オイシックスと三越伊勢丹の新会社、過去提携をまとめてみた。
昨日、オイシックス株式会社(以下、オイシックス)と株式会社三越伊勢丹(以下、三越伊勢丹)が、食品配達事業の合併会社設立の検討を開始することに合意した。
過去、両社は食品配達事業や実店舗にて、幅広く提携してきた。今回の発表に当たり、オイシックスと株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹ホールディングス)及び子会社の、今までの提携の動きをまとめてみた。
オイシックスと三越伊勢丹の強みとは?
三越伊勢丹ホールディングス子会社の三越伊勢丹は、伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店・三越銀座店といった百貨店を有している。この名を知らない人は、日本では居ないだろう。この国を代表する百貨店であり、歴史が深い。なんたって徳川綱吉が5代目の将軍になる前に、呉服屋として江戸時代に存在していたのだから。
現在は、常に上質で新しいライフスタイルを提供している。強みとしては、顧客に富裕層が多いことが挙げられる。そして2011年に通信販売事業部が株式会社三越伊勢丹通信販売(以下、三越伊勢丹通信販売)として独立し、食品配達事業の「エムアイデリ」の運営を開始した。
一方のオイシックスは、2000年に創業し、食材販売のECサイト「Oisix」を設立。そこから順調に事業を伸ばし、2013年11月には、食品EC特化の物流機能を提供する新規事業「オイシックスフルフィルメントサービス(オイフル)」の提供を開始した。オイフルは、自社物流の強みを生かして誕生。また、食品EC市場で培ったノウハウを他社に提供する、プラットフォーム事業も展開している。
この2社が深く関わりだしたのは、2010年10月から。オイシックスが初の実店舗を、恵比寿三越に出店したことから始まった。
オイシックスの物流センター活用を発表
2013年5月14日。オイシックスと三越伊勢丹ホールディングスは、お互いの宅配事業の連携を通じ、両事業の拡大発展を目指すことで合意した。
2013年を秋頃を目途に相互に食品を供給・事業拡大を目指し、会員制食品配達サービスの「三越伊勢丹エムアイデリ」がオイシックスの宅配システムと物流センターを活用するとの内容だ。
「三越伊勢丹エムアイデリ」は、会員であれば、インターネットから欲しい食品を注文すると配達してくれるECサービスだ。もともと三越伊勢丹ホールディングスの子会社である三越伊勢丹通信販売が運営していたが、グループ内で食品事業を営む株式会社三越伊勢丹フードサービスに事業移管を行った。
そしてオイシックスは、「より多くの方の豊かな食生活の実現」を掲げて物流やシステム、商品などといった、食品宅配特化の仕組みを構築している。
宅配事業で提携を行うことで、三越伊勢丹フードサービスはオイシックスの宅配システムや物流センターを活用することができる。オイシックスの食品通販特化物流センターは、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に対応しているため、食品を扱う「三越伊勢丹エムアイデリ」にとって食品物流のプロであるオイシックスのセンターを利用することは大きな意味を持っている。
そしてこの発表は、同年11月に現実のものとなった。
半年前の発表が現実化、サービスリニューアル
2013年11月7日。「三越伊勢丹エムアイデリ」がオイシックスの運営支援のもと、サービスをリニューアルした。
5月に発表したオイシックスの宅配システムと物流センター活用を始めとした動きが実現し、サービスリニューアルに至ったのだ。そしてこのリニューアルにはポイントが2つある。
商品ラインナップを約2倍に拡大
オイシックスの宅配システムや物流センターを活用することで、三越伊勢丹の商品とオイシックスの商品を同時に届けることが可能になった。そのため今までの約1,200アイテムから、オイシックス商品が増えることにより約2,400アイテムにまで拡大した。
サイトリニューアル
サービスリニューアルにあたって、オイシックスサポートのもとECサイト自体のリニューアルを行った。
オイシックスがスーパーへ実店舗を。
2014年4月26日。オイシックスと三越伊勢丹フードサービスが共同で、クイーンズ伊勢丹石神井公園店にOisix専用コーナーを開設した。
クイーンズ伊勢丹は高品質スーパーマーケットだ。本企画の専用コーナー設置により、オイシックスが得意とする30~40代の消費者の開拓が狙いである。また、オイシックスは、インターネットのチャネルで獲得できなかった消費者を、実店舗で獲得しようという想いがあった。2社のサービスは親和性が高く、どちらもメリットを得ることができる。
そして今回の合併会社へ。設立意図と今後の動きは次のページ
そしてオイシックスと三越伊勢丹の合併会社へ。
2016年9月29日。オイシックスと三越伊勢丹が、食品配達事業の合併会社設立の検討を開始することについて合意した。
両社の特徴を活かした合併会社設立を中心に、幅広い連携を行い、大きな結果を残していきたいとしている。そして今後は、両社の成長に貢献するような食品配達事業の合併会社設立に向けて、プロジェクトチームにて協議を具体化する方針だ。
こうして過去の動きを追っていくと、オイシックスと三越伊勢丹は非常に相性がいいことが伺える。オイシックスの食品宅配に対するノウハウや自社物流の強み、そして三越伊勢丹の富裕層への販売プラットフォームは、互いに相乗効果をもたらし、消費者へ安心安全の食品を届けてきた。
そして今回の合併会社設立の検討も、両社の強みを最大限活用することができる取り組みの1つなのである。今回の一歩、食品ECの未来を大きく変えてくれる予感がする。