ブラックフライデーは欧州のホリデーショッピングを変える?
アメリカ全体が盛り上がる一大ショッピングイベント、ブラックフライデー。近年、その波紋が大西洋を超えて、欧州諸国にまで広がっています。テレビやネットで目にするセール告知に消費者の購買意欲が刺激され、お目当ての商品を少しでも安く買おうと意気込む人々が多いのは、疑いのない事実です。
今回は、アメリカ由来のショッピングイベントであるブラックフライデーに、欧州国はどう反応しているのか、イベントの定着度と消費者の関心レベルについて調査しました。
ブラックフライデーとは
アメリカの感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日にあたるブラックフライデーは、感謝祭に贈り合うプレゼントの売れ残りを在庫処分するために小売店が始めたイベントですが、それと同時に、年末商戦の幕開けを告げる日として、各地で大規模なセールが実施されます。
実際に、ホリデーシーズンである年末の売上げは年々急増しています。ブラックフライデー当日の全体収益に対し、スマホを使ったショッピングの収益はおよそ40%を占め、1日で約12億ドルに達すると予測されました。これは、消費者が自宅に居ながらでも気軽にオンラインショッピングをし、外出中でもスマホで買い物ができる利便性を好むようになった状況を示唆しています。
大西洋を越えたブラックフライデー
ブラックフライデーはアメリカを中心としたイベントですが、「ショッピングホリデー」を待ち構える欧州の人々にとっても、クリスマスシーズンの到来を告げるイベントとなりました。
Google Trendsでキーワード「ブラックフライデー」が検索された件数を比較してみると、欧州国における過去4年間の購買心理にも変化が見られるようです。
消費者が最大の関心を抱いている状況を「100」とすると、唯一イギリスだけが低下傾向を見せていますが、欧州の5ヶ国のうち4ヶ国でブラックフライデーに対する関心が高まっています。実際の消費傾向にも結びついているのでしょうか。
ブラックフライデーの本当の効果とは?
2017年第4四半期における日次の収益動向を分析するため、Adjustが測定している欧州主要6ヶ国のすべてのアプリについて分析を行いました。これらのデータは、ユーザー単位で取得したもの(特定の地域におけるユーザーの購入データ)で、アプリが開発された地域情報は考慮されていません。
この期間に発生した6ヶ国の売上げデータを1つに集計したグラフを以下に示します。
まず、数値はブラックフライデーにピークとなり、携帯端末を経由した売上げは、四半期別の平均収益の143%に達し、そのピークは第4四半期の中で大きく上回っています。国別ではどのような違いがあるのでしょうか。
この数値を見ても、ブラックフライデーが欧州に影響を与えていることが明らかです。ドイツやイタリアでは、ホリデーショッピングの習慣とモバイルコマース(携帯電話を利用した電子商取引)の両方が定着しつつあり、よって他国よりも携帯端末を使ったショッピングの売り上げが上昇しています。
欧州における地域別の比較
ヨーロッパでブラックフライデーが盛んな国は、フランスやイギリスではないかと想像するかもしれませんが、イベントとして浸透するかどうかの要因となる文化的な背景は、国によって異なります。
例えば、イギリスには伝統的なショッピングイベントであるボクシングデー(12月26日)がありますが、これが要因でブラックフライデーが定着しないのではないかと言われています。
Adjustの独自調査でも明らかになったように、イギリスではブラックフライデーが他国に比べて盛り上がりに欠けることを裏付けるものです。
フランスでは、セール期間は1月から2月までと、6月から8月までの年2回だけということが、法律によって規制されています。ブラックフライデーに合わせてマーケティング活動を行うのは可能ですが、商品を大幅に値引きするのは法律で禁止されています。よって、フランスのショッピングシーンは比較的落ち着いています。しかしその一方で、消費者のホリデー気分を盛り上げるようなマーケティング施策を行って、売上げを伸ばしている事例もあります。
ブラックフライデー商戦が最も成功している欧州国はドイツで、176%の収益増を記録しました。それ以外の市場では、クリスマスイブの数日前を除き、該当期間全体でアクティビティが低下することはほとんどありません。
アプリマーケターができること
アプリマーケティングの担当者は、これらのデータをどう活かすことができるのでしょうか。
● 年末は重要なホリデー商戦期
欧米では、ブラックフライデーは年末のホリデーショッピングイベントの1つとして定着しています。世界の様々な地域で売り上げが急増する日に合わせて、日本でもキャンペーンを実施しない手はありません。
例えば、ブラックフライデーに合わせて、このようなマーケティング施策が考えられます。まず、セールの対象となる在庫品に類似した商品を購入した履歴があるユーザーをセグメントします。次に、ブラックフライデーに合わせ、該当するユーザーをPush通知やメールなどで誘導し、エンゲージメントの変化と当日の購入状況を測定します。集約したデータは、年末年始のセール期間を最適化するためにも、有効活用することができます。
このようなマーケティング戦略には、閲覧した広告の商品にユーザーを直接リダイレクトできるディープリンクが大いに役立ちます。
● ブラックフライデー前後の期間も重要
ブラックフライデー前後の1週間と当日の売り上げ規模が同程度であることは、決して驚くことではありません。Adjustの独自調査によると、ブラックフライデー前後1週間の1日あたりの買い物は、第4四半期全体と比較して、約45%増加しています。
セールを早期に開始してこの勢いをサイバーマンデーが終わるまで維持することにより、大きな見返りを期待することができます。
● 欧州では、モバイルコマースがブラックフライデーの推進力に
Periscopeがイギリス人とアメリカ人消費者1,000人に調査したところ、35.6%のアメリカ人と38.24%のイギリス人が、商品を探索するために携帯端末を利用していることがわかりました。同様に、同グループの9%のアメリカ人と18.5%のイギリス人は、オンラインのみで買い物をすると回答した一方、調査対象者の約60%は、オンラインと実際の店舗での買い物を併用すると答えています。これらの数値は、eMarketerの調査結果によっても裏付けることができます。
ショッピングの大切な意思決定をする手段として、スマートフォン利用が成長を続けていることは間違いありません。ユーザーはスマホを価格比較の手段として利用し、実際の店舗に居ながらオンラインで注文するようにさえなっています。
ブラックフライデーは、欧州のショッピングカレンダーに、客を引き付ける一大イベントとしての地位を維持し続けるでしょう。しかし、市場に強いインパクトを与えているイベントは、ブラックフライデーだけはありません。例えば、独身者同士が集まってパーティをする中国の行事「独身の日」にちなんで、2010年頃からECサイトが大規模な販促イベントを行なっており、アリババの盛況ぶりが国外でも注目されています。これがAPAC地域にどんな影響を与えているかを、次回の投稿記事で詳しく解説いたします。