需要予測 - 消費者データの活用手法と領域
山崎徳之のコラムはこちら
コラム#1:ECの役割 ー パーソナライズドな商品目利きの実現
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6293/
コラム#2:パーソナライズな目利きを実現するための各種のアプローチ
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6386/
コラム#3:需要予測 - 消費者に情報提供の協力を促す2つのパターン
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6433/
今回は前回につづいて、消費者の需要を予測する方法について、「提供された情報を最大限活用するケース」について考えてみます。これはビッグデータのアプローチやオムニチャネルのアプローチに近いので、前回のパターンより最近のトレンドに近いのではないかと思います。
分析データにおけるプライオリティ
まずは前提の提供される情報について考えてみます。少しでも正確に消費者の行動を予測するのであれば、どういった情報が活用できるでしょうか。極力有用な順番にあげてみます。
まずはなんといっても購買履歴です。とりあえずこれはもっとも信ぴょう性の高い情報の一つです。もちろん買って失敗したと思っているケースもありえますが、概ね一番活用すべき情報です。
ウォルマートにおける実績によると、ECにおいては購買履歴を使わずに1000のオーディエンスデータを使った場合の予測の正解率は70%だが、購買履歴と10のオーディエンスデータを使った場合の正解率は90%だったそうです。正解率自体を何で計測しているか(最終コンバージョンなのかクリックなのか)はわからないですが、これを見るだけでもやはり購買履歴が重要であることがわかります。
次に重要なものは、購買履歴に次ぐ情報といえるカゴ落ちやウィッシュリスト情報ではないでしょうか。最後のコンバージョンまでは踏み切っていないというのは、逆に伸びしろが高いとすら言えるかもしれません。
また同じくらい重要な情報としては、ECのサイト内検索クエリが挙げられます。サイト内検索のクエリは、「自分が欲しいと思っている商品を出すための労力」なのでカゴ落ちと同じかそれ以上に重要な情報であるといえます。それ以外にも、もちろん閲覧履歴、登録しているデモグラ情報、検索結果や商品詳細ページのヒートマップなども有用です。これらは基本ECサイト内で得られる情報ですが、サイトの外でも有用な情報は数多くあります。
例えば流入元(リファラ)はわかりやすい例です。最近はGoogleではリファラがSSLで暗号化されているために流入キーワードは取得できなくなってきていますが、それでもリファラが何かというのは大変有用であることは間違いありません。それ以外にも、取得できるのであれば他のメディアにおけるオーディエンスデータ、またメルマガやステップメールに対するリアクション、ソーシャルメディアにおける情報などがあります。
またネットではない、オフラインの情報としても店舗における接客情報や購買情報なども、消費者が同定できるのであれば大変有用です。ID-POSが普及してきたこともあり、このあたりを活用することがオムニチャネルがブームとなっている一因であると思います。
消費者データの活用領域
さて問題は、こうした情報をどう活用するかです。それをざっくり切り取ったのがビッグデータではありますが、それだけだと「活用することが重要」であることがわかるだけです。まずは顕在化している需要について考えてみます。
わかりやすい例でいえば、継続購買する商品や続編・アップデート商品などです。前者は食料品や洗剤など定期的に消費していく商品、後者はソフトウェアのニューバージョンや書籍の続刊などです。これは購買履歴を活用出来る上に顕在化している需要なので、確実に消費者の購買機会をキャッチしていきたいところです。またもちろん、カゴ落ちした商品やウィッシュリストにある商品、カゴ落ちでなくてもカートに入れっぱなしの商品などは、同様に顕在化している需要としてわかりやすいケースであるといえます。
そこまで根拠が強力ではなくても、例えばリファラのページの内容や広告がなんだったのか、ソーシャルメディアでどんな投稿をしているか、ステップメールでどこまで反応しているかなども、顕在化している需要を予測するために活用できます。顕在化している需要を抑えるのは、ある意味必要十分でいえば必要な部分です。ストレートにいえばできていないとダメということです。またそこから導かれる需要についても、比較的わかりやすいものが多いといえます。
4つ目の最後、提供された情報を最大限活用し、そこから潜在的な需要を読み解くというのが、ある意味この中では一番ホットな領域です。よく知られている事例でいえば、行動履歴のレコメンドなどはわかりやすいといえます。Aを買った人はBも買っているというやつです。小説やコミック、映画などにおいては抜群の効果を発揮します。Amazonが上陸したばかりのころ、小説やコミックをレコメンドされて「確かに自分の好みにあってるみたいだけど良くわかったな」という驚きを感じた人は少なくないのではないでしょうか。
また検索条件を活用して未来の商品の需要を予測する、なども有望なアプローチです。ネットで賃貸物件を探していたり中古車を探していたりする場合、探している瞬間にちょうど自分の条件にピッタリの情報があることはむしろ少ないといえます。好ましいアイテムは希望する人が多いため、情報としての生存期間が少ないからです。そのため検索条件がなんであったかを活用し、その後登録される物件や車両情報がマッチしていそうな場合にそれをレコメンドするのは、大変コンバージョンが高いことが期待できます。ビッグデータにしてもオムニチャネルにしてもターゲットにしているのはこの4つ目のケースがメインの領域であるといえます。
次回はこの4つ目のケースについて、元々のテーマである「パーソナライズした商品目利き」をどう実現していくかについて、より詳しく解説したいと思います。