アマゾンとヤマトホールディングスのタッグが牽引する宅配便

協力する通販と物流の最大手

EC業者や通販業者にとって、なくてはならないのが宅配便だ。この宅配便が急速に進化し、大きく様変わりしつつある。その牽引役となっているのが、アマゾンとヤマトホールディングスだ。
通販トップのアマゾンと物流トップのヤマト運輸のいわば「王者タッグ」は、日本の物流の変革の起爆剤的な存在となっている。

もともとヤマト運輸の基本的な物流モデルは、日中に荷物を集めて、夜間に各地のターミナル間で輸送し、全国の営業所から届け先に分散して運ぶというものだった。
しかし、eコマースの拡大によって扱う荷物が年々増え続けるにつれて、処理能力は限界に近づきつつあった。その現状を打破するため、2013年8月、神奈川県愛川町の工業団地の一角に、ヤマトホールディングスは24時間稼働の施設「厚木ゲートウェイ」を建設した。

そのオープンに1ヶ月ほど先立って、神奈川県小田原市に開設された大きな施設がある。アマゾンの物流基地「アマゾン小田原フルフィルメントセンター」だ。この2つの施設の距離はわずか40km程度。
そして、アマゾンの商品の多くは、アマゾン小田原フルフィルメントセンターである程度仕分けされてからヤマト運輸に持ち込まれ、全国に送られて行く。2社が密接に関与していることは明らかだ。

かつてアマゾンには佐川急便も噛んでいたが、「利益がほとんど出ない」として撤退した。ヤマトホールディングスがアマゾンとの取引でどの程度の利益が出ているかは不明だが、両社が協力し合うことで、お互いに利益になっている可能性もある。

24時間体制の物流基地で3大都市圏を結ぶ構想

ヤマトホールディングスの関東におけるもうひとつの中核施設が、2013年10月に稼働を開始した「羽田クロノゲート」だ。厚木ゲートウェイと同様、関東周辺の物流の要であるとともに、海外への窓口としても機能している。ヤマトホールディングスには、空の窓口としてほかに沖縄国際物流ハブがあるが、こちらがアジアに近い立地を生かして、中国や東南アジア諸国との間を受け持っているのに対して、羽田クロノゲートはヨーロッパやアメリカなど、世界各国との交流の扉となっている。

羽田クロノゲートでは、そのほか全国の医療機関から集めた医療器具を洗浄して再び届けたり、家電製品を修理して依頼主にもどしたりするサービスや、少部数の印刷に適したオンデマンド印刷も行っている。付加価値を高めて、利益を増やそうというのだ。

ヤマトホールディングスは2016年までに関西と中部にも同様の施設を造る予定だ。そうなれば東京・名古屋・大阪の3大都市圏間の当日配送も可能になるという。

ECサイトや通販サイトの運営者は、アマゾンとヤマトホールディングスの動きから目を離すわけにはいかないだろう。