アフターコロナに向けて今、小売業は何をすべき? 最大の課題は「実店舗とECの両立」

名古屋 和也

こんにちは!Webマーケティングツールや店舗集客ツールなどを提供するSO Technologies株式会社(以下、SOT)にて、店舗事業者向けの集客支援領域を統括している名古屋 和也と申します。

私たちがこれまで地方や中小企業のデジタルマーケティング支援を行ってきた中で、小売業界のコロナ禍での変化を目の当たりにし、ご相談いただく機会も多々いただきました。

今回のコラムでは、コロナ禍における小売業が直面するECに関する課題にフォーカスし、その解決法をご紹介してまいります。第1回の今回は、「コロナ禍におけるECの課題と問題提起」です。

▼他、連載記事はこちら
第2回:顧客体験を向上させるために必要な考え方を知る。OMOの概念を念頭においたツール活用を
https://ecnomikata.com/column/33940

第3回(前編):店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(前編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう
https://ecnomikata.com/column/34415/

第3回(後編):店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(後編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう
https://ecnomikata.com/column/34436/

コロナ禍におけるECの現状

2022年に入った現在においても、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続いています。コロナ禍で様々な領域でデジタル化が進みましたが、小売業での大きな変化としてはユーザーの購買行動のデジタル化と、それに伴うEC需要の増加が挙げられます。

経済産業省がまとめた「令和2年度 電子商取引に関する市場調査*」によると、2020年のEC市場規模は19.3兆円にのぼります。その内訳を見ると、外出自粛により物販系分野、例えば家電・アパレル・化粧品といった分野のECでの売り上げが増加しています。

また、近年のECを取り巻くトピックとして、ネットショップ開設が容易になったことが挙げられます。以前はECサイトを開設するためにはサーバーのレンタル、ECサイト・決済システムの構築などを行う必要がありました。これは、中小企業の小売業にとっては大きな負担です。

しかし今では、「BASE」や「STORES」など簡単にECサイトを開設できるサービスが普及しており、利用者も増えています。実際、BASEでは2020年5月からの1年間で50万ショップが新規出店されています。*

BASE株式会社 プレスリリース*より引用
2022年2月時点ではショップ開設数が170万を突破している。

コロナ禍でEC展開をした小売業がいま抱える課題

業種によってEC需要が増加したのは前述の通りで、実際にコロナ禍をきっかけにECサイトを開設した、あるいは強化した企業も多くいらっしゃると思います。それでは、小売業とECにおける現状の課題はどのようなものでしょうか。

ユーザーと実店舗運営の変化について


新たな販路の拡大や店舗運営の効率化などの観点から、コロナ禍前より実店舗からECへというトレンドはありましたが、コロナ禍でその流れが大幅に加速したという印象があります。

その背景には、ユーザーが何気なく「〇〇の在庫があるか」などと、購入したい商品についてインターネット上で調べることがいまや当たり前になっていることがあります。

これはGoogleも取り上げており*、コロナ禍で、Google検索では「地元の」+「ビジネス」、「誰が(どのお店で)」+「在庫状況」の検索がそれぞれ2019年-2020年対比で80%、8000%と大幅に増えています。
さらに店舗で買い物を行う前に、来店先や購入品を決めてから購入するという行動が、コロナ禍以前と比較して69%増加しているそうです。
これらの事実から消費者の行動は、コロナ禍前に比較して、実店舗や商品について入念に検索するようになるなど、大きく変化していることがわかります。

コロナ禍で半ば強制的にネット通販を利用した結果、もともとネット通販に抵抗感のあったユーザーにおいても、ネット通販利用への抵抗がなくなるといった消費者のマインドが変化してきている、というお話も耳にしています。

公益財団法人 流通経済研究所コラム*より引用
コロナ禍でネットスーパーの高齢者利用が増加している。

実店舗とECの両立を模索


コロナ禍でECが順調だからといって、実店舗からECに完全に切り替えるという戦略ではなく、多くはこの2つの両立を模索されています。感染状況も数ヵ月で大きく変わってしまう状況下で、どちらかをやめるという選択はなかなかできるものではありません。
特に、店舗の営業自粛期間に勉強しながらECを開設したような企業では、限られた人員でどのように実店舗・EC両方の運営を続けていくかは目下の課題です。

ECと実店舗を両立するためにはリピーター化が重要

それでは、いまもなお続くコロナ禍、そしてアフターコロナに向けて小売業はどのようにEC運営に向き合っていけばよいのでしょうか。

ポイントは「実店舗で獲得している顧客をECでも顧客にできるか」です。これまでは、店舗とECを別軸で切り分けて考えている企業が大多数でした。特に地域に根付いている店舗などでは顕著です。しかし、筆者は実店舗とECをより強固に連携し、効率的に両者を運営することで事業の基盤が安定すると考えています。

そして、この課題にいま取り組むことはとても重要です。なぜなら、新型コロナウイルスの感染が下火になり、実店舗にお客様が戻ってくると店舗運営に忙殺されてしまい、ECが手薄になってしまう可能性があるからです。だからこそいまこの課題を克服し、アフターコロナを迎えるべきだと考えます。

さらに、実店舗とECの連携に関する課題の背景には以下のようなものが挙げられます。
・ITスキル不足などを背景に、ECに不慣れであり運営に手間取ってしまう。
・人員不足や知見が足りず、実店舗とECのバランスがうまく取れない。
・ECに関する悩みを相談する相手がいない。

これ以外にも、小売業者が抱えているECに関連した悩みはあります。
まず、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールを利用している企業は、費用面での負担が大きいことや、ECモール内での競合との差別化といった課題を抱えています。また、近年小売業に必須のSNS(Twitter、Instagramなど)の更新や、コンテンツ内容、投稿頻度なども考えなければなりません。このように、Webでのアプローチが当たり前になっている小売業は常にやることがあります。しかし同時に、そのために新たに人を雇えないという課題を抱えています。

まとめ

コロナ禍とその先を見据え、小売業者は実店舗とECを効率的に連携させ、運営していくことが重要です。しかし、それにはさまざまな課題がついて回ります。解決するためにはどうすればよいのか、何から手を付ければ良いのか。

第2回以降は、この課題の解決法についてお伝えします。


著者

名古屋 和也

1991年生まれ。東京都浅草出身。2014年ソウルドアウト株式会社に入社。広告クリエイティブの制作部門、広告運用オペレーション部門、広告代理営業部門を経験。2019年に株式会社テクロコ(現SO Technologies株式会社)に異動し、店舗集客支援サービス「ライクル」のプロダクトマネージャーとして従事。2020年1月よりサービス開発部 部長を経て、2021年1月より現職。