知らないとヤバい薬機法を徹底解説② 健康食品の広告表示の落とし穴~医薬品的な効能効果は事実でもNG!
こんにちは。『売れるネット広告社』代表取締役社長 CEO 加藤公一レオです。
健康食品や化粧品のマーケティングに携わっていると避けて通れないのが薬機法だが2021年8月、改正薬機法の一部が施行され、新たに課徴金制度が加わることになっている。
そこで、改正薬機法施行前のこのタイミングで、「知らなかった」では済まされない薬機法について、改めて基礎から徹底的に解説していきたい。
第2回となる今回は、健康食品の広告表現において注意すべき点を、OK表現・NG表現を交えて具体的にご紹介する。
健康食品の種類~「保健機能食品」と「一般健康食品」の違い
一口に「健康食品」と言ってもいくつかの種類があり、種類によって広告で表示可能な効能効果は異なってくる。
一般に「健康食品」と呼ばれるものには「保健機能食品」とそれ以外の「一般健康食品」があり、「保健機能食品」はさらに「栄養機能食品」「特定保健用食品」「機能性表示食品」に分類される。
◆栄養機能食品
ビタミンやミネラルなど、特定の栄養成分の補給のために利用される食品。 すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、個別の許可申請を行うことなく「栄養機能食品」を謳うことができる。
◆特定保健用食品
いわゆる「トクホ」。健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められており、「おなかの調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品。「特定保健用食品」表示には消費者庁長官の許可が必要で、表示されている効果や安全性については国が個別に審査を行う。
◆機能性表示食品
国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を消費者庁長官に届け出た食品。販売前に届け出ることにより、事業者の責任において機能性を表示することができる。特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない。
「一般健康食品」はあくまでも「食品」
上記のように、「保健機能食品(栄養機能食品・特定保健用食品・機能性表示食品)」であればその範囲内で認められた効能効果を謳うことができるが、それ以外の「一般健康食品」はあくまでも「食品」なので、医薬品的な効能効果を謳うことは一切できない!
薬ではないにもかかわらず、医薬品的な効能効果を標榜すると、薬機法に基づき処罰の対象となる。第1回で述べた通り、薬機法に基づく処罰とは、行政指導や課徴金(2021年8月1日~)、刑事罰などである。
これも第1回の復習となるが、「医薬品的な効能効果」とは下記の3種類を指す。「特定保健用食品」「栄養機能食品」として認められている効能効果でない限り、特定の病気や症状に効く・あるいはそれらを予防するといった表現は薬機法違反になってしまうのだ!
「便秘気味の方に」「血圧が気になる方に」など、効能効果を暗示させるのもNGなので注意しよう。
「個人の感想です」で逃げても違法は違法
薬機法を正しく理解していない人の中には、「NG表現を使っても『個人の感想です』で逃げればいいや」と考えている人も多い。実際に「このサプリメントを飲んだら、2週間で5kg痩せました。一生手放せません! ※個人の感想です」などと書かれたうさん臭い記事型広告をしょっちゅう目にする。
しかし、薬機法では「個人の感想です」を使った逃げは通用しない!!「個人の感想です」と記載すれば、何を書いても許されると思っている人もいるがそれは大間違いで、「個人の感想です」という注釈を付けたとしても、違法な表現が違法なことに変わりはないのである。
例えば、一般健康食品の広告で「このサプリメントで花粉症が治りました!※個人の感想であり、効能効果を保証するものではありません」と記載してしまうと完全にアウト!「個人の感想です」を使った逃げは通用しないので十分注意してほしい!
この広告表現はOK?NG?
化粧品同様、健康食品の広告表現における薬機法の規制は非常に厳しく、一般健康食品の場合は「食品」の範囲を超えた効能効果を謳うと即座に違法表現となってしまう。
では一般健康食品の広告において、どんな表現であればOKでどんな表現がNGになるのだろうか?具体的に例を挙げて見ていこう。
◯:このスムージーを夕食と置き換えることでダイエットができます。
→食事を低カロリーの食品に置き換えることによるダイエット効果を謳うことはOK!ただし「これだけで必ず痩せる」など、運動なしで・食事制限なしで痩せられるかのような表現は不可。
◯:ラムネのように食べやすいタブレット状の食品。カプセルが苦手な方や、乳製品が苦手な方も手軽に乳酸菌が摂取できます。
→栄養補給ができる旨をうたっているだけなのでOK!
×:女子力アップを叶えたい方へ。このドリンク1本で一日に必要な美容成分が摂取できます。
→「美容成分」が何らかの有効成分であるかのような誤解を与えるためNG!また、「1日に必要な美容成分」の合理的な根拠を証明することが難しいという点でも問題がある表現。
×:気になる脂肪を燃やすダイエットドリンク!1週間で100%痩せられます。
→脂肪燃焼効果や痩せる効果は、医薬品的な効能効果にあたるためNG!必ず食事制限や適切な運動が必要である旨を記載する必要がある。また、「100%」「絶対に」「確実に」「必ず」などの表現は、誇大表現と見なされるため、使わないように。
×:このサプリメントに含まれる「〇〇」という成分には、生活習慣病を予防する効果があります。
→病気の予防効果は医薬品の効能効果にあたるためNG!商品に含まれている成分を主語にして医薬品的な効能効果をにおわせることも不可となる。「健康的な毎日を目指すあなたをサポートします」等の表現であればOK。
×:このドリンクには乳酸菌が含まれています。乳酸菌は便秘解消の効果があることで有名です。
→上記同様、配合成分の効果によって、商品の医薬品的な効能効果を暗示的することはNG!「乳酸菌は健康維持のために摂取したい善玉菌です」等の表現ならOK。
×:このサプリでガンが治ります!
×:このサプリで花粉症が予防できます
×:このドリンクで免疫力がアップします!
→いずれも医薬品的な効能効果をうたっているためNG!
世の中にはまだまだ不正なネット広告が氾濫しており、上で例に挙げたようなNG表現を使った健康食品の広告をしばしば見かけるのも事実である。
しかし、たまたま摘発されていないだけで違法であることに変わりはなく、今後は当局による監視・取り締まり、プラットフォームによる自主規制により厳しくなっていくため、薬機法に触れるような広告は今後出稿できなくなっていくだろう。
これまで摘発されずに済んできただけで、今後は法人・個人を問わず、違法な広告の摘発が増えていくだろうし、違法な表現のある広告の出稿自体がどんどん難しくなっていく!健康食品の広告に携わる方には、「これまでは違法な広告表現が見逃されていたとしても、今後は許されない」ことをしっかりと認識してほしい。
次回は化粧品の広告表現について注意すべき点を、OK表現・NG表現を交えてご紹介する。