【第1回】いまデータマーケティングをやるべきたった1つの理由

稲益 仁

国内におけるEC経由での物流総額は年々凄まじいスピードで上昇し続けています。
競争が激化していくマーケットにおいて、今後を勝ち抜いていくためにはEC事業会社それぞれが持つデータを活用したマーケティングがこれからは必要です。

本連載を通じて、最先端のデータマーケティングについて語ります。

なぜいまデータマーケティングが必要なのか

なぜいまデータマーケティングが必要なのか

 日本の広告費(電通発表)によると、2015年の国内の媒体費(プロモーションメディア除く)は4兆293億円。過去10年を振り返っても復調傾向ではあるものの、回復はしていない状況にある。国内全体の広告費が増えていない中、1兆円を超えるメディアはテレビとインターネット(広告制作費含む)のみ。つまり、国内の広告費はインターネットにシフトしている状況といえる。

 インターネット広告においても変化が著しく、2015年は運用型広告(入札型の広告)に予算が集中。実にインターネット広告媒体費における67.7%を占める状況となっており、CPC(入札単価)は今後も上昇していくものと想定される。

 実際に、サイバーエージェントで運用している健康食品企業の代表的なキーワードを調査したところ、乱高下はあるものの右肩あがりでCPCが上昇していることがわかる。

 CPCが上昇しやすい(上昇した)マーケットに変化したことで、今までの様にインターネット広告は、新規顧客を安価で獲得できるメディアではなくなってきた。安価で獲得できる純広告の在庫自体が減り、主戦場は完全に運用型広告に移っている。
実際にCPCが上昇しCPO(新規顧客獲得単価)が上昇することで、企業に及ぼす影響がどのように現れるのかをわかりやすくシミュレーションしてみる。

CPO5,000円→7,000円に悪化すると、2ヵ月近くコスト回収が遅くなり、キャッシュフローが悪化してしまう。


いまデータマーケティングをやるべきたった1つの理由とは・・・?

 これを回避するためにCPOを死守する広告出稿をおこなっていくとなると、新規顧客獲得件数の減少につながり、顧客離反数に対して新規顧客獲得件数が下回る結果に陥る。引いては、売上全体が減少していく結果に陥ることになる。

この様なマーケット環境に変化した状況下だからこそ、自社が抱えるデータを活用したマーケティングを行っていくことが必要だ。

データを活用したマーケティングとは?

 データとは、ECをおこなう事業会社の誰しもが持つ資産。具体的には、顧客の属性情報、購買履歴、アクセスログ(cookieデータ)などを指す。こういったデータを活用することで以下の様なマーケティングが可能となる。 


1.既知の顧客に対してのマーケティング(既存客)
顧客一人当たりから得られる売上(LTV)を最大化させることでCPO高騰分を転嫁させる。(データを活用したCRM施策)

2.未知の顧客に対してのマーケティング(見込み客)
ユーザー毎に持つ、興味関心にあわせた最適化配信によるCTR/CVR最大化により、CPOを抑制(データを活用した新規集客最適化)


 具体的にどのようなマーケティングをおこなっていくかについては、今後詳細をお伝えしていきます。
次回は、データ活用の前のデータを活用する為に、どのようにしてデータを貯めていくのか、というポイントについてお話させていただきます。


著者

稲益 仁 (Jin Inamasu)

1981年福岡県生まれ。広告代理店でのグラフィックデザイン・編集デザイン経験し、2006年にサイバーエージェントへ入社。福岡支社に配属して以来、一貫して“単品リピート通販”クライアントを担当。2014年4月にダイレクトマーケティング局を立ち上げ、全国各地の単品リピート通販企業をスタッフとして支援。事業計画の策定から、販促企画・クリエイティブ、CRM企画まで多岐にわたり、デジタルマーケティング業務全般に従事。そして2015年6月に顧客のLTV最大化をミッションとした専門組織「eCRMソリューション局」を設立し局長に就任。顧客の購買データを活用した全く新しいCRMソリューションを国内に浸透させるべく、日々全国を飛び回る毎日を送っている。社内表彰ではベストプレイヤー、MVP、ベストマネジャー等多数受賞の実績がある。