【IoTが買い物を変える】物を置くだけで残量を自動管理・自動発注を実現する『スマートマット』
株式会社スマートショッピング(以下、スマートショッピング社)は10月15日、あらゆるものの重量を測定・監視し、自動発注につなげる新IoTデバイス『スマートマット』の法人向けサービスを開始した。発注を完全に自動化できる『スマートマット』は購入方法のどのように変化させていくのか。
上に置くだけで容量を管理・自動発注が実現する『スマートマット』
スマートショッピング社は日用品のネット通販価格比較サイト『Smart Shopping』を手がける。その一方でBtoB事業者向けの自動発注・在庫管理ソリューション『スマートマット』の開発を進めてきた。
「消耗品の購入は労働に近い」そう語るのはスマートショッピング 社共同創業者・代表取締役の林 英俊氏だ。
服や家電などの耐久品の場合、購入単価が高い一方で購入頻度は低い。反対に間接資材や日用品などは低単価であるものの、購入頻度は高く、決まった商品をリピートすることが多い。特にBtoBでの購買となると、都度購入先を変えることは少ないだろう。
近年、ECやIoT技術の進歩により、音声やボタンでの購入、レジのない店舗など買い物の仕方は変化してきているが、すでに進んでいる購買の”簡素化”を超えて、”完全に自動化”するのが『スマートマット』である。『スマートマット』は重量センサを搭載したA4もしくはA3サイズのIoT機器で、その上に物を置くだけで、残量・残個数を自動測定し、リアルタイムで在庫量・個数を管理できる。そして、一定の残量になるとシステムを通じて自動的にメール・アラート及び発注がされる仕組みだ。
昨今の”働き方改革”により、物事の効率化や省人化に取り組む企業が増えているが、『スマートマット』でも管理・人的コストの削減が可能で、さらには発注ミスや欠品による機会ロスを事前に防ぐ。また、残量履歴を残し、データを管理・分析することで、勘や経験に頼った俗人で的な在庫管理・発注をなくすこともできる。
「オフィスでのコピー用紙管理などで活用されることを想定していましたが、営業を進めていくうちにオフィスだけでなく様々な場所で使用できることに気付きました」そう林氏が語るように、『スマートマット』は汎用性が高く、オフィス、工場、倉庫から小売、病院など幅広い活用シーンを見込んでいるという。単三電池での稼働、Wi-Fiによるワイヤレス通信であるため置き場所も問わない上に、複数のマットを組み合わせることで1トン、2トンレベルの資材も管理することができるという。
今後はすでに要望の上がっている小型機種の開発、折りたたみコンテナや物流パレットと一体型の物流倉庫などで使用出来る新商品の開発も行なっていくそうだ。
活用シーンは日々拡大。導入企業・パートナーが語る『スマートマット』
すでに多数の企業で実証実験が行われているが、今回はスマートショッピング社とパートナーとして取り組む3社が共に登壇し、『スマートマット』との連携などについて語られた。
有限会社ゑびや(以下、ゑびや)では自社で運営する飲食店・土産物店の雑品・小売商品の自動発注に『スマートマット』を利用している。これまで、店舗で利用する資材発注や取り扱い商品の生産者への発注を自動化してきた。これまでの実証実験を踏まえ、今年11月にはゑびや小売の全在庫を『スマートマット』で管理することが決まっている。
また、ゑびや独自開発の来客予想システムと『スマートマット』を連携し、予想自動発注システムを開発しているという。
また、クラウド型受注発注サービス『Multi Platform System(MPS)』を提供するオザックス株式会社(以下、オザックス)では、『スマートマット』と『MPS』を組み合わせることで導入企業の棚卸しを自動化。これまで人力であった棚卸し作業をなくすことで、効率化とコストカットが実現する。
登壇したオザックス 上席執行役員 情報システム本部長 富山友貴氏は「企業の購買業務をもっと楽にできるよう、共同でサービスを提案していきたい」と意気込みを見せた。
約15年前からM2M/IoT分野へ取り組むKDDI株式会社(以下、KDDI)では『スマートマット』で使用する通信回線をパッケージ化した『 KDDI IoTクラウド〜マットセンサー〜』を2019年1月以降に提供する。すでに、千代田区での実証実験をスタートさせており、株式会社リーテム(以下、リーテム)ではオフィスでの自社封筒の在庫管理を行っている。
このリーテムの取り組みでも新たな発見があったという。リテームでは回収業を行っているのだが、『スマートマット』の仕組みを逆手に取り、リサイクルBOXに入れられたリサイクル品の増加量を管理。リサイクルBOXが満杯になったら通知するように設定することで、回収頻度を定期回収から適時回収へ移行することができた。
消耗品や商品の残量履歴をマーケティングにも活用
「消耗品の残量の履歴というものを、真面目に溜めた人はいません。しかし、こういう履歴がビッグデータとして我々のクラウドには溜まっていきます。この世の中にないデータを用いた分析、学習、AIといった機能であれば今までできなかったことができるのではないかと考えています」とマーケティング面での活用についても林氏は語る。
『スマートマット』のサービス提供領域の広さから、今後は大手総合ネット通販企業や大手SI企業、スマートホーム推進業社など各業界のTOP企業と提携し、サービス提供領域のさらなる拡大を進めるという。業務の効率化実現はもちろんの事、林氏が語るようなデータ活用の面でも取り組みを共にしたい企業は多いに違いない。
EC業界内でもEC事業者や物流倉庫での商品・資材管理など、活用できるシーンは多そうだ。また、今回はBtoB向けのソリューション発表であったが、一般家庭向けにも進出する予定だという。ボタンを押す、AIに話しかけるという動作すら必要としない、スマートショッピング社が目指す、究極のショッピング体験の実現はもう目前だ。