10兆円突破か 2020年のEC市場を大予測
株式会社富士経済は、ECをはじめとした通販の市場を調査し、その結果を「通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2019」にまとめた。
この調査では、通販市場を形態別、商品カテゴリー別に調査し、主要企業の事例分析などを行い、市場のトレンドを明らかにしている。
通販市場は2017年に10兆円を突破、ECが後押し
通販市場全体では、2017年には10兆円を突破している。
2000年頃からスタートした仮想ショッピングモールによって、商品の拡充やサービスの充実、利便性の向上が進んだことが主な結果の原因となっている。
通販形態別で見ても、パソコンやスマートフォンといったECの構成比率は全体の80%を占める結果となり、仮想ショッピングモールの成長を、ECが後押ししたことは間違いない。
テレビ通販は微増、カタログ通販は縮小してはいるものの、一定の需要を獲得していることもあり、各々の通販形態に応じた展開の併用や、メディアミックス戦略の高度化が進んでいると見られる。
2017年、2018年の宅配クライシスに伴う物流業界の大幅な料金改定においても、ECは価格改定がしやすいという面で需要が下がる懸念もある一方で柔軟に対応できたというのも、通販市場を押し上げた要因のひとつである。
これまで配送料金無料などのサービスで差別化を測っていた企業は、大きく差を広げられる結果となった。
ユーザーを巻き込む戦略で拡大するEC市場
EC市場拡張のメインとなるのは、仮想ショッピングモールだ。
ワンストップで購入が可能な利便性の高さ、豊富な品揃えなどといった消費者のメリットに加え、企業にとっても販路拡大、サービス統合のチャンスとして注目されている。
「Yahoo!ショッピング」はソフトバンクユーザー、「Wowma!」はauユーザー、といった携帯キャリア事業のユーザーを巻き込んだモール展開や、「Amazon」のサービスを拡充したプライム会員など、ユーザーを巻き込んだ戦略で大きく伸ばしているのも、EC市場の特徴のひとつだ。
近年では楽天も携帯キャリア事業に進出し、今後も顧客獲得競争は激化することが予想される。
ECの受注別形態で見てもスマートフォンが圧倒的なシェアで市場を牽引しており、上記のキャリアユーザーを巻き込んだ戦略が功を奏していることがわかる。
今後もスマートフォンを中心としたEC市場の拡大が予想され、スマートフォンを経由したEC市場は2020年に4兆1,471億円、EC市場全体では10兆円を突破するとみられる。
ECと相性が良いのは書籍・ソフト。ファッションや食品のニーズも高い
ECの構成比が最も高いのは「書籍・ソフト」で、98.9%にものぼった。
新刊を含めた幅広いタイトルの展開が可能なこともあり、電子書籍や音楽・映像配信への需要シフトはある一方で、閉鎖した書店のEC展開などの需要流入もみられる。
ECの市場規模が最も大きいのはファッションだ。
従来は試着できないデメリットから伸び悩んでいたが、近年は試着・返品サービスが拡充し、利用者は増え、構成比も高くなってきている。
次いで食品の需要が高まり、近年は生鮮食品を安全に送るサービスも拡充している関係で、今後利用者が増えることが予測される。
ECの構成比が最も低いのは健康食品・医薬品となったが、これはターゲット層である高齢者の主要媒体が新聞広告や折込チラシ、カタログ通販であることに起因している。
ECのサービスが拡充することによって、市場規模が顕著に拡大していることがわかった。
今後のさらなるサービスの拡充、市場の発展に期待したい。