メルカリ〜「mercari R4D」設立発表会レポート〜
今年全世界1億DLを達成したフリマアプリ「メルカリ」を運営しているC to C大手の株式会社メルカリ(以下メルカリ)が新たな試みを開始する。その名も「mercari R4D」。聞きなれない言葉だが一体何をしようというのか、その内容に迫る。
技術で他より先へ「mercari R4D」とは
メルカリは素早い社会実装を目的とした研究開発組織として、今回の「mercari R4D」を設立した。これまでもAIや機械学習などの技術を活用し、偽ブランドなど不正商品の検知、写真から商品のサイズを推定したラッピングサービスを行うことで手間を削減するサービス等を提供してきた。
「mercari R4D」では外部の企業・教育機関と連携を行い、より高いレベルでの開発・研究を行う。メルカリの基礎体力の弱さを外部組織がカバーしつつ、研究を行っていく。そしてその成果を採算度外視で世の中に提供していくことで早い社会実装を目指すというのだ。ここが通常の企業とは大きく違う点だろう。利益を出すために、研究に投資して開発を進めるのが従来のR&Dだ。
「mercari R4D」はDevelopment(開発) Design(設計) Deployment(実験) Disruption(破壊)の4つのDが語源に組み込まれており、ただの研究ではないことがわかるだろう。実際に導入しようとするとコストが高くなるが、実装されているところが見たいからやる、世の反応を見たい、と話していることからもわかるように、まず実践して新たなマーケットを創造しようとしていることが見て取れる。
そして共同パートナーとなる外部の専門家も非常豪華だ。
・慶應義塾大学 環境情報学部 教授 大学院政策・メディア研究科委員長 村井純氏
「日本のインターネットの父」として知られる。ブロックチェーンという将来インフラを支える技術の研究を行っていく。
・ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役 落合陽一氏
AI研究の第一人者であり、代表取締役であり、大学の准教授でもあるひじょうにマルチな才能の持ち主。
類似画像の検索をコストを削減したうえで、いかに高速で回せるようにするかという研究を行う。
・シャープ株式会社 常務 研究開発事業本部長 種谷元隆氏
8K技術を駆使し、情報伝達量が多く綺麗な画像処理を行う研究を進める。
今回挙げた共同パートナーは一例で、他にも様々な研究を行っていくことも発表された。
何故シャープ研究開発本部が「mercari R4D」に?
メルカリは今年で5年目を迎えている。それに対しシャープは紆余曲折ありながらも、創業から105年を迎えた。この100歳差が今回手を取り合ったのはどのような理由からなのだろうか。
その答えは「早い社会実装」に集約されている。強みである独自技術の更なる成長を目指しているシャープと社会実装をなるべく早く行い、技術研究を行いたいメルカリの利害が一致したのである。
メーカーであれば自社の独自技術が社会にどのような影響をもたらし、どのような反応をするのかは気になるところだろう。今は大手メーカーはシャープのみだが今後共同パートナーは増えると代表の山田氏は話していたので、今後の結果次第ではメルカリは様々な企業の技術を吸収できるかもしれない。
新しいマーケットの創出を、メルカリの挑戦
今回選定したテーマと共同パートナーを選ぶ基準は、直近で結果が出るものではなく3〜5年かかるような中長期的なテーマであること、またメルカリの軸に合っているかどうかである。
メルカリの軸とは既存のEC事業にフィードバックができることはもちろんあると思う。それと同時に経営理念の「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」という目線は外せないだろう。新技術でECはもちろん、ECから派生した新たなマーケットを創るかもしれない。
シニアフォローのスプツニ子氏は「未来を提示する」と話していた。その言葉のように、メルカリは新しい事業の未来を提示しているのだ。定期的に研究の進捗は報告するとのことなので、動向はしっかりと追っていかなければならないだろう。
CtoCはある意味、一般の人と人とが生んだECでもある。そのECが新たな文化とテクノロジーを生むプラットフォームになる。メルカリの目指す夢は僕らにも少なからず新たな価値をもたらすかもしれない。