Amazon Pay定期購入で何が変わる?〜アマゾン鈴木氏、メガネスーパー川添氏(ecbeingセミナーに潜入)
先日、アマゾンジャパン本社で開催された「Amazonログイン&ペイメント定期購入導入効果セミナー」を開催され、その中で、メガネスーパー デジタルコマースグループ ジェネラルマネジャー川添隆氏、アマゾンペイメント事業本部事業戦略/事業開発マネージャーの鈴木保幸氏によるパネルディスカッション(モデレーターはecbeing 事業推進部 統括部長 斉藤 淳氏)が行われ、興味深い内容がいくつかあったので、ここで披露したい。
(参考)3年で5倍成長の裏にはオムニチャネル(ecbeing/Amazonセミナー第二弾)
https://www.ecnomikata.com/ecnews/13597/
Amazon Pay定期購入の効果的なターゲット層、商品とは?
斎藤〜まず「Amazonログイン&ペイメント」という名前が変わるそうですが?
鈴木〜はい。Amazonログイン&ペイメントというのは、日本独自のネーミングでして、グローバルではPay with Amazonというサービスを全世界に提供しています。なぜ、日本独自の名前をつけたのかというと、ログインとペイメントのかけあわせた2つの機能のサービスだと伝えたくて、日本側のスタッフがネーミングしたという裏話があります。グローバルで統一しようという動きがありまして、2月22日をもって、「Amazon Pay」というサービス名に生まれ変わります。ここではあえて、そう呼ばせていただこうと思います。
斎藤〜定期購入が今回のAmazonログイン&ペイメント改め「Amazon Pay」のテーマになっています。川添さん、メガネスーパーにおける定期購入というのは、どういったサービスでどういうお客様をターゲットにしているのでしょうか。
川添〜定期購入は、コンタクトレンズとカラコンとコンタクトケア用品、サプリで行なっていまして、現状ではお店での定期購入とECの定期購入では仕組みを変えています。お店の方は、定期購入に近くないといいますか、例えば、ワンデーのコンタクトレンズ6箱を一回で送りますという契約で、30%オフにします等リードタイムも、商品内容の変更もすべて受け付けますということになっています。
ECではそこまでやってしまうと手が止まっちゃったりするかなということで、3ヶ月分を3ヶ月おきに提供します、という風にして、そのようなリードタイム設計で、だいたい30%オフで定期購入に入ると安くなって、定期的にお届けします、ということになっています。客層としては、コンタクトレンズが20〜40代が主流なので、だいたいその年代になるのですがお店を含めて、定期購入でいうと、女性の方が比率が高くて、主婦層の方が多い。
Amazon Pay定期購入は、Amazon社としてどういう位置づけか?
斎藤〜定期購入になってくると、返品率が下がってくるように思われますが、通常と定期購入ではだいぶ変わりますか?
川添〜そうですね、返品自体はもともと、そこまで多くはないです。途中で度数交換をしたいというのはあります。どちらかというと、部分交換の方が割と多いです。定期購入の場合で、度数を変えたいという時は、実際に、事前にご連絡をいただいたりするので、返品にはならないし、現に多くないんです。
斎藤〜「Amazon Pay」の定期購入機能は、ecbeingの中にも昨年から取り入れているわけですが、鈴木さん、この定期購入の位置付けというのは、Amazonという会社の中では、オプション的な取り扱いなのか、いきなり、これを使ってくださいというものなのか?
鈴木〜このサービスは始める前から計画としてはありまして、すでに海外ではリリースをしていました。Amazonがこうした仕組みを提供しようと考えた段階から、定期購入という考え方は、当然ながら考えていた。定期購入という言い方を日本ではしていますが、グローバルでいうと、オートマチックペイメントという言い方をして、日本語に置き換えると、「自動購入」で、そういう意味合いが強いんです。
日本の事業者様ですと、1ヶ月に一回、サプリメントを一定量届けるというのが定期購入だと思うのですが、これは世界で見ると、少し違います。そういったモデルもあるのですが、自動的に金額をお支払いただいて、その金額の中で、事業者様がお届けする、もしくは月額5000円という権利を購入して、権利の中で漫画を読むとかですね、もしくは好きなワインが届く、というふうに、自動という意味合いが強いです。
ですから、その需要があるというのは、我々自身もECをやっていますが、提供しているAmazon.co.jpの中でも、定期購入機能というのは提供させていただいているので、一定数、ニーズはあるなというのは、そこはもちろん、折り込み済みで、このサービスを展開する前からもちろん考えがあったが、システム的にご提供が少し遅れたという背景があります。
導入にあたって苦労された点は?
斎藤〜ちなみに、海外で先行していたと思うのですが、日本に持ってくる際に苦労された点とか、海外との違いみたいなところはどうですか?
鈴木〜それほど多くはないのですが、法律のところ、あとは日本の独特の商習慣だったり、文言の選び方だったり、世界共通のプラットフォームでシステムが動いているものですから、日本独自でやるというのは結構大変だったりしました。
斎藤〜「Amazon Pay」を導入する以前の段階では、定期購入には、どんなハードルがあったのでしょうか?
川添〜現状において、定期購入は会員限定にしています。限定かつ決済手段は、クレジットカード、後払い、代引きもできるようにしています。通常購入のほうはゲスト(非会員)も購入できるのですけど、定期購入はそうではない。つまり、その意味において、定期購入やりたくない、という理由に、会員にならなきゃいけないというものがあって、それがハードルになっています。
そのへんは、我々としては、会員にして縛りをつけないと難しいのかなと思っていますけど、そこがハードルになっている以上、新規加入数を増やしたいけど、なかなか施策として、できていない。そこが課題として持っていました。
斎藤〜導入する時の苦労した点は?
川添〜普段はそこまでなかったです。それ以前からAmazonのセラーの方に出店させてもらっていたので、セラーセントラルの管理画面を見ていましたし、そのへんの多少、使い方は知らなかったとしても、運用サイドとしても、「ああ、これですね」ということで受け入れやすかったと思います。Amazonに出店をされていなくて、導入される方は、そこの管理画面が増えるので、そこの導入のタスクとして入れておかないといけないかなと。
数字的にはどう変わったのか?
斎藤〜Amazon Payの定期購入を入れたところで、数字的に変わったところはどこですか。
川添〜まず単価のところは変化していません。そして、購入率というのが出しにくいのですが、いくつかの側面で出していまして、さっき言ったコンタクトの購入者、新規加入者の購入も含めて、それを母数として、新規の加入数を割っていくと、これは上がっています。具体的に、導入前が4.3くらいだったのですが、4.9になっています。
効果みたいなものをページで出すのが難しいなと思っていますが、定期購入と商品カテゴリーを見たセッション数を母数にして、その母数を定期購入の新規加入数で割ると、ざっと仮の購入率が出るので、それも洗い出しています。我々の場合、カートの画面で、ボタンが表示されるので、そこで切り替える場合もあります。カートの表示数割る定期購入の新規加入数でやると、それはあがっています。ここまで増えているんだと驚いたんですけど、定期購入の新規加入者においてはコンバージョンレートというところでもあがっているという実感です。
斎藤〜上がった理由は、どこにあって、結果、それによりメガネスーパーはどんな利点を得たのでしょう。
川添〜正直いうと、この「Amazon Pay」の定期購入を訴求しているわけではないんです。「Amazon Pay」の定期購入を導入しましたといったところで、お客様にとっては「はて?」となってしまいますので、特段何もやっていない。
ただ、その注文自体、「Amazon Pay」で決済しますと、その先ほど触れたような「強制的に会員登録してもらう」というのはなくて、それは外しているわけです。なので、実際は、「Amazon Pay」を使うことで、ゲスト(非会員)みたいな形で購入いただいている方もいるので、やっぱり会員になりたくないよというというのは存在するのだと思いました。だから、「Amazon Pay」でそこからそういうところの情報を引き出すのはありでしょうね。ゆるめの会員みたいなものを取り込めました。他の決済手段は、純増しているので、そことの属性みたいなものは違うはずで、そことのカニバリもないのではないかと思っています。
鈴木〜新規のユーザーさんに貢献できているというところは、狙い通りで、定期で買うというハードルはアプリのダウンロードと同じくらいハードルが高いわけですよね。そこをやっていただく上で、いいお話なのかなと思います。手前味噌ですが、Amazonというブランド力が生きているのかなと思っています。
買う前に、本当に、定期的に買っちゃっていいのか、という部分があると思うのですが、メガネスーパーさんの場合、知名度はあるとは思うのですが、そうではなくて、特にスタートアップでこれから、何かブランドを立ち上げるというところのフェーズにおいては、果たしてその商品はどうなのかなということは、疑いの目というのは少なからずあって、そこで「Amazon Pay」ボタンがあって、Amazonが決済のところをやって定期的に届くとすると、そこでハードルが下がるというのはあるのかなと思います。
定期購入機能自体で今後、どういう機能的な広がりがあるのか?
斎藤〜この定期購入機能は、Amazonさんとして、新たにサービスが付加される等の可能性があるのでしょうか。
鈴木〜定期購入というのは、日本語のリリースの仕方であり、世界的には、自動購入という概念というのは先ほど話しました。定期的に届けるということだけではなく、先ほど、オムニチャネルの話もありましたが、お客様がそこに来られたら、自動でログインされて、レジの前に、QRコードをかざしたら、そのへんのところを、自動でチェックできる、という事もできれば、と思っています。ビーコンだったり、赤外線だったり、仕組みが出ているので、そういうことを使って、自動決済ということもアメリカでは始まっていたりします。この機能を応用して、いろんなことができるんじゃないですかね?
川添〜今アメリカでやってらっしゃるところでいうと、Amazon GOとかはそれに近い。決済自体もAmazonがやってしまうということですよね。
鈴木〜あまり多くは喋れないんですけど、Amazon GOも概念としては近くて、実店舗でできるというのも、近いうちに提供できるかもしれないです。定期購入の拡張性という部分においてはこだわりたいですね。
川添〜私が思うところ、ECはログインこそに意味があると思っていて、決済とか住所情報の正確性が重要なのです。「Amazon Pay」はECを利用しているユーザーであって、住所情報が正確、クレジットカードも登録されているというのは他ではなかなかないと思うんです。ちょっと事業者サイドでも語弊があるかもしれないですけど、会員のIDを持っている意味があるのか、という議論が出てきてもおかしくないかなと思っています。ユーザー側から見ても、IDが複数あってわかりませんというのは起こり始めています。
鈴木〜企業がIDというか顧客情報を管理し続けるというのはある意味、リスクであって、あとIDというのは生き物なんですね。一回登録して、10年それが使えるかというと、そうではなくて、結婚される方もいて、苗字も変わりますし、引越しされることだってあります。今まで会社日本を届けていたのに、転職されて、送り先の環境が変わるとかですね。
それは人のステップにより、個人情報というのは変わっていくんですね。そのまさに、いきた個人情報を保管されるというのは企業としては大変なことだと思うんですね。我々の強みというのは普段Amazonでお買い物していただいているので自宅まで確実に商品が届いていると、かつ、その情報は比較的鮮度が高くて、その情報をAmazon内で登録いただいているので、その情報を持って、皆さんのECサイトで商売ができるというのは、我々の強みなのかなと思います。
「Amazon Pay」の今後について
斎藤〜今後は、「Amazon Pay」はどうなっていくのでしょうか。
鈴木〜そもそもログインするということすら、我々としては簡易化していきたいなと思っていまして、色々な個人を認識するという技術は発達してきていますので、独自の技術、他社さんが開発されている技術をうまく活用させていただいて、パスワードを打つということすらも、近いうち改善していきたいですし、Amazonのアカウントって電話番号でもログインできるので、そういった改善を重ねて言って、そのお店に来られたら、特定できているというような世の中は近いんじゃないかなと思います。
斎藤〜そうすると、接客すらも変わってきますよね。
鈴木〜川添さんもご苦労されていると思うんですけど、オムニチャネルもそうですよね。実店舗と繋げようとしても、リアルで店員さんの手元にそのお客様の情報がないというのが問題点であって、そこを技術でどう解決して、目の前のお客様が、ECで何を買われたのか、とか、どんなものを調べていたのか、というのもすべて提供できるというのは強みになるのかなと思います。
斎藤〜そうなってくると面白いですね。定期購入が果たす役割と、今後のAmazon Payのあり方を考えるところまでに話がいたり、非常にECの未来が楽しみになりました。お二方、ありがとうございました。
今回は「Amazon Pay」の定期購入にフィーチャーしたものだったが、このセミナーを通して、決済をするにあたって、それが人の信用が大事だと痛感したし、だからこそ、初めて購入に至る点で、ECに与える決済の大切さを考えさせられるものとなった。同時に、IDの重要性も、顧客情報の管理もリスクであり、かつ、その情報が人々のおかれる環境の変化とともに、更新されていくものであるとすれば、大変その存在意義は大きくて、ECにとってかけがえのないものであることを感じさせるものとなった。