検索連動型広告でニッチなキーワードを設定する際の注意点
売れるネット広告社 メディア部 SEMコンサルタントの吉崎峻弘(よしざきたかひろ)と申します。
単品通販(D2C)において検索連動型広告というのは2002年の登場以来、ネット広告施策の中心的存在となっており、ほとんどの企業で導入しているものと思います。
ECを利用する消費者は、さまざまな商品を比較検討した結果、最終的には検索連動型広告から購入することが多いです。そのため、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌の4マス媒体でネット広告で検索してもらうための「○○で検索」というキーワードを告知したり、モニター商品に同梱されているチラシに、定期(サブスク)商品への引上を目的とした特別オファーページに誘導するための検索キーワードを記載したりする例も多々見られます。
しかし、最近は検索連動型広告で設定したキーワードで広告が表示されないという事例を耳にするようになりました。今回のコラムでは、その要因や対策に関してご説明します。
検索連動型広告の広告掲載の決定要因は「広告ランク」
検索連動型広告の良いところとして、自分自身で広告を表示させるためのキーワードを任意に設定し、オークション形式(入札方式)で広告を表示させることが出来るという点が挙げられます。
しかし、Yahoo!広告(検索)・Google広告(検索)共に最終的に検索連動型広告の広告表示の決定要因は、単にオークションへの入札単価ではなく、「広告ランク」の高い広告から順に広告が表示されます。
「広告ランク」を算出するための決定要因は以下のようなものがあります。
1、 入札単価
2、 オークション時の広告の品質(推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性など)
3、 広告ランクの下限値
4、 オークションにおける競争力
5、 ユーザーが検索に至った背景(ユーザーの所在地、デバイス、検索時間、検索語句の性質、ページに表示されるその他の広告と検索結果、その他のユーザーシグナルと属性)
6、 広告表示オプションなどの広告フォーマットの見込み効果
「広告ランク」の算出には上記のような複数の要因を基に、Yahoo!・Googleの各検索システムによってユーザーが検索を行うたびに即座に広告ランクの計算が行われ、算出された値を基に広告ランクの高い広告から広告掲載が行われています。
2002年に検索連動型広告が開始した当時は単なるオークション形式であったため、入札単価を上げれば広告は表示されていました。しかし、現在は上記の通り入札単価は「広告ランク」を決定する一つの要因にしかすぎず、入札単価以外の広告ランクの決定要因の改善も重要な要素となっております。
新しい言葉や造語はすぐには広告表示されないサスペンド状態
新しい言葉や造語に関しては、Yahoo!・Google共にキーワードとしてのデータが無いため、最初は広告が表示されない状況=「キーワードのサスペンド状態」となっています。
サスペンド状態の理由としては、広告ランクの決定要因内にある、
5、 ユーザーが検索に至った背景(ユーザーの所在地、デバイス、検索時間、検索語句の性質、ページに表示されるその他の広告と検索結果、その他のユーザーシグナルと属性)
が大きく関わってきます。こちらの「検索語句の性質、ページに表示されるその他の広告と検索結果」から、新しい言葉や造語にはこれらのデータが無いため、言葉が出来たばかりの段階では広告を表示して問題が無いキーワードかどうかの判断が出来ず、キーワードが出来た初期の段階では広告を表示させていないものと考えられます。
以前、5~6年程前までは大手総合代理店・大手専業代理店にはYahoo!・Googleの各営業担当経由で「サスペンド解除依頼」というものが存在しました。具体的にはテレビCMや雑誌内で「○○で検索」と新しい言葉や造語を作成し、検索連動型広告でCM放送日・雑誌の発売日初日からそのキーワードで広告を表示させるように、事前に各媒体社に伝えることで、どのようなキーワードであっても検索連動型広告で広告を掲載することが可能でした。しかし、こちらの依頼は広告表示の公平性という観点から、現在はYahoo!・Google共に廃止となっております。
「サスペンド解除依頼」が無くなってしまった現在は、新しい言葉や造語を検索連動型広告で広告を表示させるためには、各検索エンジンに新しい言葉や造語であるということを早急に認識させ、データが溜まるのを待つ他、方法が無いというのが実情です。
サスペンド状況にあるキーワードを解除し、広告表示させるためには?
検索エンジンに新しいキーワードであると認識させるためには、多くの人がそのキーワードを認知し検索を行い、複数のメディアに取り上げられるのが一番有効な手段です。
実際にどれくらいの人数が検索を実施するか、キーワードの検索回数が何回以上でどれくらいのメディアに取り上げられるという具体的な数値は、Yahoo!もGoogleも公開していないため明言することは出来ません。
一番効果があるものはテレビCMなどのマス連動キーワードで、各種メディアに取り上げられる可能性も高く、検索ユーザーも大幅に増えることが想定されるため、CM放送翌日には広告が表示される可能性が非常に高いです。
しかし、テレビCMや雑誌などのマス連動用のキーワードではなく、同梱チラシからの引上げ用のキーワードではテレビCMなどと比較した場合ユーザーが非常に限られるため、同梱配送翌日から検索連動型広告で広告を表示させるのは非常に難しい状況です。
以前であれば、社員数50人前後の会社であれば社員全員が会社のパソコンから一日数回の検索、自宅のパソコンからも一日数回の検索、そしてスマートフォンからも一日数回検索を行うことで広告が表示されていました。
しかし、最近では50人程度の会社で上記の施策を実施しても、なかなか広告が表示されないという声を聞きます。こちらを考慮すると、現在は最低でも数百人規模で上記のことを実施しないと広告は表示されないのではないかと推測されます。
サスペンド状態ではないがニッチのキーワードの選び方
これまでのように新しい言葉や造語を用いて、検索連動型広告で広告を新たに出すことは非常に難しくなっております。しかし、特定のユーザーだけに訪れて欲しいケースもあるでしょう。
そのような場合は、サスペンド状態ではないがくニッチなキーワードの選定方法として、以下のツールを用いて事前にキーワードの状態を調べることが重要になります。
① Yahoo!・Googleで検索を行い広告が表示されるか確認
キーワード選定を行う段階から実際に各媒体で検索を行い、広告が表示されているかの確認を行います。何かしらの広告が表示されていれば現状はサスペンド状態ではないため、広告も掲載されます。
② Yahoo!検索キーワードアドバイスツール/Google広告キーワードプランナー
すでに検索広告のアカウントも持っているのであれば、Yahoo!広告・Google広告で無料で利用できるキーワードアドバイスツール・キーワードプランナーを利用して、想定される広告表示回数を確認してみるもの手段の一つです。実際に広告表示されているキーワード候補も提案してくれるため、提案されたキーワード中から表示回数を少ないものを選択して、キーワードとして設定を行うのも良いかと思います。
まとめ
今年3月に電通が発表した日本の広告費で、ネット広告費がテレビメディア広告費を抜いて昨年ついに一位となりました。その中でも運用型広告の取り扱いだけは依然堅調に伸びており、運用型広告でも特にビデオ(動画)広告が前年比で145.1%成長と伸びている現状です。
しかし、検索連動型広告も2002年に開始され17年ほど経過しましたが、それでも前年比117.1%成長、ネット広告費の全体のうち40.2%が検索連動型広告の割合となっており、未だにネット広告の中心になっている状況です。検索連動型広告は引き続き獲得の中心となっており、こちらの獲得効率をいかに改善していくかというのは多くの企業に共通する課題です。
ネット広告の中心だからこそ、検索ロジックの変更・広告表示の変更などが常に行われ、広告が表示されなくことも多々ありますが、逆にそこを乗り越えることが出来れば更なる効率改善に繋がっていく媒体です。
広告が表示されないからと諦めるのではなく、広告が表示されるキーワードで、如何に入札単価の安いキーワードを見つけていくかというのが検索連動型広告の醍醐味でもあるので、工夫しながら検索連動型広告を活用してもらえればと思います。
※ 参考 Google広告ヘルプ 広告ランク
https://support.google.com/google-ads/answer/1752122?hl=ja
Yahoo!広告ヘルプ キーワードアドバイスツールとは
https://ads-help.yahoo.co.jp/yahooads/ss/articledetail?lan=ja&aid=1147
Google広告ヘルプ キーワードプランナーについて
https://support.google.com/google-ads/answer/7337243?hl=ja
電通 2019年 日本の広告費
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html
電通 2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析
https://support.google.com/google-ads/answer/7337243?hl=ja