顧客体験を向上させるために必要な考え方を知る。OMOの概念を念頭においたツール活用を

名古屋 和也

顧客体験を向上させるために必要な考え方を知る。OMOの概念を念頭においたツール活用を

こんにちは!Webマーケティングツールや店舗集客ツールなどを提供しているSO Technologies株式会社にて、店舗事業者向けの集客支援領域を統括している名古屋 和也です。

前回は「アフターコロナに向けて今、小売業は何をすべき?」と題し、いま小売事業者が直面している状況や課題、消費者のマインドの変化などを取り上げました。筆者は、コロナ禍を機にEC運営が急務となった小売事業者にとって、いまこそ店舗とECをうまく連携させていく体制づくりをすべきと考えています。しかし、両立させていくには知見や人材不足などさまざまな課題があります。
第2回となる今回は、こうした課題を解決につながる考え方や手法についてご紹介します。

▼他、連載記事はこちら
第1回:アフターコロナに向けて今、小売業は何をすべき? 最大の課題は「実店舗とECの両立」
https://ecnomikata.com/column/33582/

第3回(前編):店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(前編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう
https://ecnomikata.com/column/34415/

第3回(後編):店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(後編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう
https://ecnomikata.com/column/34436/

第1回の振り返り

第1回で解説した内容をまとめると、以下のようになります。

・コロナ禍で消費者がECを利用する機会が飛躍的に増え、またEC事業に参入する小売事業者も増加した。
・ネット上での情報検索が当たり前となった状況下では、今後感染状況が落ち着いたとしても安易にECをやめる決断はしづらい。小売事業者は実店舗とECを両立させ、実店舗の顧客をECの顧客にすることが重要。
・しかし、実店舗とECを両立するためにはやるべきことがあまりに多く、小売事業者の課題となっている。

実店舗とECを両立させるためにはどうすればよいのか、分からない小売事業者の方も多いはずです。それもそのはずで、これまで実店舗の経営を主にしてきた小売事業者の方は商品や接客・販売のプロであって、=EC運営のプロというわけではありません。

今回はECデビューして間もない小売事業者の方に向けて、実店舗とECを連携させる考え方と、簡単にスキマ時間でもコツコツ進められるツールをご紹介します。

オンラインとオフライン、どちらでも接客はできる。OMOとは?

「OMO」という考え方についてご紹介します。“Online Merges with Offline”の略で、日本語では「オンラインとオフラインの融合」を意味します。オンライン・オフラインの境界をなくし、顧客にも意識させることなく利用してもらうことで、最適なサービスを提供することを指します。OMOに取り組むことで、顧客体験の向上につながると考えられています。第1回でお伝えした「リピーター化」を進めるためにも重要な考え方です。

OMOの成功事例


OMOを成功させている例をいくつかご紹介しましょう。わかりやすい例として、今や多くの飲食店が導入しているモバイルサービスが挙げられます。スターバックスが全国にデリバリーサービスを展開するという発表も記憶に新しいのではないでしょうか。*

こうしたモバイルサービスは、顧客がスマートフォンひとつで食事を注文でき、店舗からデリバリーされた食品を受け取れるため、場所を選ばすに飲食を楽しむことができます。顧客は実店舗で買う、オンラインで買うという区別を意識することなく購買できますし、事業者側は販売の機会を増やすことで売り上げの向上を見込めます。

小売業としては、日本国内のメガネ販売チェーン・ZoffがLINE公式アカウントを活用して、店舗とオンラインストアで顧客のID連携を行った例があります。顧客のレンズの度数・購入したメガネの種類や保証書などをデータで一元管理できるようになり、顧客は実店舗でもECでもメガネ選びから購入までを格段にスムーズに行えるようになりました。*

また、京都・宇治のお茶屋である伊藤久右衛門では飲食・物販で実店舗を展開しており、6店舗と少数規模ながらECとの連携に注力されています。Googleマップ上では実店舗ならではのメニューもご案内しており、マップ上からアクセスできる店舗の公式サイトでは通販情報も発信している各種SNSを紹介、SNSではECへの流入を促すなど、店舗・ECともに楽しんでいただけるシームレスな環境を作っています。*

このように、OMOをマーケティング施策に反映させた結果、顧客体験の価値向上につながっています。コロナ禍で消費者の店内滞在時間も短くなっている中で、スムーズにサービスを提供するだけでなく、店舗側での顧客情報の管理コストの削減といった業務効率化にもなり、販売キャンペーンや商品企画、経営戦略の立案、そして接客などのよりコアな業務に集中できるというメリットもあります。

SO Technologies調査リリースより引用*
コロナ禍での来店ユーザーの変化として、「滞在時間の減少」を感じている店舗事業者は「来店人数の減少」に続いて2番目に多く、約3割が回答している。

OMOの考え方をもとにツールの活用を推奨


OMOの効率的な実行をサポートするツールは多く存在します。本来、OMOを実現するには「顧客」を中心にデータを一元管理できる環境整備をする必要があり、人材や技術、そして予算も必要になるため、そう簡単に実行に移せる取り組みとは言えません。

しかし、あくまで小売事業者の目的は、顧客体験を向上して適切に商品を提供することです。その手法を検討する際に、オンラインとオフラインの境界線をなくすという考え方を念頭におくことが重要なのだと筆者は考えます。すべてを一度に進めることは難しいので、自社にとって優先度の高い課題の解決を目指せるツールを活用していくことを推奨します。

集客・リピート・環境整備の推奨ツールまとめ

実店舗とECの連携を進めていきたいけれど知見や人手も足りていないといった状況でも、小売事業者が活用できるツールは数多くあります。ただ、どんな課題を解決できるのか、どんな事業者に向いているのか分からないなどの声も多いものです。加えて、ツールを検討する際には利用料金も気になるところです。

そこで、無料のものを含めた集客・リピートに活用できるツール、そしてインフラ面でも予算に合わせて導入検討を推奨したいツールをピックアップし、表にまとめました。ツールには多様な活用方法がありますが、今回はいますぐに対応できるものや、手軽に活用を検討できるもの、優先度の高いものが中心です。これらを参考に、自社課題と合わせて検討してみてください。

まとめ

インターネットやスマートフォンが普及したいま、実店舗とEC運営を両立していくためには、OMOの考え方を取り入れていくことが重要です。そして、課題に応じたツールを導入し、効率的に運用できる体制をつくっていきましょう。しかし、これまで実店舗運営が中心でECは始めたばかりであるといった小売事業者の場合、活用イメージがわきづらいかもしれません。

第3回以降にて、実店舗を有効活用し、ECと連携させていくための具体的な活用方法をご紹介します。


著者

名古屋 和也

1991年生まれ。東京都浅草出身。2014年ソウルドアウト株式会社に入社。広告クリエイティブの制作部門、広告運用オペレーション部門、広告代理営業部門を経験。2019年に株式会社テクロコ(現SO Technologies株式会社)に異動し、店舗集客支援サービス「ライクル」のプロダクトマネージャーとして従事。2020年1月よりサービス開発部 部長を経て、2021年1月より現職。