【第12回】twitterはお店が「探す」「引き出す」に使えるSNS
タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・
メイドインオオサカの紳士礼服を製造販売するフォーマル専門店ノービアノービオ。1952年に礼服の生地問屋として創業、今は製造から小売(ネットと実店舗)まで手がける、いわゆるSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。
バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。
年商65億から負債45億円、約100億円のジェットコースターを下りきった頃、服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして、この会社にやってきました。
順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと・・・たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。
SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。
これから記させて頂くことは特筆すべき秀でたスキルなど何もない普通の僕がやってきた、「今日から誰にでもできるお話」です。
このお話を通じ、皆さんのお店のコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立つことができればと、経験した全てをお伝えしていきたいと思います。
【これまでの11回を編集部さんにガイド付きでまとめて頂きました】
https://ecnomikata.com/column/20041/
台風21号・北海道胆振東部地震の被害に遭われた方に心からお見舞いを申し上げます
9月、相次いで日本を襲った災害。大阪は台風21号が直撃。
会社と店舗は臨時休業にしましたが、ピーク時、僕は大阪市内の事務所にいました。強風の轟音とともにビルは軋み、地震のときのように激しく揺れ、内壁の一部が剥がれるなどしました。あの恐怖は6月の大阪北部地震と遜色ないほどでした。
倒木、飛散物、歪んだ信号、吹き飛んだ屋根。広範囲に及んだ停電は1週間経過しても数千軒で復旧しないなどライフラインに打撃を与えました。
その傷跡が癒える間もなく北海道を地震が襲い、大きな被害に心を痛めています。
台風の通り道となった関西、地震の被害があった北海道では、農園や畜産を中心にECのお友達も多く、改めて自然災害の猛威を知ることになりました。
防ぎようのない自然災害、しかし対策次第で被害を抑えることはできると思いますので、どうぞ皆さんもできる範囲での防災対策に取り組んで頂ければと思います。
大阪で生まれ育ち、1995年の阪神大震災も経験している自分が、改めて6月の地震や9月の台風に遭い、防災意識の見直しを痛感する体験でもありました。
それでは12回目も宜しくお願いします。
twitterは知りたいときに使える「引き出し」
日本に入ってきて10年、すっかりインフラのように溶け込んだtwitter。災害時も情報収集や安否確認に活用されている方も多いと思います。その強い拡散力ゆえに、時々炎上などもありますが、弊社ではお客さん、フォロワーさんとの交流のツールとして欠かせないSNSになっています。
twitter japanさんにも大阪にお越し頂き、何度かセミナー・イベントをご一緒したことがあります。そんな会場でtwitterさんが配布されることがあるノベルティのボールペンの書き味がとても素晴らしいのですが、ペン自体を見回してもどこの商品かわかりませんでした。市販の商品名がわかれば、替芯も買えるのにと思って僕が答え探しに選んだのがtwitterです。
ボールペンの画像を付けて、このボールペンの市販商品名をわかる方はいませんか?と投げかけたところ、わずか1分でリプライを頂きました。
「それ、ZEBRAのSARASA CLIPではないでしょうか」
すぐさま検索すると、手元のボールペンと通販サイトで出てきた形状は一致。
こうなると次の検索クエリは簡単ですよね
「サラサクリップ 替芯」
購入に直結するクエリ、「トランザクショナルクエリ」ですね。
検索クエリの種類は大きく分けて3つ、
■ナビゲーショナルクエリ(案内型・特定のウェブサイトに行く)
■インフォメーショナルクエリ(情報収集型・ニュース関連)
■トランザクショナルクエリ(取引型・購入・申込み関連)
に分類されることが多く、トランザクショナルクエリは検索の中でも購入や問い合わせ来店に繋がる可能性の高い検索クエリで、「取引型クエリ」「購入型クエリ」などとも呼ばれたりしていますね。
代表的なものは「〇〇 通販」「〇〇 ダウンロード」「〇〇 資料請求」のような感じですが、商品名が具体的に入力されている場合は情報型、案内型を組み合わせた複数の意図を含むトランザクショナルクエリで言えるでしょう。
先日発表された「iPhone XR」のような検索は価格や発売時期、レビューを探す情報収集とも言えますし、直接Appleや電話キャリアのブランドサイトへアクセスする案内型でもあり、そこで申込みや購入などを行う取引型でもあると言えます。
商材やサービスによって、「案内」「情報」「購入」が複雑に絡み合い、その組み合わせも多種多様ですから、皆さんのサイトでは、どのような組み合わせがあるのか考えてコンテンツづくりをすると、より効果的にアクセスを獲得できると思われます。
ですので替芯に話を戻すと、この商品を自分が扱っているのであれば、このトランザクショナルクエリにロングテールを付加してお客さんの流入をはかれるわけですね。
「サラサクリップ 替芯」+「色(黒・青・赤)」+「芯の太さ(0.3・0.5)」+「まとめ買い・ケース」などを散りばめて守備範囲を広くしてお客さんの来訪を待てるコンテンツづくりですね。
この事例は自分が客目線で体験したことですが、SNSではこういう投稿は意外とあります。
今回は、このtwitter上に流れる「欲しい」「教えて」「探してる」を捕まえ、商機につなげようというお話です。
twitterに欲しい・教えて・探してるを見つけに行こう
twitterで自社、商品名、取扱ブランド、サービス名なを検索する、いわゆるエゴサーチのような使い方ですが、twitterの検索窓に、皆さんの商品名やサービスを入力、更に、「欲しい」「オススメ」「教えて」「探してる」などを入力してみてください。
商品の市場規模にもよりますが、意外とヒントがあります。
上図は弊社がクラウドファンディングでご当地の戦国武将をモチーフにした武将スーツ、薩摩の英雄・島津義弘モデルにしたスーツを製作したときのこと。
SNSに自社のアカウントで「こんなの作りました」のような情報を投下、更にプレスリリースも併せて行い一定期間置いた後、開発中の商品名でエゴサーチ。
すると、twitter上にいくつかの感想・意見・要望が散見されました。意見のほとんどはスーツに付いている特別な「ボタンだけが欲しい」というものでした。
特注ボタンは限定スーツの装飾の一つとして付いているもので、この時点ではボタンだけの販売はしていなかったのですが、この「ボタンが欲しい」に応え、ボタンだけのセットを作ることにしました。
セット商品を作ったあと、ボタンが欲しいとツイートしていたユーザーさんに「ボタンだけの商品ができました」とリプライをお送りすると、すぐさま反応をしてくださいました。
「要望を叶えて下さって嬉しい」とツイート。そのツイートが、またいいねやリツイートをされて拡散。
リプライをお送りして2時間あまりで4~5セットにオーダーが入りました。
twitterを代表とするリアルタイム検索には、実に「生きたニーズ」で溢れています。
SNSに解き放たれている「欲しい」「探している」は消費者の強いシグナルであると感じます。実際に弊社では、ツイートの「欲しい」をタイミングを逸することなく購買につなげることができました。
タイムラインの川に流れてくるものを河原に佇んで待つのは大変です。様々なツールもありますし、網を置いておくように待ち構えて捕まえることはすごく大事ですね。
お手伝いしているお店さんでは、主力商品名を時々エゴサーチして、探しているお客さんに対して、リプライを飛ばしたりして交流。時には20万円もの高級商材をtwitterきっかけで購入して頂くこともあります。
ですが、ここでの要注意は次章でお話しますが「ウリウリ」にならないこと、ですね。twitterでセールスに走って買って頂いた試しがありません。
そこで、以前コラムでもご紹介したお客さんとの距離感も大事ですね。
この辺りのことは、
【第2回】売れる!ヒントはお客さんが持っていた
https://ecnomikata.com/column/18062/
や、
【第4回】お客さんの「教えて」に向き合うコトでアクセスも売上も伸びた
https://ecnomikata.com/column/18406/
を、参考にしてくだされば幸いです。
それ、みんなに聞いてみよう
ECサイトの売上を左右する要素の大きな部分を占める品揃えと価格。お客さんにすれば価格が安いに越したことはありませんし、品揃えも多い方がいいでしょう。
しかし中小規模のECサイトは生産・仕入れに掛けられるコストも限られていますよね。A・B・Cと3つの商品を取り扱いたいが仕入れの予算に割けるのは2商品まで。
皆さんならそんな時、どう商品を選ばれていますか?毎年のシーズン商品や、実績ある商品の後継品番などであれば予測も立てやすいですが、全くの新商品だとそうもいかないですよね。
多くのお店では社内アンケートなどで決を採っているのではないでしょうか。
2年前、当店に春の新商品としてラペルピンが入荷してきました。ラペルピンとはスーツの襟穴に飾るピンバッジのようなアクセサリーです。
この時、動物や魚、蝶などの昆虫をモチーフした様々なラペルピンが8~10種ほどサンプルで上がってきました。社内でも人気だったのはジンベエザメやバンドウイルカなど水族館でも人気者をかたどったもの。
一方で、オオサンショウウオ(上図:右)やアンモナイトは社内の女性陣から不評でした。
ラペルピンは樹脂でコーティングされていて、そのテカりとヌメリ感をよく再現しているオオサンショウウオに一目惚れだったんですが、「気持ち悪い」とボツ候補に。
ですが、京都水族館では看板キャラに位置するほど。これはtwitterだ!と思い、twitterの投票機能を使ってtwitter上の皆さんに聞いてみることにしました。
利用されている方も多いと思いますが、twitterでは誰でも使える投票機能があります。最大4択まで選択肢を設け、任意の期間中、投票を受け付けるものです。
この投票機能を使い、社内で人気1位だったジンベエザメ、2位だったバンドウイルカ、そしてワースト1位のアンモナイト、2位のオオサンショウウオの4つで24時間投票を募りました。
24時間で334票の投票を頂き、結果はジンベエザメの支持率36%には届かないものの、オオサンショウウオが2%差の34%の支持を得ました。フォロワーさんがいいね、リツイートしてくださったこともあり、簡単に市場調査ができてしまいました。
社内人気ワースト2位のオオサンショウウオまさかのジャイアントキリング!これは痛快でした。そのデータを基に、無事に商品ラインナップにアンモナイトとともにエントリー。
そして1年後、ECサイトの商品販売数と照合すると、この4択の順位と一致。
中小企業では特に経営者の判断や社内会議で品揃えや仕入れ計画が決裁されることが多いと思います。オーナーさんが営業やバイヤーを経験されているとなおさら。
しかし、時代とともに消費者のニーズも変化しますから、時にその経験頼りの判断が機会損失に繋がることもあるかもしれません。そんな時、SNS上の潜在顧客とも言えるユーザーに投げかけてみるのも一つの選択肢かもしれませんね。
twitterが日本にやってきて10年あまり、当初こそ「セール!」でECの購買に繋がったことも周囲で見聞きしましたが、これだけSNSも使い方もユーザーも多様化した中で、安いよ、いいよでは見向きしてもらえる可能性は少ないと思います。
僕自身、自社のtwitterの中の人をやってきて最近益々強く感じているのが、お店とお客さんではなく、フォロワーさんと中の人で触れ合う、交流を深めることだと思っています。
一言でSNSとまとめても、twitter、facebook、instagram・・・ユーザーも使い方もそれぞれですので、全部同じようにやろうとするのではなく、自社の商品、サービスには何が適しているだろう?自社のスタッフはどれが得意だろう?そんな入り口から運用するSNSを選んでもいいかなと思います。
とにかく、気負わず!まずは友達を作ろう。です。
SNSってどんな風に始めたらいいですか?と聞かれることがありますが、僕は決まってこうお答えします。
「話しかけやすい転校生」をイメージしてくださいと。
自ら声もかけ、周囲からも声がけしやすい、気さくな転校生のような感じで飛び込んでください。
第12回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉をよろしくお願いします。
http://www.machicollege.jp/contact
以前、ECのミカタさんでもコラムを連載していた「ゲキハナ」の古屋さんとYouTubeチャンネルも開始しました。ECサイト運営者のヒントになるトークライブを中心にお届けしておりますので、是非チャンネル登録お願いします。
https://www.youtube.com/channel/UCjFq1MzH2g9UPeXxfjpQ3vg
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次回のお話は、最近の動向や事例などをご紹介できればと考えています。
更新は
10月9日(火)ごろを予定しております。
次回も宜しくお願いします!