ユーザー視点で考える 自社データを活用したLINE配信のメリット【「EC事業者のLINE活用、エンドユーザー(生活者)はどう捉えるのか」vol.6】

岡田 風早

我々はLINE公式アカウントのパートナーをやっているので事業会社からLINEと別のプラットフォームの比較について聞かれる機会がよくあります。いつもは立場があるんですが、前回同様に今日も仕事のことを忘れて、よく買い物をする1ユーザー視点だと実際にどう思っているのかを書こうと思います。

今回は企業が積極的に推進している自社で保有する顧客データを活用したLINE配信のメリットをユーザー視点でまとめてみました。普段は企業視点で話すことが多いテーマですが、改めて企業のメリットだけでなくユーザーにとってどんな恩恵があるのかを書いていきます。

●過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回/第4回/第5回

結論はメリットしかない

企業がどんな顧客データを持っているかによって効果の振り幅はありますが、自社のデータを活用したLINE配信は自社データを活用しない配信と比較するとユーザーにとってメリットしかありません。

ほとんどのケースにおいて、全ての友だちに同じコンテンツを配信をするのと特定のユーザー群に対してそのユーザー群の好みにあったコンテンツを配信するのでは、通数課金も少なくなり費用対効果も上がるでしょう。効果が上がる分、後者は手間がかかります。

オフラインに置き換えるとイメージしやすいですが、店員の立場でその人の好みを既に知ってるお客様の方が接客をしやすいですよね。オンラインでも同じで、自社で保有するユーザーに関するデータ、好みや行動データなどがあればあるほど、その人にあったメッセージを送ることが可能になります。

ただし、企業に自分が知られすぎていて気持ち悪いと思われてしまうケースもあるので、能動的にデータをもらうアンケートなどはいいですが、閲覧履歴や検索履歴などのサイト内の行動データを使う場合は距離感や見せ方が重要になります。

ユーザー視点の具体的なメリット

ユーザー視点のメリットは端的に言えば「自分の好みにあったコンテンツや商品紹介」が届くということですね。買い物は自分で探す・選ぶ楽しさはあるものの、信頼できるブランド・人からお勧めされた商品は気になってしまうものです。これだけ商品や情報があふれた世の中で、ある程度情報を絞って提供してもらえることはありがたい事です。

極端な例を出すと、自分の好みにあったコンテンツや商品紹介が、自分が見やすいタイミング、かつ自分に最適な頻度でメッセージが届けば自然とメッセージを開封する回数が増え、サイトへ訪問する頻度も高まるでしょう。

特に「自分の好みにあったコンテンツや商品紹介」が一番重要な点になります。結局ここが企業として売りたい物に偏ってしまうと限りなく広告に近いコンテンツになってしまいます。もちろんそういうコンテンツが絶対にダメという話ではありません。

これも実際の店舗に置き換えるとわかりやすいと思います。私はお店へ行ったら出来る限り店員には話しかけられたくない派です。理由は自分の好みよりも売りたそうな商品をレコメンドされる機会が多かったからです。もちろん全てが全てそういうわけではありません。

配信タイミングは話しかけられるタイミング、配信頻度は話しかけられる回数に置き換えられます。

一番重要な「ユーザーの好み」の精度を上げるためにはオンライン上の行動データやアンケート回答データなど属性を分けるためのデータが必須になり、データを活用することでユーザーにとってより良いメッセージ・コンテンツを届けることができるようになります。

企業視点で考慮すべきことと課題

個人的には自分の好みにあったメッセージが届くのであれば、閲覧履歴や検索履歴がどう使われようが全く気にならないですが、それはインターネットや広告などの仕組みを知っているからであって、閲覧履歴や位置情報などからレコメンドされることを警戒する人も一定数居るという事実は否めません。むしろそちらの方が多いと思います。

プライバシーポリシーや個人情報の取り扱いにどんな情報を何に使うか明記するのはもちろんですが、活用するデータの範囲は最初は控えめにして少しずつ広げていき、メールやLINEの開封率やサイトの離脱率など可能な範囲でデータをチェックして、マイナス傾向になっていないか確認するのが良いと思います。

ユーザーのデータを扱うこと・規約への同意を得るためにも会員登録はしてもらう必要があるので如何にして会員登録のハードルを下げるか、またLINEで配信をするのであればスムーズにID連携をしてもらえるかも大切です。

また、一番の課題はこういったデータを使った施策を実現することのハードルが高い点だと思います。近年ツールやアプリ、ECプラットフォームの進化で実現しやすい環境の選択肢が生まれたと思うので、未来の一手を打ちやすい拡張性のある環境を選ぶことが事業の成長にとって重要になってくるでしょう。

まとめ

どんな施策でもユーザーにとってその施策が有益なのかは忘れてはいけない視点だと思います。短期的な企業の利益を目的とした施策は売上が上がった下がっただけではなく、ブランドとしてユーザーに失望されていないかなど数値では測りにくい部分も考慮した方が良いでしょう。

また、利便性とセキュリティはトレードオフの関係なので、今よりもユーザーにとって便利になる施策を検討する場合はセキュリティ面の考慮も必要です。利便性とセキュリティのバランスはとても難しいです。

企業とユーザーそれぞれにメリットがあり、利便性とセキュリティのバランスを保つ、そういった中長期的に効いてくる施策をどれだけ実施できるかがユーザーへ寄り添う企業としての見極めポイントであり、長く愛されるブランドになるための王道になるかと思います。


著者

岡田 風早 (Kazahaya Okada)

ソーシャルPLUSのカスタマーサクセスとして2015年にフィードフォースに入社し、プロダクトマネージャーを経て執行役員に。2021年9月にソーシャルPLUSが分社化して現在の役職に至る。
LINEヤフー社のTechnology PartnerとしてLINEログインやミニアプリなどのAPI活用、Sales PartnerとしてLINEのCRM活用、またShopify Partnerとしてエンタープライズ向けのShopify × LINEやShopify Flow・メタフィールドの活用、データ設計を得意とする。

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