「ZOZOTOWN送料自由」都道府県別 平均送料ランキングにみるスタートトゥデイからのアンチテーゼ
株式会社スタートトゥデイ(本社:千葉県千葉市)が運営する、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」は、ユーザーが自由に送料を設定できる「送料自由」という取り組みを試験的に行っている。今回、「平均送料」と「送料0円が設定された注文の割合」、「都道府県別 平均送料ランキング」が発表されており、その結果が非常に興味深かったので紹介しておく。
2017年10月1日から始まった「ZOZOTOWN」の「送料自由」という取り組み。ファッション業界やEC業界だけでなく、ありとあらゆる分野において話題をかっさらったことは記憶に新しい。
ユーザーが自由に送料を設定できるようになった結果はどうだったのか。試験的に行っているということなので、中間発表的な位置づけではあるが、今回その数字が発表されているので見ていきたいと思う。
都道府県別 平均送料ランキング
まず、設定された送料の平均は税込みで96円だったという。そして「送料0円」が設定された注文の割合は43%だったそうだ。
システムとして料金を選ぶ際はプルダウン式のボタンを押すのだが、この最低金額は100円となっている。0円を選ぶには「その他」の欄に直接記入しなければならないので、「送料自由とはいえ最低金額は100円なのか」と思った方も多くいたように感じる。
ただ、ZOZOTOWNユーザーが比較的若い世代が多く、また「ツケ払い」を利用するユーザーも多くいる中で、「送料0円」が半数以下だったという点においては驚きがある。
個人的には「雪国」と「災害があった県」において支払っている金額が高いことが興味深いなと感じた。あくまでもこのデータは平均なので一概にそうとは言い切れないのかもしれないが、やはり「荷物を運んでくれること」への感謝の気持ちを持つユーザーが多いのではないだろうか。荷物が手元まで届くということが、どれだけ大変な仕事の上で成り立っているのかを汲み取っているような気がしてならない。
これもたまたまかも知れないが、関西圏の地域が下位に集中していることも地域色が出ていて面白いなと思う。いや。別にこれは「送料自由」と謳っているので、それがすなわち「悪」ということではない。「西」の出身である筆者にとっては思い当たるフシが多く、この分かりやすい数字に思わず笑ってしまったのだが。
アイデア次第で難しい局面も打開することができる
非常に楽しく、そして非常に賢い取り組みだなと思う。
というのも、昨今の配送料の値上げに伴ってEC事業者が悲鳴を上げている中、こうしてユーザーと共に楽しめる企画を打ち出したということ。
そして「あなたは配送料をいくらに設定しますか?」という投げかけによってユーザー側にも考えさせるという「思考の余白」を活かした企画であるということ。
また、これまで送料無料を謳ってきた他のEC事業者は「値上げ分を自社負担」するか「送料無料を廃止することによってユーザー離れが起こるか」というどちらにせよマイナスに振れる選択肢しかない中で、好感度とアクティブ率を下げず、配送業者にも負担をかけず、それでいてユーザーに少額でも気持ちよく送料を負担してもらえる仕組みを生み出したのである。
これほど強烈なアンチテーゼがあるだろうか。ひとつの社会実験であるとは思うので、この企画が続くとは考えにくいが、「アイデア次第で難しい局面も打開することができる」という姿勢をこれでもかと見せつけたスタートトゥデイの功績は大きい。