本当に「ふるさと納税」は地域のためになっている?【さとふる社調査】
株式会社さとふる(以下「さとふる」)は、「さとふる」サイト経由で寄付をしたことがある人を対象に、ふるさと納税の利用実態に関するアンケート調査を実施した。
20代以上の男女計1,575人を対象
ソフトバンクグループの「さとふる」(本社:東京都中央区、代表取締役社長:藤井宏明)は、ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」経由で寄付をしたことがある20代以上の男女計1,575人を対象に、ふるさと納税の利用実態に関するアンケート調査を実施し、その概要を公表した。以下その内容について見て行く。
寄付者経験者で、移住に関心を持つ人は2割に留まる
ふるさと納税は地域貢献につながる?
ふるさと納税は地域貢献につながっていると考える人は約89%と、同社の前回の調査の68.4%を大きく上回る結果になった。
また、出身地へ寄付したいと考える人は約62%になり、出身地への寄付意向は九州/沖縄地方出身者が77%と最も高く、次いで東北地方・四国地方出身者が同率で73%という結果になった。
寄付者の主観とは裏腹に制度の議論が活発化
今回の調査にあるように、多くの寄付者が「ふるさと納税は地域のためになっている」と考えているのとは裏腹に、ふるさと納税制度に対する制度そのものへの批判や疑義を含む議論が活発化している。
ふるさと納税制度によって、東京、大阪、愛知、神奈川などの大都市圏から、すでに年間100億円単位で税収が削がれている。特に東京都は、地方消費税の配分見直しにより年間1千億円が削がれる見通しで、この点について批判するパンフレットを都民などの要望に応えて大増刷する形で1万部以上を印刷したことがメディアで大々的に取り上げられた。
また、公金たる寄付金を地方の産品を提供する事業体に送り込む形になり、事業者が寄付金だよりになって、補助金に頼り農業が国際競争力を失ったように、かえって地方の力を衰えさせているとの指摘もある。
また、各自治体が返礼品競争に追い立てられる中で、返礼品に関する事務など事務経費がかさみ、結局、各自治体の手元に残り、有効に使える寄付金はごくわずかだという点を問題視する議論も多い。
さらに、一部の自治体のように、地元の産品でないものを返礼品として並べて、寄付金を募るところまで出てきている。総務省の「返礼品は寄付金の3割以下にすべき、換金しやすい金券などは返礼品にすべきでない」という通達を無視する自治体については枚挙にいとまがない。
ふるさと納税の本質は寄付だ。寄附に返礼品は本来関係が無いはずである。災害復興への支援のための寄付として、ふるさと納税が活用されるのは素晴らしいことだ。むしろこうして返礼品ありきではなく、使い道で寄付先を選ぶのが、本来のふるさと納税の姿のはずだ。
皮肉にも今回の、さとふる社の調査で、寄付者の主観と実際に「ふるさと納税」が置かれている実情の間にかなりのギャップがあることが明るみになったのかも知れない。
ふるさと納税の制度そのものの浸透が進んでいない状況で、ふるさと納税の課題に関する議論が活発になっている昨今の状況だが、ふるさと納税代行企業である、さとふる社が、どうこれらの山積する課題に向き合うか未だ見えない。その点についても寄付者やユーザーは、2018年、目をしっかり見開いて注視していくべきではないだろうか。