250にも及びました。
そして、2011年に250ものニッチECを統合する形でWayfair.comがスタートしています(商品数は800万商品以上、取引サプライヤーは約1万)。
今では、年間流通金額は57億ドル、時価総額は120億ドルに達しており、下記日本企業と比較してもその規模の大きさがわかると思います。
(参考)時価総額
(株)ニトリホールディングス:1.87兆円
(株)スタートトゥデイ:1.06兆円
(株)ベガコーポレーション:120億円
(株)大塚家具:58億円
※時価総額はいずれも18年9月10日時点
どんな「商材に合った」探し方を提案しているの?
Wayfairが実施している「家具に合った」探し方の提案の中から本コラムでは3つ(①画像検索、②コーディネート検索、③ARによる3D家具モデルの配置)をご紹介します。
①画像検索ってなに?
Wayfairでは通常のテキスト検索に加え画像検索の機能も提供しています。UI的にも検索窓の横に設置されており目立つ位置に配置されているわけです(step1)。
ボタンを押すと、カメラ撮影、もしくは写真フォルダから既存の画像を選択することができます。下記図では、写真フォルダにある既存の画像を選択しました(step2)。
その後、画像検索が実行。2数秒程度の検索時間です(step3)。結果として選択した商品の類似商品が表示されます(step4)。
本機能は家具特有のニーズに沿った探し方の提案であるため、今後はデファクト機能として広く家具ECサイトに実装されていくと思います。
(家具特有ニーズ例)
・イケアやニトリの店舗で商品を見ながら類似商品をネットで探したい
・インスタグラム等のSNSでおしゃれだと思った家具を探したい
・テキストで上手くデザインを表現できないけど似たデザイン探したい
②コーデイネート検索って何?
Wayfairではコーディネート検索の機能があります。イケアの実店舗にあるようなテーマごとのショールームをオンラインにしたようなUXです。
トップページにコーディネート検索のメニューの誘導があります(step1)。コーディネートはUGC的に投稿されており、インテリアデザイナーの方などがコーディネート案を作成しているようです(step2)。
コーディネート内に配置されている実際の商品を選択することも可能です(step3)。商品を選択すると商品詳細ページに遷移します(step4)。さらに、商品詳細ページ内の“ARでの簡易配置ボタン”を押すことで、2Dではあるものの実際に配置することも可能です(step5)。
家具やファッションにおいては、商品単品として評価するというよりも、コーディネートで考えることが重要になるので、コーディネート検索は、まさに、「商材に合った探し方」と言えます。
コーディネートの作成を内製化するか、UGC的にするかは検討の余地はありますが、家具ECにおけるコーディネート検索の機能も一般的な機能として普及していくと思います。
③ARによる3D家具モデルの配置って何?
WayfairではARによる3D家具モデルの配置機能を提供しています。国内でもイケアや、RoomCoが本機能を提供しています。
本機能もトップページに誘導があります(step1)。今回はイスを自宅に投影してみます。こちらも商品詳細ページ内にあるARの3D配置ボタンを押します(step3)。それにより、選択した商品の3Dモデルを実際に自宅に配置することが可能となります(step4)。
昨年のARkitのアップデートにより、マーカーなしで3Dオブジェクトのサイズを再現することが可能となり、ユーザビリティが向上しました(以前はサイズの再現には、物理的な基準となるマーカーが必要でした)。
実際に購入を検討している家具を自宅にARで配置することで、デザイン感、サイズ感を試すことができます。高単価商材である家具はなかなかネットでは買いづらいといった課題を解決するソリューションと言えます。
このようにAR技術の発展により購入後のシミュレーションが可能となると購買率も向上すると思われます。本機能も、まさに「商材に合った探し方」の提案でありデファクト機能となるでしょう。
まとめ
以上でWayfair紹介を終わります。前半で紹介したようにビジネスの規模もかなりの勢いで成長しており、その一因として「商材に合った探し方」の提案があると考えられます(もちろん、物流網の構築・商品数の拡充・マーケティング施策の成功等もありますが)。
ここで紹介した”画像検索”・”コーディネート検索”・”ARによる3D配置”といった機能は家具ならではの探し方です。このように、アマゾン・楽天にはできない商材特化型ECの強みを活かした探し方提案が鍵になっています。日本においてホームファッション市場はアパレルと同規模の市場規模があるので、そのうち家具のZOZOTOWNが誕生する日が来るかもしれません。投資家としては楽しみな領域です。
百聞は一見にしかず。家具EC関係者にはぜひ一度体験していただきたいと思います。