加速するDXの中で変化するエンタメECの特徴

岩本 夏鈴

今回はコロナ禍によって急速にDXが加速するエンターテインメント領域におけるECの特徴とこれからのエンターテインメントECについて解説いたします。
在宅時間の増加に伴って動画や音楽配信サービス、ECの利用は急拡大しました。オフラインのライブ市場はオンラインライブ配信がスタンダードなサービスの一つとなり、オフラインとオンラインの融合は進んでいきます。動画配信サービスによってアニメなどのエンターテインメントコンテンツは世界中で同時消費されるようになり関連商品の販路は大きく拡大しています。変化するエンターテインメント領域におけるECの特徴と今後、戦略などについて説明します。

加速するエンターテインメント領域のオンライン化

加速するエンターテインメント領域のオンライン化※1 出典:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd236600.html

世界の動画配信・音楽配信・電子書籍市場は、サブスクリプションサービスの普及や新型コロナウイルス流行による在宅時間の増加などを受けて、2021年には合計で14兆1452億円(前年比21.7%増)(※1)となっており、世界の動画配信市場、音楽配信市場、電子書籍市場はいずれも成長を続けています。

また日本のライブ市場はコロナウイルス流行により大きな打撃を受けていましたが、2023年にはコロナ禍前の水準に回復すると見込まれており(※2)、オンラインライブの定着とともにオフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド式のライブ形態が当たり前になりつつあります。2021年の有料オンラインライブの国内市場規模は推計512億円と推計されており、前年比14.4%増となることが見込まれています(※3)。

エンターテインメントコンテンツのオンライン化が進んだことを背景に、SNSやサブスクリプション、動画配信サービスを通じて海外ファンの間で人気に火が付きやすくなっています。BEENOSグループが提供するエンタメ特化型ECサイト構築サービス「Groobee」でEC構築・運用支援をしている中には、TikTokをきっかけに再ブームとなった音楽アーティストやSNSや動画配信サービスを通じて海外ファンを獲得したタレントやIPなどが越境ECに挑戦しています。

このようにエンターテインメント分野におけるDXの流れは急速に進んでおり、その流れはECにも波及しています。

2021年の世界のBtoC-EC市場規模は4.92兆USドル、EC化率は19.6%と推計されています。在宅時間の増加によって増大したEC利用の需要はアフターコロナにおいても継続すると考えられておりEC化率の上昇が予想され、2025年には7.39兆USドル、EC化率は24.5%にまで上昇すると見られています。世界的なECの需要は拡大を続けていきます(※4)。

【参考文献】
※2:ぴあ総研「2021年ライブ・エンタテインメント市場規模の回復は道半ば ~2023年にコロナ禍前の水準に復活という見込みは変わらず~ / ぴあ総研が確定値を公表」
https://corporate.pia.jp/news/detail_live_enta20220615.html
※3:ぴあ総研「2021年のオンラインライブ市場は前年比14.4%増の512億円に成長 / ぴあ総研が調査結果を公表」
https://corporate.pia.jp/news/detail_live_enta20220615_3.html

※4 出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(101p)」
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf

オンラインエンタメ市場の拡大によって増す、エンタメECの重要性

オンラインエンタメ市場の拡大によって増す、エンタメECの重要性

エンタメジャンルは一般のECと比べてファンクラブやチケット販売など関係するレイヤーが多く、チケット販売サイトやファンクラブ、公式SNSなど、ファンとのタッチポイントが多数存在します。オンラインライブなどの配信の普及によって新たなコンテンツの楽しみ方が広がりましたが、ライブ会場でのグッズ購入といったオフラインでの体験は失われてしまいます。そうした機会の損失をエンタメECによって補っていく必要があるでしょう。

また、エンタメECでは購入体験自体を楽しいと感じてもらえる工夫が必要です。これまではイベント時に販売されるTシャツやペンライトなどのグッズはイベント会場で使用する「体験」が主目的でした。オンラインライブに移行した時にはそれらのグッズを購入してイベント会場へ来ていくことなどはできなくなります。イベントグッズを購入する動機が揺らいでしまう、こうした課題に対しては自宅で利用・鑑賞が可能な形態のグッズを導入するなどの対策も可能ですが、根本的にはECでの購入そのものを楽しいと思ってもらえる仕組みが必要なのです。

例えばBEENOSグループではエンターテインメントに特化したECサイト制作サービス「Groobee」の機能の一つとしてECサイト上にシームレスにオンラインガチャを導入することができる「エンタメガチャ機能」を提供しています。動画演出などを導入し、景品が当たるワクワク感をオンライン上で再現することで購入者の購入体験を盛り上げています。

ファンの熱を高めるMD強化

ファンの熱を高めるMD強化

ライブ等におけるオフラインイベント時の入場チケットのオンライン化や会場物販の事前・事後通販などDXは浸透しつつあります。商品の売り上げがコンテンツの人気や流行に左右されるエンターテインメント商品の販売においてのオフライン・オンライン共通の課題は在庫を抱えるリスクや売り切れ問題です。

商品の種類によっては製造に時間を有するものもあり、即時に在庫の追加をすることが難しいといった事態が発生することがあります。ECで確実に売り上げを作っていくためにはMD強化は必須事項と言えます。
 
エンターテインメントジャンルにおいてファンはコンテンツに関連する商品購入には非常に積極的です。商品の需要は高く、そうしたニーズを逃さずに商品を常に用意しておく必要があります。
 
新しい商品を仮に月に1回用意しておくことが出来ればお客様は定期的にECを閲覧することが楽しみになり、習慣化してもらうことができます。ファンとしての熱を新しい商品を展開していくことで盛り上げていくことができるのです。

人気コンテンツやアーティストのECでは販売開始直後に商品がすべて売り切れ、お客様が購入できるものが何もない…といった事態も良く見られますが、こうした販売機会の損失は避けたいものです。

こうした課題解決の一例としてGroobeeでは「オンデマンドグッズ製造サービス」を提供しています。本サービスではユーザーはTシャツやマグカップなど数百種類のベース中から好きなアイテムを選択し、ECオーナーが用意したスタンプを自在に動かしてベースアイテムに配置することで、お好きなデザインのグッズ製造ができます。オンデマンドグッズ製造サービスは 即日製造が可能で、製作・注文から最短で翌日に出荷でき、在庫リスク・欠品リスク0で販売が可能です。さらにユーザーはオリジナルデザインのグッズを製作できる体験型のECを楽しむことができます。

オンラインで活発化するファン活動

オンラインで活発化するファン活動

近年のファンの推し活はオンライン、特にSNS上での活動が活発化しています。ファンのコミュニティとECの導線をつなげていく戦略は有効です。SNS運用においても単純な商品の紹介や宣伝に留まらず、IPやアーティストなどに関連した情報や思わずファンが反応したくなるようなメッセージの投稿を行うなど、コンテンツとファンを大切にする姿勢が大切です。

ファンコミュニティ内には常に潜在的な需要が隠れています。物販への長蛇の列や売り切れへの不満、ランダム商品のファン同士のトレードの呼びかけ、ファンアートやファングッズ写真の掲示など…。コロナ禍以前はイベント会場を中心に発生していたファン活動の場はオンラインに移行しています。こうしたファンコミュニティ内の意見や動向が商品展開の方法の改善や新たなサービス・機能の開発などにつながっていきます。

これまでオフラインのイベントや物販会場で行われていたファン活動が制限されたことによってECにも体験やエンターテインメント性が求められるようになっており、お客様同士のコミュニケーションを促進できる機能が重要になっています。

加速するDXの中でECのタッチポイントを増やし利用機会を増進させる

エンターテインメントジャンルはファンコミュニティがオンライン上に存在するため、どんなジャンルでも突然火がついてブームになる可能性を秘めています。インターネットを通じて世界中の人が顧客になりうる現在ではECの構築の際にあらかじめ海外対応しておくことが望ましいと言えます。オフラインイベントの開催も徐々に再開されていますが、会場でのグッズ販売においては事前・事後通販などECを組み合わせて商品購入の機会を増やしていくことで売り上げを最大化していくことも重要です。

事前・事後通販などのECの利用機会を増加させることは物販会場での長蛇の列を解消し、現地でのコストを削減してお客様に商品をお届けすることを可能にします。また、こうしたオフラインイベントの会場でしかできなかったファン活動などをオンラインで体験できる仕組み作りも大切です。

エンターテインメント業界はチケット・ファンクラブ・ライブ配信・ECなど、多数の関係レイヤーが存在するためそれらと連携を図ることでお客様のタッチポイントを増やすことができます。MDの強化やイベントなどに対応したEC機能の充実により、ユーザーエクスペリエンスを強化することが流通の拡大につながります。
 
オンライン化およびオフラインとオンラインの融合によってECの利用機会は今後も伸びていきます。ボーダレス化するエンターテインメント領域のECは世界水準での対応が求められていきます。世界に求められるエンターテインメントコンテンツを武器に世界に挑戦してみませんか。


著者

岩本 夏鈴

大学卒業後、ITベンチャーに入社。入社直後は新規事業であったソーシャルモニタリングサービスにて営業開拓・広報・研修メニュー開発などを担当。その後法人向けSNSリスクモニタリングやソーシャルアプリ向けカスタマーサポートの多言語運用の立ち上げ、フィリピン拠点立ち上げなどを経験。海外法人向けサービス提供のため、サンフランシスコに単身駐在後、フィリピンにて海外セールス・マーケティングチームを立ち上げマネジメントなどを務める。その後ヘルスケアテクノロジーベンチャーにて法人サービス立ち上げなどに関わり、2019年より現職。BeeCruiseでは日本法人向け海外進出サービス事業の企画・国内セールス/海外セールスなどの統括を行い、年間約100案件のマーケティングやプロモーションなどの戦略策定や提案・支援を行っている。

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