ふるさと納税最前線1:地域で育つECノウハウ〜ふるさと納税のお礼品の今

ECのミカタ編集部

 昨今、ふるさと納税について、随分、その注目度は高まってきたが、4月1日には、総務省からお礼の品に関する通達が、各自治体向けに発表され、お礼の品に関する自治体の対応が関心事となっている。考え方にもよるが、このお礼の品の対応において、自治体や地域の事業者や生産者のマーケティングスキルが問われており、やり方次第では、地域経済に活力を与えるきっかけとなっている。

 そんな中で「ふるさと納税の趣旨を大切にしたい。本来、お礼の品は、地元に寄附金が落ちるものであり、地元にゆかりのある特産品や伝統工芸、その土地ならではの体験などにすべきだ」と話しているのが、株式会社トラストバンクだ。同社は今から2年前から、自ら運営するふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」で、掲載されるお礼の品に対して、独自の掲載基準を設けて、ふるさと納税事業への想いは強い。

ふるさと納税が地域にどういった影響を与えているのか?

ふるさと納税が地域にどういった影響を与えているのか?

 ふるさと納税の影響について考えてみたい。同社の指摘によれば、ふるさと納税により、4つの資源が日本全国に循環するようになったという。4つの中身は何か?地域の魅力が『情報』として、全国に発信され、寄附というカタチで地域に『おカネ』が届けられ、感謝の気持ちとしてお礼の品、つまりは『モノ』が寄附者に送られる。「お礼の品」と同梱されたお手紙や地元の魅力を伝えるパンフレットなどが寄附者の手元に届き、寄附者、つまりは『ヒト』はお礼の品の生産地など寄附先に訪問するきっかけとなっているのだ。

 これまで税収を地方交付税に頼らざるを得ない自治体は、毎年同じような予算編成を行い、新しいことにチャレンジできない傾向があったのが一変。今ふるさと納税により、自治体が変わろうとしている。

変わる地方自治体。それを切り開くふるさと納税

 ある自治体の市長は、市長に就任してから日々施策を削ることしか考えられなかったそうだが、ふるさと納税による寄附金により、町を変えるための施策を考えられるようになったという。市長になり、初めて前向きな取り組みを実施できるようになった、という。

 全国の自治体は、地域の事業者や生産者とともに、地元を知ってもらいたい、地元に足を運んでもらいたい、という強い想いから創意工夫を凝らし、積極的に地元の魅力を発掘し、お礼の品を全国の寄附者に届けている。
つまり、積極的に地元の魅力を世の中に届けようという想いによって、民間企業のようにECノウハウやマーケティングスキルが養われているというわけなのだ。

 地域の事業者や生産者においても、これまで全国の物流にのせると、〜〜産しかわからなかったため、消費者目線が欠けていたり、域内でしか商売をしていなかったのだ。だが、ふるさと納税では、地域の事業者や生産者は、顔の見えるカタチで商品を全国の寄附者に届けることで、独自のお礼の品(商品)について、深く考えるきっかけとなり、商品開発やマーケティングに力を入れるようになっているという現象を引き起こしている。

 そんな中で、ECが関わりを持って来る。例えば、先ほど挙げたトラストバンクの「ふるさとチョイス」のサイトでは、どうなのだろう。お礼の品ごとに紹介ページがあり、写真や文章などで特徴や背景などお礼の品の詳細がわかるようになっている。また、一部の事業者・生産者は、必ずお礼の品にお手紙や地元のパンフレットなどを同梱し、寄附者に届けることで、リピートに繋げたり、町の魅力を発信しているというわけだ。

総務省、自治体の考え方

 総務省や多くの自治体は、同じような考えを持っている。先ほど冒頭に挙げた総務省通達にしても、今後もふるさと納税の制度を健全に発展させていく上で必要なことであり、また、寄附者が、お礼の品目的で寄附をすることは決して悪いことではないだろう。

 産地直送で届けられる地域ならではの品や、長年守られてきた伝統工芸など、お礼の品を通じて、日本の多様な魅力を知る機会にもなるのだから。トラストバンクは、寄附者の方には、”お得”な品選びではなく、地域の魅力を発見する楽しさを知って頂きたいと考えています、と話していて、ECができることの幅を広げていると実感した次第だ。

ふるさと納税の今後の展望

 今回は、ふるさと納税の実態を考える上で、トラストバンクを取材したが、こう話す。「ふるさと納税は、税の地域間格差を是正するための一つの税制。そのため、いつまでもこの制度が続くという保証はありません。トラストバンクは、自治体の職員の方々に、ふるさと納税の制度に頼るのではなく、制度を使って、知恵を絞り、工夫をすることで、自立をするきっかけに繋げることが大切だと、伝えています。」と。

 ふるさと納税は、地域活性化を促す、一つのツールであり、この考えが、いま自治体や地域の事業者、生産者にも浸透してきている現状の中で、ECはどうあるべきなのか?そして、地域はどう変わっていかなければならないのか。

 地域活性の動きを一過性のものにしないように、ふるさと納税に絡む企業の今後は、EC業界の発展も担っていて、地域課題を解決したいとする地域産業および社会の発展に貢献とも密接で、注目を続けていきたい。


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