【第17回】究極のSEO「個」 モノ・コトから個を確立する時代へ
タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・
大阪と東京に実店舗を持つフォーマル専門店ノービアノービオ。
1952年に生地問屋として創業、現在は紳士礼服のSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。
バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。
服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして入社。
順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。
首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと。
たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。
SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。
これから記させて頂くことは特筆すべきスキルもない普通の僕がやってきた、今日から誰にでもできるお話です。
皆さんのコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立てればと、経験した全てをお伝えしているコラムです。
【第1~第11回のガイド付きまとめ】
https://ecnomikata.com/column/20041/
【第12回】twitterはお店が「探す」「引き出す」に使えるSNS
https://ecnomikata.com/column/20125/
【第13回】検索エンジンの今を捉え、得意領域で検索獲得を
https://ecnomikata.com/column/20362/
【第14回】県民性も?EC運営者が知っておきたいアクセス解析のツボ
https://ecnomikata.com/column/20548/
【第15回】1ヶ月で90ランクアップ!意図を汲み取りSEO改善
https://ecnomikata.com/column/20791/
【第16回】「小さな会社の大きなSEO」Googleのイベントで感じたこと
https://ecnomikata.com/column/21165/
モノ・コトから「個」が問われる時代へ
新年あけましておめでとございます。このコラムも早いもので1年となり、ECのミカタさんでは最長連載のコラムになるそうです。今年も皆さんに少しでもお役に立つ内容をお届けするべく努めて参りますので、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
それでは本題に入りたいと思いますが、さて、皆さんに質問です。
究極のSEOとはなんでしょう?
それは皆さんのお店の名前、オーナーや店長さんの名前、商品名、サービス名で検索されることです。「そんなんわかってるわ!」と言われそうですし、「それができたら苦労はせんわ!」という話ですよね。その通りです。
ですが、当店も10年前には、今よりもっと誰も知らないようなお店でした。
2008年の年間流入数で、屋号の「ノービアノービオ」はサイト全体のキーワード順位で472位、年間のコンバージョン数はたった1件です。1年で数千円の売上しか、もたらしてくれない程度の知名度。なかなか切ない数字ですね。
でも、ゼロではない、誰かは知ってくれている、ファンでいてくれるかもしれないという事実が大きな励みになりました。
翌年の2009年には店名によるアクセスは8倍増、サイト年間売上の3.5%が店名検索からの直接コンバージョンに成長。更に2010年には年間アクセスキーワードの8位となり、年間売上の8.1%を占めるまでに成長しました。ここ数年はノービアノービオの店名検索がサイト流入の1位であり続けています。
10年前には誰も店名でやって来なかったサイトが、現在は店名で検索してもらえるようになっています。店名で検索してもらえるということは、最初からお客さんが自社を目指して来てくれるという証拠であり、競合他社との様々な競争に晒されにくくなります。
何より、Googleのアルゴリズムのアップデートがあり、商品名や用途で順位が落ちたとしても、よほどのスパム行為・ブラックハットSEOと呼ばれる違反行為をしない限り、屋号・店名で下落することは考えにくいのでSEOに対する負担がかなり軽減されます。
そうなると、店名や屋号はシンプルで覚えやすく、類似性がないことも意外と大きな意味を持ちます。
2018年上場した「メルカリ」「ラクスル」や、一緒にセミナーを開催するなど経営陣とも懇意にしている、ページ制作ツール「ペライチ」など、ある調査ではスタートアップの1/4近くが4文字社名を採用していると言います。
せっかくファンが増えても似た社名が多いと突き抜けにくくなりますから、愛称や略称などもSEOにおいても意味を持ちますね。
欧米の都市の名前やジャンルを冠する名前は類似数が多いことが予想されますから、これから出店される方は店名も熟考頂くと良いかもしれません。
確かに、知名度を上げ、お店の名前で検索してもらえるようになることは一朝一夕では叶いません。弊社はコラムでも紹介し続けている通り、衣装提供とSNSを併用して広告費をかけずに露出をはかってきました。
SNSやコンテンツでの成果は、いつ出るのか計算が立ちづらいもの。幸運にバズることもあれば、愚直な積み重ねが花を咲かせることもあります。
弊社がブログなどSNSでの集客に手応えを感じられるようになるには2年かかりましたが、お手伝いしたお店の中には、ブログ開始2週間で問い合わせが7~8倍に増えた事例もありますし、数年で年商数億円も伸ばされた企業もあります。
弊社はお陰様で年末年始もビッグな衣装提供の追い風を頂きました。
2018年12月23日号の【サンデー毎日(毎日新聞出版社)】では表紙、グラビア、特集で滝沢秀明さんにタキシードをご着用頂き、2019年1月12日に発売された雑誌【+act(プラスアクト)2019年2月号(ワニブックス社)】の表紙・巻頭グラビアを飾った俳優・菅田将暉さんには燕尾服をご着用頂きました。
滝沢秀明さんや菅田将暉さんのような著名人に、タキシードや燕尾服など馴染みがない衣装を着てアピールして頂けることは光栄の極みです。WEB上での告知もお許しが出たこともあり、Twitterでも数多くのいいね、リツイートを頂きました。
お店ごとに商品も中の人の個性も違い、各種SNSとの相性、再現性がバラバラなのもSNS活用の敷居を高くしているのかもしれません。
ですが、皆さんが運営されているECサイトは家業や事業として何年も継続的に続けていくものだと思いますから、いつ来るかわからない大きなチャンスをすぐにモノにできるよう、SNSのチャネルは今日にでも開設・稼働して頂くに越したことはありません。
しつこいほどコラムでも書いていますし、林修先生のキメゼリフではありませんが、SNSやコンテンツを始めるのも、いつかではなく、今日からであると重ねてお伝えしておきたいと思います。
お手伝いをご依頼頂いたり、セミナーの最後にいつもお伝えしている言葉をこの章の最後にお伝えします。
SNS・コンテンツで成果を感じるまで時間はかかりますがお金はかかりません。
お願いしたいのは、コンテンツを更新する「人」と「時間」への投資です。
蓄積されていくコンテンツは裏切りません。
コンテンツライターの育成には時間はかかりますが、安定した力へとやがて育ちます。広告で更に売上を伸ばすなら、ノウハウも貯まってからでもいいのかな?というのが僕の考えです。
生き残るのは個を確立した応援される企業
ECのミカタでコラムがスタートした、抱っこ紐収納カバー専門店ルカコの仙田さん(写真右)と共にご近所同士、共通の友人で親交があるのがSABAR(サバー)の右田社長(写真中)です。
この章ではSABARの右田さんの言葉をご紹介します。
ルカコのコンテンツの事例は11回目でご紹介
https://ecnomikata.com/column/19825/
Google Dance Osakaで共に登壇した模様は16回目でご紹介
https://ecnomikata.com/column/21165/
新連載・仙田さんのコラムはこちら
https://ecnomikata.com/column/21290/
右田さんが手がけるSABAR(サバー)というお店をご存知でしょうか?とろさば・サバ専門の料理店で現在全国に約20店を展開し、毎月のようにテレビメディアでも取り上げられているお店です。
とろさば料理専門店SABAR
http://sabar38.com/
SABARの右田さんとは、6年ほど前にクラウドファンディングを活用して出店された頃に出会い、今も懇意にして頂いています。
経営者としても、人間としても大変魅力を感じる方ですが、右田さんはこう言います。
「2018年、今年の一皿にサバが選ばれた。サバ一筋でどこまで行けるかと突き抜けてきて十数年。今年の一皿にサバが選ばれた直後6社から取材が入った。これは、サバといえば、SABARが浸透し始めている証拠。特化し続けてきてよかった」と。
一時は「これ以上サバ、サバ言うたら融資しませんよ。他にも魚はたくさんあるでしょう!」と金融機関から叱られたこともあるそうです。それでもサバだけに特化し、今やサバの店の代名詞と言っても過言ではないほどになっています。
そして、サバが今年の一皿に選ばれたことで、サバに対する関心度、注目度は高まる一方で、その時にはSABARがサバの権威としてのポジションを揺るがないものにしていたのです。個を確立し、突き抜けてきた結果、自社へ追い風が吹いた時、その風を受ける帆は満帆になっていたわけですね。
いつ風が吹いても良いように、お店・ECサイトの乗組員であるみなさんは万全で待ち構えている準備が必要です。それがコンテンツですね。
そして右田さんもおっしゃいます。
「これからは応援してもらえるお店だけが生き残れると思う。個性を確立して、お客さんに頑張れと言ってもらえるようなお店が強いお店ではないかと思う」と。
そしてSABARは今もなお、応援される企業・お店へと成長を続けている真っ只中にあります。
弊社、ノービアノービオもニッチな商材であるタキシードや燕尾服に特化して来ましたが、多数の衣装提供のおかげか、テレビ番組でフォーマルウェアが映ると「これもかな?」という投稿をSNSで見かけることもあり、ニッチな分野であろうと代名詞的な存在になる大切さを感じています。
実際に僕自身も2015年以降にメディア取材が激増、毎年のようにテレビ、ラジオ、新聞、雑誌にご紹介頂き、会社全体でのメディア登場回数は数十回を超えていて、僕もご一緒させて頂いた何人かのベテラン俳優さん、お笑い芸人さんとはメールやfacebookで近況を交換するなど、プライベートでも親交が続いていたりします。
小さな企業の一社員が、です。そんなことが起こり得るのもネット時代ならではですよね。
「クエリレス」検索しない時代に備えておくべきこと
英国で行われた調査では、検索結果の画面で「よく知っているブランド」「信頼感を持てるブランド」から優先的にクリックされるという結果も出ていました。
2019年のSEOで個々のブランド力育成を重要性の高いポイントに挙げる方も多くいらっしゃいます。これには検索の観点からでも非常に大きな意味を持ちます。
「おすすめの記事」というGoogleアプリの機能にもリンクする大切なポイントで、Googleアプリを開いた時や、Android端末でホームから左にスワイプした時、カスタマイズされた情報・記事がピックアップされてリスト化されているのを見たことはないでしょうか。
僕自身この機能でレコメンドされた記事の7割近くを読むほど見事に関連付けがされています。
Googleは「クエリレス」と呼んでいますが、その名の通りユーザーが検索行動をせずに自分のほしい情報やお気に入りのお店やブランドの最新情報を知ることができる機能です。このおすすめ記事のレコメンドの精度や、かゆいところに手が届く感じは実に見事です。
迂闊にスマホを人に見せると、あなたの趣味趣向・関心動向が筒抜けですから、ちょっと人に言いづらいサイトを繁く見ている方は要注意ですよ(笑)
話は逸れましたが、つまり皆さんのお店がコンテンツ更新の頻度を上げていくと、何度も来訪している再訪者へ向けて「おすすめの記事」として表示される可能性が出てくるのです。
ニッチなジャンルや競合が少ない商材でこそ、その界隈で知られた存在になることが大切と言えますね。
「アレといえば誰々」
という権威性がインターネットで生き抜く上でますます大切になってくることでしょう。ページ、コンテンツを更新し、再訪者へアピールすることで、検索せずに来訪してもらえる機会が増えますから、ぜひ、みなさんが扱われている商材、サービスの中での認知度を上げるコンテンツ作成・更新を目指して下さいね。
次の章では、実際にニッチジャンルにおいてアイコンキャラ化をして、注目を集めているECサイトをご紹介します。
名物キャラ・コンテンツで注目度アップ!販促集客に成功した事例
2018年10月19日に公開された第13回でご紹介した事例のその後です。
https://ecnomikata.com/column/20362/
「敷板net」という工事現場やイベント会場に敷設する樹脂製の板が主力商品のECサイトです。
https://www.shikiita.net/
商材からして「ド・ニッチ」ですよね。スマホのように1人に1台でもないですし、一家に一台というような家庭用品でもありません。BtoBメインの商材で、ブームがやって来ることもまず期待できない商品ですよね。
店長の尾崎さんは、仕事熱心でとても真面目な性格ですが、オフではぶっ飛んでいるとても面白いキャラクター。ですが、ECサイトでは真面目さばかりが先に立ち、学術的な記事が多く、為にはなるが印象に残るポイントは少なかったのです。
そこでブログを「敷板師さき子ブログ」としてリニューアルした、というところまでが前回のご紹介した内容でしたが、その後、取材が増えつつあり、年始には遂に地上波ローカル放送に出演したのです。
敷板という超絶目的商材、ニッチ商材のお店の店長を女性が務めるということ、「敷板師」という自身に肩書をつけた職業を目玉にプレスリリースも絡めて露出し、メディア出演を果たしました。
ブログのリニューアルをしたのは昨年秋。そこから仕掛けて、わずか数カ月後にテレビ出演を射止めたのです。
敷板ですから話題性があったり、いわゆる「映える」商材ではありませんが、冒頭にお話した通り、いつ来るかわからない波が比較的早く訪れた好例ですよね。
取材・放送時時にはサイトにさき子ブログというコンテンツが備わっているので慌ててなにかを作る必要はありません。
取材後の対策は、「放送日」「番組名」「サイト名」「商品名」など、短い放送時間でも視聴者が記憶し、検索しやすいキーワードをサイト内に入れ込んでおくことです。これが最重要ですね!
放送中、尾崎さんはじめスタッフさんはグーグルアナリティクスのアプリをスマホでチェックしていて、最大113ユーザーが来訪していました。
大きな来訪の波が訪れた時、アクセスしてくださった方々が、どのページを見て、どう遷移し、どこで離脱したのか?コンバージョンは?問い合わせは?直帰率は?普段はアクセスが少ないサイトでも、メディア露出では膨大なデータが入り込みますから、ましてリアルタイムでお客さんがサイト内を動く様子を見るのはとてもおもしろいですし、今後に繋がりますので重要ですね。
すぐに受注には繋がらずとも、普段の何十倍ものアクセスを獲得することで、今後のコンテンツマーケティングやSNS施策の大きな材料となることは間違いありません。
知人のECサイトでは、採用面接時にSNSやサイトでお店の中の人として登場できるか否かは重視するとも仰っています。アパレルブランドのいくつかではSNSのフォロワーが一定数以上だと採用するという動きもありますよね。
このように益々「個」の力は重要になってくると思います。
「何を買うかではなく、どこから買うか、誰から買うか」
どれだけ便利になっても最後は人と人であると考えています。
次回では、このあたりの後日の活用法などの事例をご紹介していきたいと思いますのでお楽しみに。
第17回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
2018年、2月にコラムを始めさせて頂き、本当に人生が変わったと言っても大げさではないほどの出来事がたくさんありました。
2019年も、きっとこのコラムが様々な出会いやご縁を紡いでくれることを楽しみにしておりますので、引き続き宜しくお願いします。
合わせて、ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉もよろしくお願いします。
http://www.machicollege.jp/contact
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次回は、引き続き個性を強化したサイト、そのためにコンテンツ作成でのコツをご紹介する予定ですので、次回もどうぞ宜しくお願いします。
2019年2月13日ミカタカレッジに再び登壇します。
最後に宣伝告知ではございますが、
昨秋7講座開催され、いずれも満員御礼となりました
ECのミカタ主催「ミカタカレッジ」が再び開催されます!
僕は2月13日に「誰でも出来る!SEOとSNSを使った集客と販促」と題して、このコラムでお話仕切れない部分を深掘り。
こちらがお話する一方的な講座ではなく、ご参加者さんのサイトやSNSを拝見、その場で改善案などを出す、双方向参加型にしたいと思いますので、ぜひご参加下さいませ!
https://college.ecnomikata.com/seminar15/
開催日時:2月13日(水)19:00~22:00
開催場所:ECのミカタカレッジ(ECのミカタ株式会社内)
〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-7-3 いちご恵比寿西ビル6F
講座料金:20,000円(税別)
定員人数:16名