店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(前編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう

名古屋 和也

店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(前編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう

こんにちは!Webマーケティングツールや店舗集客ツールなどを提供しているSO Technologies株式会社(以下、SOT)にて、店舗事業者向けの集客支援領域を統括している名古屋 和也です。

本コラムでは、小売事業者が直面するEC関連の課題とその解決法についてご紹介しています。前回は、「店舗とECの両立」を目指すために必要なのは店舗体験の向上であること、そして、小売店が直面している課題を解消する方法として、OMOの概念を念頭においたツール活用について解説しました。

今回は「店舗に来店したお客様をECのお客様としてリピーターしてもらうために、小売店ができる具体施策」について、お客様に実店舗とECの両方を利用していただくための具体的な施策を前後編にわけてご説明します。


▼他、連載記事はこちら
第1回:アフターコロナに向けて今、小売業は何をすべき? 最大の課題は「実店舗とECの両立」
https://ecnomikata.com/column/33582/

第2回:顧客体験を向上させるために必要な考え方を知る。OMOの概念を念頭においたツール活用を
https://ecnomikata.com/column/33940

第3回(後編):店舗に来店したお客様をECへ誘導するために小売店ができる具体施策とは(後編)まずは実店舗を活用!店舗集客を強化しよう
https://ecnomikata.com/column/34436/

第2回の振り返り

第2回で解説した内容を振り返ると、以下のようになります。
・ 店舗とECの両方でお客様に質のよいサービスを提供するために「OMO(Online Merges with Offline)」の概念をおさえることを推奨。
・ 店舗運営にOMOの考え方を取り入れるために、課題や店舗のフェーズに応じたツールの導入を検討すると良い。
・ ツールを活用することは、実店舗への集客だけでなくさらにECへと誘導するためにも有効です。また、すぐに無料や低コストで始められる施策も存在する。

店舗とECの両方を利用してもらうために、今すぐできること

まずは実店舗を有効活用しましょう。店舗にお客様が来店したくなる施策、来店しやすくなる施策を通じて、店舗集客を強化します。

次に、上記の施策によって来店したお客様やすでに店舗を利用したことのあるお客様に対して、ECでショッピングができることをアピールします。これにより、店舗のお客様をECへ誘導し、店舗とECの両方を利用していただける環境をつくります。

まずは、店舗集客のための施策から紹介します。

【1】店舗集客のための施策

店舗集客を強化するためには、顧客接点を増やすことが重要です。お客様が店舗や商品を目にする機会を増やせるかつ、比較的低コストで実施できる施策として2つご紹介します。ここ数年で急激に存在感を増しているGoogleマップ上の店舗情報(Googleビジネスプロフィール)、そして小売業には欠かせないSNSです。

■Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)


無料で利用できるGoogleビジネスプロフィール(旧称:Googleマイビジネス)は、Google検索やGoogle マップを始めとするGoogle のサービスに表示されるお店の情報を管理できるツールです。店舗名や「地名+業種」などのキーワードでGoogle検索した際、ファーストビューに店舗名や住所、営業時間などが表示されます。
お客様を店舗に誘導するための最も重要な施策として、Googleビジネスプロフィールは欠かせません。

第1回でもお伝えしたように、コロナ禍を機に、事前にインターネットで店舗情報や商品情報を調べる消費者はさらに増えました。現在のGoogleマップは、行くお店を決めたあとのルート検索だけではなく、実際に「行くお店を悩んでいる」段階のお客様に情報を届けることにも非常に有効です。

マップ上での上位表示は検索キーワードとの「関連性」「距離」「知名度」の3要素に基づいて決定されていると言われています。自店舗の強みとなるキーワードで検索した際に上位に表示されるように、店舗情報を充実させていく取り組みが必要になっていきます。

もし、現在自店舗のGoogleビジネスプロフィールの「オーナー認証」を行っていない小売事業者の方がいれば、ぜひ早急に取得されることを推奨します。営業時間などの店舗情報は、お客様が悪気なく書き換えてしまう場合や、Googleがサイト情報を回遊して自動書き換えを行ってしまう場合もよく発生します。

まず、全店舗の情報を整備し、お客様に正しい情報を提供することを心がけるだけで、集客に影響する間接的な数値(Webサイトへのアクセス数やルート検索、電話回数など)が増加する場合もあります。また、クチコミによる写真だけでなく、店舗提供の写真を充実させると、さらに来店イメージがわきやすくなるため活用していきましょう。

例えばSNSで商品が話題になりメディア等で取り上げられたとしても、いざ検索した時にGoogleマップで情報が出てこないとなると明らかな機会損失です。そういったことのないように、しっかりと設定しましょう。

Googleビジネスプロフィールの検索結果例。上位に表示されると場所や営業時間、評価が一目でわかり、来店候補に入りやすい。

■SNS


最近では、Twitter、Instagram、FacebookなどさまざまなSNSを使っていない方がめずらしくなっています。顧客と店舗との初めての接点がSNSになることも多く、SNSを通じて商品や店舗を知る機会も増えました。そのため小売事業者でも、SNS映えする店舗づくり、商品設計、拡散されることを念頭においた情報発信も重要になっていると考えられます。

SNSの開設は無料ででき、情報発信内容も自由自在です。どんな消費者に届けたいか、その消費者が普段情報収集に利用しているのは何なのかなど、ターゲットを定めて運用を始めましょう。自店舗と競合する同業種のSNSを運用の参考にすることもおすすめです。

商品や店舗の情報が拡散される手段として欠かせない存在になったSNS。小売事業者での成功事例としては、愛知県岡崎市にあるダイワスーパーがあります。街の八百屋さんのような庶民的なスーパーで、現在はカフェやテイクアウト専門店なども展開しています。目玉商品は「八百屋の作る本気のフルーツサンド」で、Instagramでは色とりどりのフルーツサンドがずらりと並ぶ店内や、みずみずしい果物、販売情報などが掲載されています。

ダイワスーパーのフォロワー数は現在6.9万人。SNSを見て来店したお客様のクチコミや拡散を通じてファンを増やし、同地域のみならず日本中に知名度を広げています。

ダイワスーパーはSNSを経由して全国に知名度を広げ、通販があると瞬時に完売されるほどとなっている。

また、例に挙げたInstagramを見ると「SNSで拡散しやすい商品設計」が大切であると気付いた方も多いのではないでしょうか。実際に、商品すべてがSNS映えを前提に作られるわけではありませんが、Glossom株式会社が2021年に行った調査*では、特に若年層は商品の認知に関する情報源として、SNSが圧倒的に高いという結果があります。

このように、今後実店舗とECを両立して売上拡大を目指していくために、集客・マーケティングという側面でも、顧客体験の向上という側面でも、GoogleビジネスプロフィールとSNSは必要不可欠な施策といえます。

■その他状況に応じた集客ツール


業種によっては、オンラインチラシの活用も有効です。「トクバイ」「Shufoo!」に代表されるオンラインチラシは、特に特売情報と相性の良いスーパーや薬局等と非常に相性の良いツールであるといえます。

オンラインチラシの活用例としてはユニクロがあります。アプリ内ではスタイリッシュなイメージを訴求する一方で、オンラインチラシでは紙のチラシのようなレイアウトであえてお得感や掘り出し物感をアピールするといった、媒体によって異なる角度から商品の魅力を見せる施策を行っています。

そして、近年小売事業者でも自社アプリによってお客様へ情報発信を行う例が見られるようになりました。自社アプリは開発コストがかさむことがネックでしたが、近年は「Yappli(ヤプリ)」「GMOおみせアプリ」など自社アプリを開発・運用できるサービスが提供されており、小規模な事業者でもトライしやすい環境が整いつつあります。

まとめ

今回は、実店舗の強化に有効で、かつ比較的低コストでできる施策をご紹介しました。後編では、実店舗へ来店いただいたお客様にECをご案内し、ECでのリピートを図っていくための施策をご紹介しています。

地域によってはまん延防止等重点措置(まん防)も解除され、実店舗に活気が戻ってきている店舗もあります。ここでECサイトの運用が手薄にならないよう、今後もシームレスに購入いただける環境整備を進めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。


著者

名古屋 和也

1991年生まれ。東京都浅草出身。2014年ソウルドアウト株式会社に入社。広告クリエイティブの制作部門、広告運用オペレーション部門、広告代理営業部門を経験。2019年に株式会社テクロコ(現SO Technologies株式会社)に異動し、店舗集客支援サービス「ライクル」のプロダクトマネージャーとして従事。2020年1月よりサービス開発部 部長を経て、2021年1月より現職。