@cosmeベストコスメアワード2020発表。1位が高価格スキンケア商品となった理由とは

森田春香

株式会社アイスタイル(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:吉松徹郎)は12月1日、2020年、生活者に支持されたコスメを総括する「@cosmeベストコスメアワード2020」(以下、ベストコスメアワード)を発表した。同日には記者会見が開かれ、同社のサービスプランナー、西原羽衣子氏、原田彩子氏が発表を行なった。

「@cosmeベストコスメアワード2020」とは

実際に商品を使用したメンバーから、この1年間に@cosme上に寄せられたクチコミ投稿をベースに、今、生活者が支持している商品をランキング形式で表彰するアワードだ。サービス開設当初より毎年発表されており、@cosmeならではの生活者視点に立った受賞ラインナップが、化粧品業界や美容業界から注目されている。

2020年は、新型コロナウイルスの影響により、化粧品をはじめとした業界や消費者動向に大きな動きがあった。外出自粛にともない化粧をする機会が減少したり、外出時のマスク着用など、「あたりまえ」の価値観や生活様式ががらりと変わった。今回の受賞商品は、この影響を大きく受けた結果となっている。

口コミは前年比30%増。思いやりの気持ちが口コミ数を伸ばしたと推測

口コミは前年比30%増。思いやりの気持ちが口コミ数を伸ばしたと推測

2020年のベストコスメアワード集計対象期間中、@cosmeには100万件にせまる口コミ投稿があった。この数値は2019年から約30%アップという結果で、過去数年と比較しても2020年は口コミ数が大幅に増加していることが分かる。

口コミ増加の背景は、緊急事態宣言による外出自粛や店舗の休業があり、宣言解除後も自由にテスターが試せないという状況が続いたなか、ユーザー自身も外出自粛の影響でお家時間や隙間時間が増えたことで口コミを投稿する時間が増えたことが大きいという。「社会情勢が不安定だと口コミが増える傾向にある」(西原氏)。実際に口コミ数が過去最高となったのは、東日本大震災が起きた2011年だったという。

良い口コミが投稿されやすいSNSに対し、@cosmeは、ユーザー投稿が大きなコンテンツとなる性質上、ポジティブ・ネガティブな口コミどちらも書き込まれる特徴がある。

コスメは肌に直接つけるもののため、ECでの購入が難しい、失敗したくないと考えるユーザーが多い商材であることから、「実物を試すことができない今、購入するにあたって自分の率直な口コミを役立ててほしい、力になりたい、という思いやりや助け合いの気持ちから口コミが増えたのではないか」(西原氏)と語る。

総合ランキング1位はスキンケア商品。全体傾向をポイントで読み解く

総合ランキング1位はスキンケア商品。全体傾向をポイントで読み解く

ロングセラー×リニューアル

「社会情勢が不安定だと定番、ロングセラーが売れる傾向にあるが、今回は減少した。しかしロングセラー商品のリニューアルが支持された」(西原氏)と語る。

総合ランキングは、「定番の安心感」と「時代に合わせた新しさ」を兼ね備えた商品が目立った。総合大賞に輝いたランコムの「ジェニフィック アドバンスト N」は、2009 年に「ジェニフィック」として発売され、2019年に新たに「免疫力」への意識の高まりに応える「美肌菌」に着想を得たリニューアル商品を発売。これがコロナ禍のユーザーの消費傾向とマッチしたことが大賞受賞につながったと考えられる。

「安心」を買う意識から、高価格帯にシフト

2017年~2019年まではプチプラが上位3位を占めていたが、2020年度は1~3位までを高価格帯の商品が独占した。11月に同社が行ったアンケートでも「いつもより高い化粧品を購入することが多くなった」と答えたユーザーが3割にのぼったという。

またランコムは、総合1位となった商品のトライアルセットを500円で販売している。ときには無料で手に入る「トライアルセット」を有償で販売することは、EC購入の増加にともない「試す」ことが難しい環境に、「購入前に、お金を払ってでも試したい」というユーザーがいることの裏付けであるといえる。

「コロナ禍での経済不安から、失敗を避けるため『お金で安心を買う』ともいえる心理が働いていることがうかがえる。店舗に行けなくても、口コミがリスクの担保になっている」(西原氏)と語った。

総合1位、2位がともにスキンケア商品となったことから分かるように、5年ほど前から高まり始めたスキンケアへの関心がより一層高まり続けた1年だったようだ。ユーザーが外出自粛の期間を、スキンケアを通じて自分と向き合う時間にしていたと考えられる。

テレワークやWithマスク生活の影響で化粧をする機会が減少。ベースメイクアイテムやレスキューアイテムの需要増

テレワークやWithマスク生活の影響で化粧をする機会が減少。ベースメイクアイテムやレスキューアイテムの需要増

ファンデーションは総合10位以内にランクインせず

マスクの着用時の色移りやヨレが気になるというユーザーが多いようだ。アンケートの結果によると、ベースメイクに悩みがあると答えたユーザーが半数を超えた。この影響もあってか、ファンデーションは総合10位以内にランクインしなかった。

そんなファンデーションに代わって、無色のフェイスパウダーが多くランクインした。肌のベタつきを抑えたり、自然に肌色のムラをカバーしてくれることや、何よりマスクへの色移りが少なく、マスクを着用してもヨレを感じにくいというメリットがある。

総合5位にランクインしたイニスフリー「ノーセバムミネラルパウダー」に寄せられた口コミで印象的だったのが、粉質を「片栗粉のようだ。伝わりますか?」というものだ。「店頭からテスターが消え気軽に試せなくなった今、誰しもが触ったことのあるものにたとえ、読む相手に『どうにかして伝えたい』という意識から生まれた口コミであることが推測でき、とても興味深いと感じた」(原田氏)という。

ハイライトは可能性を秘めている

ハイライトのニーズは引き続き高く、総合4位にセザンヌ「パールグロウハイライト」がランクインした。ハイライトはおもに鼻筋や目元に使われるものだが、ナチュラルメイクやベースメイクのツヤ足し、マスクで平坦に見える顔全体、暗い印象を与えがちな目元へのメイクなど、いろいろな用途で使われているようだ。

肌荒れの深刻化でレスキューアイテムに注目

コロナの影響で一時全国的に品薄となったマスクだが、現在は供給も安定し、多くの商品の中からより魅力的なものを選べるようになった。口コミ内の「マスク」というワードの出現率が前年の4倍となり、「日用品部門」2位にはアラクスの「PITTAマスク」が選ばれた。カラーバリエーションが豊富でファッション感覚で着用できることや、素材が化粧用コットンと同素材で作られていることから肌荒れを起こしづらいことも大きな理由のようだ。

マスクによる肌荒れは今も深刻で、アンケートでは約半数のユーザーが「マスクによる肌荒れが気になる」と答えた。マスク選びと同時に、肌荒れを改善する「レスキューアイテム」にも注目が集まている。韓国では「肌再生クリーム」とも呼ばれているドクタージャルトの「シカペアクリーム」が新人賞を受賞した。シカクリームと呼ばれるアイテムは、前年の14倍の売り上げとなっている。

韓国コスメは今や当たり前に受け入れられ、今回のランクインにもつながったようだ。今後もたくさんの新しい商品が日本で発売されていくと考えられる。最近話題となりつつある中国コスメの動向にも注目していきたい。

「自分の身は自分で守る」「美容は自分のために」という意識が強くなった1年間

「自分の身は自分で守る」「美容は自分のために」という意識が強くなった1年間株式会社アイスタイル サービスプランナー 西原羽衣子氏(左)、原田彩子氏

この1年を「なんといってもスキンケアが強い1年だった」(西原氏)と振り返った。

総合ランキング以外にも様々なカテゴリ別のランキングが発表されたが、「化粧は人にどう見られているか」、「この匂いは人にどう思われるか」という意識から、「化粧は自分のテンションを上げるためのもの」「他人ではなく、自分が好きなものを選ぶ」というユーザーの意識の変化が読み取れるランキングだと感じた。

「おそらくまだまだ不安な状況が続くと思いますが、自分で楽しむ美容を取り入れつつ、外出時は自分を守りながら注意し、生活してほしい。美容を通じてより豊かな生活、ひいては経済の安定につながることを切に願っている」(原田氏)と語った。

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