【2020年振り返り】楽天ニュースまとめ〜ゆれた「送料無料ライン」 日本郵便との連携加速〜

濱田祥太郎

2020年は楽天にとって、プラスもマイナスもあった特別な年だったと言える。「送料無料ライン」では公正取引委員会から緊急停止命令を受けるなど大きな話題に発展。一方EC事業は好調で、インフラ物流への投資も引き続き続ける方針。今年の楽天の話題をふりかえる。

「送料無料ライン」で揺れた上半期

年明けから春先にかけては、「送料無料ライン」が大きな話題になった。
楽天は2019年、「2020年初めにも楽天市場で一律の送料無料ラインを設ける」と発表した。
楽天はこれまで、楽天市場の送料無料ラインの価格帯設定を、基本的に各ショップに任せていた。それを楽天として一律に、3980円として送料無料ラインを設定する、とした。

これに対して一部の楽天市場への出店事業者からは、独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号)で規定している、「優越的地位の乱用」にあたるのではないかと声があがった。「店舗負担が増大する」という意見だ。

楽天は当初「法令上の問題はない」としたが、公取委は立ち入り検査を実施。東京地方裁判所に「緊急停止命令」を申し立てて施策を停止させようとした(後に取り下げ)。

楽天「共通の送料込みライン」全店舗導入を延期 新型コロナの影響で

結果的に3月、楽天は、店舗側の設定により「送料無料ライン」の対象外とすることができるほか、「送料無料ライン」を導入した店舗には「メール便100円・宅配便250円(いずれも上限あり)」の支援を期間限定で行うことを発表。直後の4月末時点で、店舗全体の約8割が導入した。

楽天が『送料無料ライン』をついに導入 店舗側で導入の可否を選択可能に・導入店には期間限定で「メール便100円・宅配便250円(いずれも上限あり)」の配送料支援を実施

流通総額増、物流にも継続投資

楽天決算は、コロナの影響でEC事業が大きく伸びたことが特徴だ。
コロナの影響が顕在化した5月発表の第1四半期決算では、グループの売上収益は前年同期比18.2%増の約3314億円。楽天市場などの流通総額は同57.5%増だった。

楽天が2020年12月期第1四半期決算短信を公表 売上収益は前年比18.2%増

8月発表の第2四半期決算でも、流通総額は前年同期比48.1%増。「巣ごもり消費」という言葉も浸透したように、ECが力強くグループ収益を押し上げた。

楽天が2020年12月期第1四半期決算短信を公表 売上収益は前年比18.2%増

11月に発表した第3四半期決算説明会資料

最新11月の第3四半期決算では、流通総額は前年同期比29.3%とこれまでほどの勢いはなかったが、引き続き伸びた。「楽天エクスプレス人口カバー率」は63.5%と、2018年1月時点の4%から大きく伸びた。2021年夏には96%まで拡大する予定だという。
一方、連結の営業利益が398億円の赤字。モバイル事業の投資を先行して行っているためで、シナジー効果を期待しているEC事業にどう影響を及ぼしてくるか引き続き注目だ。

楽天決算、コマース事業は引き続き伸長、モバイル投資にも注力。2020年度第3四半期

RMS、置き配とEC事業者向け事業も進む

EC事業者の利益につなげてもらうサービス拡大にも力を入れている。

2月には、楽天エクスプレスで、オートロックマンションに配送する荷物を対象に、住人の希望に応じて置き場所を指定する「置き配」の実証実験を行うと発表。4月には、サービスの認知向上と利用促進を図るため、置き配専用バッグ「OKIPPA(オキッパ)」を1万人に無料配布するキャンペーンを実施した。

楽天スーパーポイント200ポイントを利用ごとに付与 楽天が「置き配」の実証実験を実施
楽天が『OKIPPA』を無料配布 巣ごもり消費が拡大する中で「置き配」を推進へ

9月には、消費者の購買データを活用できる「RMP - Omni Commerce」新メニュー『アドホックオフライン購買分析』を追加。

「RMP - Omni Commerce」は、楽天が運営する「Rakuten Pasha」や「Super Point Screen」などのサービスを通じて、消費者の様々なオフライン購買データや位置データを蓄積するサービス。EC事業者にとっては、楽天のIDとオフライン購買データを軸に、有望層への働きかけが可能となるメリットがある。

[楽天] オフライン購買データ活用のマーケソリューション「RMP - Omni Commerce」に新メニュー『アドホックオフライン購買分析』を追加

DX、OMO加速へ新会社設立

楽天とKKRはウォルマートから西友株式を取得した(楽天のプレスリリースより)

11月には、実店舗を運営する小売事業者を対象に、実店舗のデジタル化やOMO施策導入などDX推進を支援する新会社「楽天DXソリューション株式会社」を来年1月に設立することを公表した。

※OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインの垣根をなくすことで顧客にとって効率の良い購買体験を与えるためのマーケティング施策。


AIによる需要予測を活用した在庫管理や価格設定の最適化、スマートフォンなどによる実店舗における”レジ無し決済”の導入などの支援を予定しているという。

さらにOMO施策として、オンラインとオフラインの購買データを融合し、ユーザーごとにパーソナライズされた情報を提供するなど、ユーザーにとってより便利な購買体験の実現を図るとしている。

また、新会社を通じて西友の株式を取得することも発表。すでにある実店舗を生かしつつDXを進める施策を展開すると発表した。

[楽天] DXとOMOを加速へ 新会社を設立・それとは別にウォルマートから西友株式を取得

日本郵便と戦略的提携 経済圏拡大へ

12月24日には、日本郵便と物流領域で戦略的提携に向けて合意したと発表した。

2018年から、楽天の荷物を郵便局で受け取れるサービスを開始している。今回は、協力関係をさらに深めるという発表で、両社の既存の資産および知見の活用最大化や、データの共有化とそれを活用した物流DXプラットフォームの構築・効率の良い配送システムの構築などについて提携する。

具体的な施策についての発表はまだだが、楽天のポイント経済圏が拡大することが予想される。

存在感増した2020年 来年は...。

今年は総じて、楽天の存在感が増した1年だった。「送料無料」についてはさまざまな反応があったが、モール界の巨人・Amazonを追いかける楽天としては避けて通れない取り組みだったとも言える。一方、「巣ごもり消費」も後押しに、EC事業が続伸。利便性向上も進んだ1年だった。

ECのミカタが4800人を対象に実施した消費者アンケートでは、「直近1年間で購入したことがあるECモールは?」との問いに、「楽天市場」と答えた人は全体の73.7%で、Amazonを抑えて1位だったことは印象的だった。

楽天はモバイル・金融事業といった、消費者に「近い」事業を抱えており、露出度・認知度も高い。各事業を利用した際のポイント連携など、消費者にとってお得な取り組みが今後も進めば、さらに支持を集めるだろう。

来年1月には5万点以上の中からベストショップを決める「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2020」が発表される。どのEC事業者がグランプリに輝くのか。消費者のトレンドをつかむ良い機会で、注目したい。


著者

濱田祥太郎

千葉県我孫子市出身。新卒で全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャーを経てMIKATA株式会社に入社。ECのミカタでは行政、規制系・老舗企業のEC事例に興味があります。