【第4回】ビジネスモデルが変わると年収がアップするって本当ですか?

古屋 悟司

花屋ゲキハナを経営する傍ら、昨年と今年、2冊の会計書を出版させていただきました。
また、現在は、植物病院の経営やコンサルティングファームの運営もしています。
やり始めたコト全てがうまく行ったではなく、失敗して立ち消えたものも数多くあります。
失敗続きの連続ですが、僕の失敗が誰かのお役に立てるならうれしいです!
身をもって体験した、売上、利益、お金の話を絡めながら、小手先ではない本質のお話をしていきます。

<過去記事はコチラ>
【第1回】売上が上がると年収がアップするって本当ですか?
https://ecnomikata.com/column/20168/

【第2回】粗利が上がると年収がアップするって本当ですか?
https://ecnomikata.com/column/20188/

【第3回】損益分岐点売上高がわかると年収がアップするって本当ですか?
https://ecnomikata.com/column/20290/

ウチさ〜。な〜んか給料安いんだよね〜。
もっとラクして儲かる仕事ないのかな〜。

その気持ち、とてもよくわかります。僕も若かりしころ同じこと考えてました。もっと頑張れば給料は上がるはず。だからもっと沢山売って、年収上げていこう!

そんなことを考えていたわけですが、いろんなことを知るにつけ、儲かりやすい業界と、そうでない業界があるということに気づきました。

当たり前ですが、今伸びている業界は、儲かる可能性がとても高いです。例えば半導体とか、不動産とか。でも、伸びている時期が終われば、いきなり儲からなくなる可能性もはらんでいます。

もう一つ言えるのは、扱う商品によって儲かりやすいとか儲かりにくいは確かに存在しています。

単価が高くて、粗利の大きな商品は儲かりやすいです。
単価が低くて、粗利の小さな商品は儲かりにくいです。

もちろん例外はあります。単価が低くて、粗利が小さくても、めちゃくちゃ沢山売れると儲かる。でも、沢山売るために人を沢山雇ったり、経費を沢山使うと儲かりません。

儲かる会社に所属していると、年収は上がりやすくなります。

もう一つ、けっこう大切な真実が・・・。社長がお金持ちで、従業員が貧乏、これは確かに存在するケースです。でも、「社長が貧乏で、従業員がお金持ち」この状態って存在しないですよね?

そんなことも含めて、今日は「年収が上がるためにはビジネスモデルが大事」というお話をして行きます。

■携わる業界で年収は変わる

■携わる業界で年収は変わる

まずは、ちょっとこの記事を見て欲しいんです。
東洋経済さんの記事で見かけたのですが、「40歳年収 64業界別ランキング」というものがありました。

トップがコンサルテイング業界、2位が総合商社、自動車が12位、そして僕らのいるECはちょうど真ん中36位、下の方に行くと、ホームセンターや家電量販店、最下位に介護業界がありました。

もちろん、あくまで業界平均なので、コンサルティング業界でも年収の低い会社はありますし、介護業界でも年収の高い会社もあると思います。でも、これ自体が年収が上がりやすいか上がりにくいかの縮図なんですよね。EC業界、真ん中でまだよかったなって思いました。これ、最下位の方だったら夢がないじゃないですか(笑)

ECと言えども、それぞれの業界の商品を販売しているわけなので、業界の年収が反映される可能性もあります。

ここに、一つの面白い考察ができるんです。「仕入れ物販は儲かりにくい」という傾向。原価のかからないサービス系や、メーカーが上位を占めています。

また、BtoC(個人向け販売)も儲かりにくい(平均以下はほとんどが個人向けです)。ちょっと愕然としますよね。僕らECのほとんどは、個人向け販売なんですから。

確かにBtoB(法人向け販売)で粗利が高ければ、単価も高く儲かりやすいですからね。今のECの仕事が嫌で嫌で仕方ないというのであれば、早いとこ転職しちゃってください♪

でも、今の仕事が好きならば、一緒に年収が上がる道を考えて行きましょう!

これね、利益率の問題だと思うんです。100万円販売してほぼ全部利益のコンサルティング業界。100万円販売して、仕入れだけで半分以上かかってしまっている物販。

当たり前ですが、前者の方が儲かります。早い話が売上も大事ですが、利益率が大事というお話です。そこから諸経費を引いて、「残ったお金を社内のみんなで分けて行く」というのが給料というわけです。そりゃ、分け前が大きくなるのは前者なわけです。

でも、物販。その中でも儲かりやすい位置にいるECですから、まだまだ希望はあるわけです!


■ビジネスモデルを変化させ高収益な会社に変える

■ビジネスモデルを変化させ高収益な会社に変える

そもそも、ビジネスモデルってなんだ?

という方もいらっしゃるかと思いますので、wikipedia先生の言葉を借りると、次の通りだそうです。

「ビジネスモデル(business model)とは、利益を生み出す製品やサービスに関する事業戦略と収益構造を示す用語である。」

早い話が、「商品の売り方」や「収益の取り方」の構造をどうするのか?ということですね。例えば今現在、あなた自身が年収が低いと感じている場合、会社の利益がそれに足りていないからと考えられます。

となると、単純な結論として、会社の利益をさらに高めてしまえば、自分にも分け前が入って来やすくなります。

ではなぜ、今の状態では利益が少ないのかを考えて行くと、おおよそ2つの理由が出てくるんです。

・単純にあまり売れていない。
・たくさん売れているが、利益が残らない。

この2つです。

単純にあまり売れていない場合は、「商品力が足りない」か、「販売している市場がズレている」のどちらかです。

そこを改善するだけで、意外と売れ行きが良くなる場合があります。商品力を高めたり、付加価値をつけたりして商品力をあげてみてください。

そして、それを求めている人はどんな人なのかを考え、そこにアプローチするのが良いと思います。広告、ポイント、クーポン、値引きの小手先だけで売れるほど、今のお客さんは単純ではありませんので、「お願いだからその商品を売ってください!」と言わせてしまうような状態を作ってみてくださいね!

そして、肝心なのが、「たくさん売れているが、利益が残らない」場合。これは、「仕組み」に問題があるケースが多いです。

薄利多売を否定する方は多いですが、僕は否定しません。薄利でもたくさん売れていて、経費が節減できていれば、利益はちゃんと残ります(すごく儲かる場合もあります)

また、むやみやたらに値上げが正義だという方もいらっしゃいますが、それも違うのではないかと思います。値上げして売れる性質の商材と、そうではない商材がありますので、そこは見極めが肝心かなと。「値上げは実質的な値下げであるべき」という言葉もあります。はい、僕の言葉です(笑)

ということで、最初に着手すべきは、経費がかからない仕組みづくりを進めるということではないかと思います。


話は変わりますが、とてもわかりやすい事例を紹介しますね。

「年商1億円を売って、利益で1000万円を出したい場合、どちらが簡単そうか?」というお話です。

・1000円の商材を1年かけて10万個販売する。
・1億円の家を1年かけて1棟販売する。

どちらも年商1億円です。

1000円の商材の場合には、諸経費や仕入代金、人件費などを9000万円までかけられます。1億円の家の場合も、諸経費や仕入代金、人件費などを9000万円までかけられます。
※税金関連は考慮してません。あしからず。。

方法はどちらでも良いのですが、「簡単そう!」と思った方を選ぶのが、あなたにとってやりやすいビジネスモデルというわけです。

次の項ではさらに、突っ込んだお話を展開して行きますね!


■社員を増やして欲しいと懇願すると年収は下がる可能性が高い

■社員を増やして欲しいと懇願すると年収は下がる可能性が高い

特に忙しい職場だと、現場のスタッフさんたちの疲弊も激しく、人を増やして欲しいと思っている方も多いのではないかと思います。

「残業代なんかいらないから、もっとやらせて欲しい!」と仕事を楽しんでいる方は別として比較的、勤務時間内に仕事が終わらない傾向にあるのも、EC業界の特徴だったりします。

もちろん、クリエイティブな仕事は、みんなが帰った深夜の社内の方が捗る!という意見もあるのですが、そうではないケースに関してお話しします。

ウチの会社もそうでしたが、仕事が多すぎて時間内に終わらないということが多発してました。梱包出荷の現場も忙しくて、人が足りないから増やして欲しいという要望が頻繁に起きていたんです。人を増やすのは簡単です。募集かけて採用すれば良いだけのこと。

でも、そこにもお金はかかっているし、一人スタッフさんが増えれば、会社の利益から支払うわけです。ということは、自分の年収が上がる可能性がどんどん下がります。

また、新人スタッフさんが1人前に仕事ができるようになるまでに、ある程度教えることが必要になるので、仕事が増えるんですよね。

ってことは、忙しい現場がさらに忙しくなるという悪循環になりやすいんです。もちろん、離職してしまったスタッフさんを補うための採用はとても大切なこと。

でも、今までの仕事を少ない人数で回せるようになると、その分、利益が増えるのも事実です。

利益が増えれば分け前が増える可能性が高まる。ここに注目して欲しんです。

人手のかかる梱包出荷、毎日たくさんの新商品が入ってくるページ制作現場。忙しいから人を雇って欲しいというのは簡単なのですが、何か工夫をして少ない人数で回せないものだろうかと考えてみてほしんです。

例えば、梱包出荷は全て外注にしてしまい、利益を生み出す仕事(例えばリピーター促進業務)を梱包スタッフさんたちが賄う。

例えば、ページ制作は外注化してしまい、新たな仕事として、販促企画や商品価値を高めるための知恵をしぼる仕事をする。

今の仕事と同じ環境で、自分自身が何も変わらずに「年収が自動的に上がる」のが、そりゃ一番ラクです。でも、そのために誰かが知恵を絞って工夫しているので、知恵の出所に社長はお金を払いたくなりますよね?

であれば、最低限、できることを増やしたり、仕事に興味を持ったり、新しいことにチャレンジしてみたり。自分の可能性を広げる、キャリアアップすることも可能ですから、ぜひ挑戦してみて欲しいんです!

新しいスキルを身につけることも、工夫をすることも、知恵を絞ることも、どれもがこれからの時代必要になってきます。

お金をかけて利益を最大化する方法は比較的簡単です。でもこれは大企業の感覚です。中小企業に有り余るお金があるのであれば、それを使えば良いのですが、その前にその会社の年収は高いはずです。

今の年収よりもさらにアップを考えているのであれば、「お金をかけずに知恵を使う」このスタンスが大事だと考えます。


■全員で利益を稼ぎ出す会社を目指そう!

■全員で利益を稼ぎ出す会社を目指そう!

冒頭でご紹介した「40歳年収 64業界別ランキング」の中で、電子部品メーカーが33位と上位でした。記事を読み進めると、オプトランという会社は業界平均の約2倍の平均年収1000万円超だそうです。

社員のほとんどが「セールスエンジニア」なんだそうです。「セールスエンジニア」と一言で言うのは簡単ですが、エンジニアという内向きの仕事と、セールスという外向きの仕事の両方を、一人でこなすスキルを持ち合わせているのはすごいことだと思いませんか?

私の仕事は受注担当だからメルマガは書きません、企画もできません。
私の仕事は梱包だから、ページ制作はわかりません、商品知識はほどほどです。
私の仕事は企画だから、梱包のことには興味ありません。
私の仕事は顧客対応だから、売ることには興味がないんです。

自分が得意とする仕事を生業にするのはとても良いことだと思います。でも、隣の席でやっている仕事に興味を持たないのは、実はとてももったいないことなんです。また、自分たちは「売り手」である会社で仕事をしていますが、同時に日々モノを買う「買い手」でもあるんですよね。

であれば、「このキャッチコピーどう思う?」と聞かれたときに、素直な感想を言うことは可能じゃないですか?

「箱を開けた時に、この状態よりも、もうちょっとこうなっていて欲しい!」とか、
「こんな企画があったら楽しめるのに!」とか、むしろ素人目線を欲しがっているのが専門職の現場です。

小さな会社こそ、スタッフ一人一人が利益に敏感になりながら、お客さんとしっかりと向き合い「どんな時に商品を買いたくなるのか?」「どんなシチュエーションでこの商品は喜ばれるのか?」そんなことを全員が考え、意見を言い合い、全ての仕事が自分ごと化できるようになる。

この状態が、仕組み化や効率化の最終的に目指す形だと思っています。この状態があってこそ、ビジネスモデルは生きてきて、会社が高収益に変化してきます。

全員が売り手になっている会社はとても強いです。お客さんからのクレームも拾い上げ、顧客対応に活かせます。そして、そのお客さんに喜んでもらえる商品をお勧めできます。

小さな会社だからこそできることがあります。むしろ、今回、僕が提案していることを、上場企業でやろうとすると、おそらく怒られるでしょうし、迷惑がられます。小さな会社だからこそ、全体を見渡して全てのことが自分ごと化できる楽しみがあるんです。

ぜひ知っていただきたいのは、みんなで達成した過去最高益の喜び。みんなで頑張って手に入れた決算賞与の嬉しさ。

もちろん、お金だけのために働くのではないですが、最高の瞬間です!


そして最後に、経営者の皆さんへ。

社長が貧乏で従業員がお金持ち。この状態ってあり得ませんよね。だからこそ、バッチリ儲けていいんです!まずは社長さんが儲かることです!それが伝播して、社員さんたちの年収が上がって行きます!ぜひ還元してあげてください!



■あとがき

■あとがき

とはいえ、AIの進化は凄まじいスピードで僕らの仕事を奪って行きます。おそらく5年後には、ほとんどのルーティンワークはAI化されていてもおかしくないわけです。

なぜなら、その方が儲かるからです。今現在、すでに仕事の単価は落ち続けています。では、これから何が必要かと問われれば、ロボットにできないことをする。これしかありません!!

つまり接客においての「キャバ嬢化」「ホスト化」が大切だと思っています。

若干、ふざけた感のあるネーミングですが、AIに愚痴っても楽しくないですよね?
AIに褒められても嬉しくないですよね?AIに優しくされても嬉しくないですよね?
AIにできない仕事ぶり(特に接客において)を発揮する以外に道はないわけです。

と言うことで、人間にしかできないこと、もっと言えば、あなたにしかできないこと。それを突き詰めていくことこそが、年収をアップしていく方法と言えるのではないでしょうか。

「何言ってるのか全然わかんないんだけど・・・」と言う方は、とりあえずキャバクラかホストクラブに足を運んでみてくださいね!



次回は、ついに最終回!!
「【第5回】社内でお金の話をすると年収がアップするって本当ですか?」をお送りします。

【最終回】社内でお金の話をすると年収がアップするって本当ですか?
https://ecnomikata.com/column/20476/

<お知らせ>
社内で評価され年収をあげるにはどうしたらいいのか?
従業員にもっと給料を払うにはどうしたらいいのか?
そんなことを持って書いた本です。

「数字が読めると年収がアップするって本当ですか?」
https://www.amazon.co.jp/dp/453405615X/

祝!電子書籍化が決まりました!
ありがとうございます!!

■おまけ

僕が「集客の神様」としてあがめている人がいます。ECのミカタさんでもコラムを執筆中の酒匂さん(通称サコッチ)です。

彼はコンテンツによって集客をし、SEOを自在に操ります。これ、独自ドメインの本店サイトだけの話と思うでしょ?

そんなことはない。実は、モールでも使える手法なんです。

おかげで、今月はアクセス数が前年に比べ30%も伸びました!

今回彼の渾身のコラム「【第13回】検索エンジンの今を捉え、得意領域で検索獲得を」はとても強烈なインパクトで、大変興味深い考察が書かれていました。

その界隈では第一人者なんじゃないでしょうか。

そのコラムはこちらです!(ただし、読まなくてもいいです)
https://ecnomikata.com/column/20362/



著者

古屋 悟司 (Satoshi Furuya)

1973年東京生まれ。
あとりえ亜樹有限会社代表取締役
V字回復研究所 所長
「さしすせそ」がうまく言えない東京育ち。
大学卒業後、トヨタのディーラーに就職。新人賞を獲得後、さらなる収入アップのためにブラック企業へ足を踏み入れる。
訪問販売業で荒稼ぎするも、自宅が火事になり全てのやる気をなくし退職。
2002年再起をかけ花屋ゲキハナを開業。2004年楽天市場へ出店。
倒産の危機を経験し、三方よしを学ぶ。
その経験を生かして書いた会計本『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』は、国内外で高い評価を得てロングセラーに。台湾で翻訳され、中国でもその予定あり。
好きな食べ物は、ラーメンとカレー。
現在、「V字回復研究所」を立ち上げ、会う人と会社を元気にする活動をしています。


花屋ゲキハナ
https://www.gekihana.jp/

V字回復研究所
https://furuyasatoshi.com/

フェイスブックアカウント
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