[第3回] ザ・ボディショップが仕掛けるオムニチャネルの今後「店舗の体験をデジタルで向上させる」

斉藤 正賢

ザ・ボディショップのオムニチャネル推進環境づくり

みなさま、こんにちは。
イギリス生まれの自然派化粧品ブランド「ザ・ボディショップ」でEC運営/オムニチャネル推進を担当している斉藤です。

前回、ザ・ボディショップでは、お客様の利便性を上げる施策が積み重なった結果、オムニチャネルの実現に繋がった、ということをお伝えいたしました。

過去記事
[第1回]オムニチャネルは手段の一つでしかない
https://ecnomikata.com/column/22112/
[第2回] ザ・ボディショップがオムニチャネルを推進する理由
https://ecnomikata.com/column/22178/

今回、ザ・ボディショップはオムニチャネル施策において何を行っていこうと考えているのか、私達が考える「店舗の体験をデジタルで向上させる」とはどういうことかをお伝えいたします。

顧客ID統合で視えてきたもの

2013年に実施した顧客ID統合によりお客様の購買データを一つのデータとして捉えることができるようになりました。

そこでわかったことは、ザ・ボディショップのお客様の中でも特に上得意顧客であるロイヤルカスタマーは、ECと店舗を使い分け、どちらのチャネルからも購入されている方が多いということです。

ここで大切なのは安易に相互送客を行えば良いということではありません。

・ロイヤルカスタマーは店舗とECで購入している方が多い

・店舗とECで購入してもらうことがロイヤルカスタマーを増やすことにつながる

・相互送客施策を実施する

これは一見、筋が通った話に見えるかもしれません。しかし、主語がお客様ではなく事業者です。データを見る機会が多い人ほどこの過ちに陥りやすいと感じます。

ザ・ボディショップではこのように考えています。

ロイヤルカスタマーは店舗とECで購入している方が多い

ロイヤルカスタマーはオフラインとオンラインを行き来している

お客様が買いたい・知りたいと感じたタイミングで商品や情報を提供できる場を用意することがロイヤルカスタマーを増やすことにつながる

お客様が買いたい・知りたいと感じたタイミングをどのように知るか、それはオフラインにヒントがあると考えています。

店舗の体験をデジタルで向上させる

顧客時間奥谷孝司氏が提唱する顧客時間のフレームワークを使用して考えると視覚化しやすい

ザ・ボディショップは2019年初秋アプリリニューアルを行う予定です。

アプリリニューアルには様々な目的がありますが、オムニチャネル施策の視点ではオフライン行動データの取得があります。

前述の通り、会員IDに基づく購買データの統合は済み、様々な施策に活用されています。そしてこれからは購買前データの取得と活用に挑戦していきます。

まず初めに来店データを取得する仕組みを導入します。お客様が来店するには様々な理由があります。

・普段使っている製品のリピート購入
・気になる新商品の発売
・店頭スタッフの呼びかけ
・返品や交換

そして来店理由の他にタイミングも重要なデータとして取得できます。

・平日夜に来店する人は仕事帰りの方が多いかもしれません。
・日曜日に来店した人が平日に来店するようになったら生活に変化があったのかもしれません。
・長期間同じ店舗に来店していた人が他地域の店舗に来店するようになったら、転居後もブランドを愛し続けてくれるエンゲージメントが非常に高い人かもしれません。

来店データだけでも様々な仮説を出すことができます。

異なる理由や時間・曜日に来店する方に同じコミュニケーションで良いはずがなく、情報過多の現代、不必要だと感じられるとコミュニケーションは成り立ちません。そして一度不必要だと感じられると、コミュニケーションを取れなくなってしまいます。(LINEのブロック、Twitterのミュート・リムーブなど)

実店舗への来店データとオンラインでの来訪データを繋いでお客様の行動を分析することにより、そのお客様にあったアプローチをオンラインとオフラインの両方で行っていく。結果として、双方のチャネルを使いこなすロイヤルカスタマーを増やしていくことを目指しています。

次段階では接客データの可視化に取り組むことを検討しています。

良い接客をして購入につなげる。これは、店舗を持つ大抵の小売業にとって日々鋭意努力していることです。

購入はお客様がブランドや製品を支持している意思です、魅力を正しく伝えることができなければ購入にはつながりません。そして魅力を正しく伝えられないがために、お客様が素晴らしい製品と出会えない、これはお客様にとって悲しいことです。

現在、ザ・ボディショップでは接客を経てその場でご購入頂いた場合のデータは可視化できています。しかし、後日再来店で購入された場合やECで購入された場合のデータは可視化できていません。

ここを可視化することにより、スタッフの接客を受けたお客様が後日店舗やECで購入したパターンも紐付けが可能となり、より正確にスタッフの得意、不得意を見つけることができるようになります。

例えばボディスクラブが得意なスタッフ、美容液が得意なスタッフなど、長所を見つけ共有することによりスタッフ全体の接客スキルの向上につなげることができます。また購入の起点となったスタッフがわかることにより、オフライン・オンラインを超えたアトリビューション分析が可能となります。

必要以上のデータは行動を遅くする

オフラインのデータ取得は現在のテクノロジーを駆使すれば難しいことではありません。しかし、ザ・ボディショップは段階的にデータ取得を進めていきます。

その理由はリソース以上のデータは人の動きを遅くするためです。

データは重要な判断基準となりますが、あくまでも行動を起こすための材料に過ぎません。またデータから見えるものはあくまでも”仮説”です。“仮説”は行動し、検証することで初めて価値を持ちます。

“仮説”の答えはお客様だけが知っています、お客様に問いかける機会を増やしながら精度をあげるためにザ・ボディショップは段階的にデータ取得を行っていきます。

次回は最終回、リアルとデジタルの社内融合についてお伝えいたします。


著者

斉藤 正賢

1986年東京生まれ。
2007年、包装用品、店舗用装飾品、慶弔用品、事務用品などを扱う専門商社に販売員として入社。
2010年、自社ECサイト立ち上げを機にEC運営に携わるようになる。その後、モール店立ち上げ、公式SNS、LINE@など様々なサービスの立ち上げ、受注管理システム導入などを主導で進める。商品導入の商談から受注対応、出荷業務、広告運用までEC運営に必要な幅広い業務を担当。立ち上げから7年連続二桁成長を達成し退職。
その後ECパッケージベンダーにてwebディレクターを経験、複数クライアントの運用支援に従事。
2018年より現職。株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)にてモール運営、オムニチャネル推進・自社サイト/アプリ開発などデジタル分野に広く携わっている。


THE BODY SHOP(ザ・ボディショップ) オフィシャルサイト
http://www.the-body-shop.co.jp/shop/