「本当の人間力ECとは」 ~カメラのキタムラ、EC成長の道のり~

逸見 光次郎

逸見光次郎の連載コラム「カメラのキタムラ EC成長の道のりと今後の展望」
第1回:「会社を知る。会社に馴染む」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6750/

作業まで人間力!?

四国・香川県高松市にはEC事業部の高松営業部があります。私が入社した当時はまだ2004年に設立したEC専門子会社ピクチャリングオンライン社(通称:ピックオン)でした。自社サイトとして『家電オンライン』『デジカメオンライン』及びそれぞれのYahoo!店、楽天店があり、家電・カメラの販売を、『オンラインラボ』ではネットプリント・フォトブックの販売をしていました。
 
ピックオンは、商品・販促部隊はもちろん、物流・コールセンターなどの一連のEC機能を持っていました。キタムラ本体で始めたEC宅配の受注後の出荷も、このピックオンが受けていました。約800坪の物流センターには10億円もの在庫があり、倉庫内作業はヤマトロジスティクスさんに委託していました。

ここには今でも毎月通い続けてうどんを食べ続けていますので、その話も(笑)

高松営業部はJR屋島駅、ことでん潟元(かたもと)駅の間あたり、いわゆる源平合戦の屋島の古戦場の近くにあります。この近くのうどん屋さんでお勧めは3軒。「わらや」(ちょっと高いけど美味しい。観光客も多く、来客時にお連れする事が多い)「キリン」(徒歩5分と一番近い。最近改装してキレイになった。)「さか枝(えだ)」(一番のお気に入り。安くて美味しい。いつも鶏天を頼み、在庫切れ時には取寄せ(笑)オーダーするので、オバサマに覚えられているらしい)ぜひ高松・屋島にお越しの際にはお立ち寄りくださいませ。
 
さて本題に戻って、このピックオンでは誰もが一生懸命働いているのに、P/L(損益計算書)を見ると、なぜか儲けが少ない。丁寧に一つ一つの作業を見て、話を聴く中でわかったことは「処理する事が多過ぎる上に、手作業が多過ぎる事!」

キタムラにはオムニチャネルという言葉が流行る前から、「人間力EC」という言葉があります。人間がECという道具をうまく使いこなして接客し、お客さまの満足・利便性を高め、売上・利益につなげるという、まさにオムニチャネルそのものをイメージした言葉です。

ところが実際には、納期メールを手作業で一日に数百通送っていたり、Yahoo!や楽天への商品登録は、手作業のコピペの嵐だったり。2000年頃に私がイー・ショッピング・ブックスでやっていた作業とあまり変わっていなかったのです。

「なんとかしろ!」といっても、皆、これ以外にどうやったらいいかわからないから、今のやり方を一生懸命やっているので、責めても仕方ありません。

そこでいつものフォーマットに整理する事から始めました。

“問題”は“課題”に置き換えたらチャンスになる

“問題”は“課題”に置き換えたらチャンスになる“ボトルネック”リストを詳しくみたい方はこちら→ http://ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=6831

新しい会社で私がまず初めにやる事は、とにかく問題を書き出してみることです。ポストイットでもエクセルでも良いのですが、外から入った時の新鮮な視点のうちにリストアップしておきます。この“ボトルネック”リストを、整理して並べ替えてみます。ポイントは、その問題を「システム」「オペレーション(運用)」「営業要件」の視点で“時間の流れ”とともにそれぞれ捉えてみる事です。こうしたら解決するのでは?という事も書いてみるのです。

そしてその“ボトルネック”リストを元に、EC部隊、システム、商品部とあちこちに聴いてまわります。「この課題ってこういうこと?こういう解決策って出来そうかな?」

誰もが“問題”がある事を明らかにするのを嫌がります。“問題”があると怒られるし、面倒だからです。でもECのように新しい取り組み・業務が多く、しかもどんどんIT環境もインターネット環境も変わっていくものでは、問題がない事のほうが珍しいですよね。

“問題”はどんどん出して“課題”として捉え、優先順位をつけて解決したら、より良い方向に向かうチャンス。そして“問題”と“人”は切り離して考えて、絶対に“人”を怒ったりしない。“問題”があったらすぐ教えて欲しい。共有して欲しい。

そんな事をあちこちで言いながら、問題認識の共有化と、解決手法をさぐる日々が始まりました。
                         
(第三回へ続く)


著者

逸見 光次郎 (Koijro Henmi)

学習院大学文学部史学科卒。
1994年 三省堂書店入社、神田本店、成田空港店、相模大野店、八王子店勤務。
1999年 ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス(現:セブンネットショッピング)の立ち上げに関わる。
2006年 アマゾン入社、 ブックスマーチャンダイザー。
2007年 イオン入社、ネットスーパー立ち上げ後、グループ全体のネット事業戦略構築を行う。
2011年 キタムラ入社、EC推進本部副部長、ピクチャリングオンライン代表取締役会長を経て、執行役員EC事業部長。
2015年 経営企画、オムニチャネル推進担当。
2017年 3月よりローソン、マーケティング本部本部長補佐