オンデーズの奇跡の復活はこの着想にあり!ハヤカワ五味氏の考える小売の近未来【ヤプリMMU速報】

石郷“145”マナブ

 株式会社ヤプリ(以下、ヤプリ)は4月12日、イベント「Mobile Marketing Update 」を開催した。ヤプリは自社でアプリ開発できるようにしたプラットホームであるが、当イベントはそのアプリをただ作るだけではなく、そこにおけるマーケティングの重要性を説くもの。このアプリの製作ができる開発環境も、誰でも、直感的に作れて、かつ自動アップデートすることで、進化できる仕様になっており、むしろ人間の頭で何を考えるかに重きを置く内容である。

 今回は「ファン作り」の部分にテーマを設定したものになっており、ファンのためのテクノロジー活用について議論しているのだ。僕が注目したのは株式会社オンデーズ社長田中修治氏と株式会社ウツワのハヤカワ五味さんのトークであった。

 オンデーズはかつて14億円の負債総額を抱えていたものの、生まれ変わり、メガネ業界にメガネの価格破壊などを起こした。例えば、会計後にメガネを製作し、わずか20分で渡せるサービスなど、型にとらわれない発想で変革をもたらし、そこからV字回復を果たした企業なのである。その立て直しの張本人こそが田中修治さんである。

 一方、ハヤカワ五味さんは、ECのミカタでも取り上げさせていただいたが、彼女は胸に自信がない人に向けたランジェリーブランド「feast」を提供し、ネガティブなイメージがつきがちなところを、「シンデレラバスト」というキーワードで根本から発想を転換して、若い世代の女の子から支持を集めている人物だ。 

オンデーズの奇跡の復活はこの着想にあり

オンデーズの奇跡の復活はこの着想にあり

 ハヤカワ五味さんは冒頭から「この負債総額は自分も経営する立場で考えるとメンタル的によくぞと思っているし、尊敬している」と話を振り、オンデーズの田中さんがいかにして、それを回復させたのかへの興味を示した。

 オンデーズの田中さんは自分たちの会社のポジションを中途半端な立ち位置と分析。200万本ほど、販売しているが、JINSなどはこの2倍のレベル感であり、ただその一方で、規模感としては小さくはないとも捉えている。ニッチでもなくベンチャーでもないものの、パワーゲームができるわけではないという部分を自分なりに「中途半端な立ち位置」と分析したのだ。

 面白かったのは、では、それをどう伸ばしていくかの家庭の過程の中で、ではあと、300万人を増やす、という発想ではなく、「一生オンデーズしか買わない」3000人を作ろうと考え、そこに目標を設定し、マーケティングの施策を行ったとしている。

アップルにおける商品が売れるメカニズム

 それを語る上で引き合いに出したのが、「Apple」の例だ。例えば、iPhone持っていない人がそろそろ買おうかな、と思っていると、大抵その周りに「アップル信者が潜んでいる」と話していて、彼らが勝手にその迷う人を仕留めにいくと話している。同じスマホでもサムスンではAppleほどではない訳で、その差は大きいと語った。

 つまり、マスへの広告は追い込み漁みたいなもので、一旦認知が広がったところで、Appleのように、そこを仕留める誰ががいることが重要だとしているのだ。オンデーズ信者がいる状態でなければ、マスへの広告も意味はなさないのではないかと推測している。
 
 熱狂的なファン作りで言えば、販売するスタッフに焦点が当てられているのも特徴。物を買っていく軸に「人」を置いて、スタッフとお客さまとの関係性を重要視している。それは一例に過ぎないが、このようにして自ずとファンは熱狂させるのだ。オンデーズで買ってくれる中でもコアユーザーは、一人でも30人分買ってくれている人がいるという。そうやって彼らなりの強さを形成しているようなのだ。

ハヤカワ五味さんは全く独自の発想で一歩先をゆくコミュニティ論

ハヤカワ五味さんは全く独自の発想で一歩先をゆくコミュニティ論

 一方で、ハヤカワ五味さんもまた顧客との関係性を重視しており、ハヤカワ五味さんはその中で、言語化の重要性を説いている。というのも、ハヤカワ五味さん自身が、最近若い人と話していて感じるのは、言語化できる人がいないという事実であり、実際、サイト内に、質問箱を用意してみたところ、そこに検索すればわかるようなことも寄せられているそうなのだ。

 だからこそ、いわゆるインサイトと言われるが、言語化できていないユーザーのニーズへアプローチしていく必要性が出てくると考えていて、それを自らのブランドで実践している。これは以前、当メディアでも触れたが「読解力」というところだろう。意外と発信するメーカー側がユーザーの読解力を理解していなくて、結局のところ、自分たちのプロモーションが生かされていないことがあると思うのだ。

 また、新たな取り組みとして、「FemTech」というキーワードをあげ、これは今まで事業者の大半が男性だったので、女性の方からビジネスを発信していこうというのである。例えば、生理、出産などはなかなかビジネスに結びついていないものだったりして、ここの部分を自らの発言力も踏まえて、最前線に立って、ビジネスを構築したいとした。

アプリはツールに過ぎない!どう活用するかが企業に問われている

 これに関連して、僕が思ったのは、ハヤカワ五味さんは以前、話していたことで「自分のコミュニティの中にいる人たちを成長させ、稼いでもらいたいし、それで客単価を上げていきたい」という旨の話をしていたこと。今回の提示もまた、彼女なりの自分のコミュニティの中にいる人たちの価値向上と、また世間に対してのメッセージを兼ねているのかも、と思った次第。また、その視点こそが従来のビジネスの構築とは違った新しい目線で刺激的だと思った。

 何においてもヤプリが提供するものはアプリというプラットフォームであり、このイベントが意図するように、その中でどう自分たちのユーザーとそれらアプリを使って関係構築をしていくかが大事だと思われ、その意味ではここで述べられた一つ一つの関係構築のヒントは来場者の心に響いたのではないかと思う。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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