【楽天やヤフーが対象に】大規模モール規制法のポイントを経産省の担当者に聞きました
大規模モールやアプリストアを運営する「特定デジタルプラットフォーム提供者」(DPF)に、出店者に対して取引条件の開示することなどを求める新法が2月1日に施行される。
具体的にどんな点が変わるのか、法案を取りまとめた経済産業省デジタル取引環境整備室長・日置純子室長に話を聞いた。
目的は?
法律では、DPFと商品提供者との「取引関係における相互理解を推進」することを基本理念としている。
経産省はこの法律の目的について、「デジタルプラットフォーム運営事業者と利用事業者(出店者)間の取引の透明性と公正性確保のために必要な措置を講ずる」と説明している。
規制の対象となるDPFは?
対象となる特定DPFは、出店者への影響力が特に大きい
・年間3000億円以上の国内売上額がある物販総合オンラインモール
・年間2000億円以上の国内売上高があるアプリストア
となっている。日本企業だけではなく外資も対象で、楽天市場を運営する楽天やヤフー、アプリストアを運営するGoogleやアップルなどが対象になる見通しだ。
どんなことが義務付けられる?
具体的にはDPFに対して、出店者に契約条件を開示することや、変更等の事前通知を義務付ける。
さらにDPFは、経産相の指針を踏まえて手続き・体制の整備を行う。DPFはその経過と自己評価を毎年度、経産相に報告。これに対し経産相がレビューを行い、その評価は公表する。
違反した場合は勧告・公表の措置がなされたり、それでも従わない場合は措置命令がなされたりする。一方、特定の行為を禁止する項目は盛り込まれていない。
法律制定のきっかけは?
法律案の策定に向けた動きが始まったのは2018年ごろにさかのぼる。
すでに多くの消費者が利用しており、DPFの影響力は大きかったのは言うまでもない。一方で、DPFと出店者との間で取引についてトラブルも発生していた。
翌19年には、公正取引委員会がDPFへの商品提供者に、取引の実態に関する大規模ヒアリングを実施。課題を整理した。
商品提供者から課題として寄せられたのが、
「規約の一方的な変更で手数料を引き上げられたり、新しい決済システムを導入されたりした」
「大規模モールの運営者が、取引データを活用して同種の商品を後追いで販売している」
「検索表示や手数料で、大規模モールの運営者が自社や関連会社を優遇している」
といった声だ。
経産省によると、オンラインモールの市場規模は9兆円、アプリ市場は1兆7000億円にのぼる。事業数はモールが99万社、アプリ市場は70万以上だ。一方で多くの出店者がこれらのモールやアプリに売上を依存している状況だ。
出店者側からすれば、DPF側からのある程度の要求は飲まざるを得ない事情がある。
ただ、これらを野放しにすれば、出店者の意欲が阻害されるほか、公正な競争環境が害されると経産省は判断。その状況を改善し、透明性の高い市場を目指そうというのが今回の法律だ。
公取委とも連携強化へ
これとは別に、公正取引委員会との連携についても法律ではふれられている。
具体的には、情報開示の手続きをふまえて独占禁止法違反のおそれがあると判断した場合、公取委に対処を求める仕組みを設けるとしている。
独禁法では、立場の強い事業者が弱い事業者に不当な取引条件の変更を押し付ける「優越的地位の濫用」が禁止されている。
今回の法律が執行される過程でこれらの違反が見つかった場合は、排除措置命令や課徴金納付命令といった処罰の対象になる可能性がある。
法律の概要
◆規制対象になる「特定デジタルプラットフォーム提供者」の対象
・年間3000億円以上の国内売上額がある物販総合オンラインモール
・年間2000億円以上の国内売上高があるアプリストア
◆「特定デジタルプラットフォーム提供者」がとるべき対策
・出店者などに対する契約条件の開示や変更等の事前通知
・経産大臣が定める指針を踏まえて手続、体制整備を行う
・上記の状況とその自己評価のレポートを経産大臣に毎年度提出
◆今後の予定
新法の施行:2021年2月1日
規制の対象となる大規模プラットフォーム運営者から届出:〜3月1日
「特定デジタルプラットフォーム提供者」の指定:今春