主要通販各社の秋商戦 やや苦戦も高単価品に動きあり、増税決定で〝駆け込み〟始まる?
「秋商戦、やや厳しめに推移か」。有力大手通販実施企業各社に今年の秋商戦の状況について聞いたところ、残暑の影響やカタログ部数削減などにより、前年同期に比べ、今年の秋商戦は苦戦しているところも多いようだ。ただ、消費増税が決定した影響などからか高単価商品が昨年よりも動くなどで客単価がアップし、売り上げ増となっている企業も少なくなく、各社で明暗が分かれている。今秋商戦における好調・不調な商材ジャンル、売れ筋商品などを通じて各社の状況を見ていく。
今秋商戦では各社で明暗が分かれているようだ。カタログ発行頻度の見直しや発行部数の削減に踏み切ったニッセンやベルーナ、高島屋では前年秋との比較で はマイナスとなっている模様。また、千趣会では残暑の影響を受けて、寝具など季節性の高い商品が動かず、注文件数が伸びずに「立ち上がりはやや悪い」とす る。セシール(※ディノス・セシールの「セシール事業」)でも詳細は明らかにしていないが「客単価減で前年よりもやや不調」とする。
そ の一方でディノス(※ディノス・セシールの「ディノス事業」)、スクロール、オットージャパン、日本生活協同組合連合会(生協連)では前年の秋商戦の業績 を上回って推移しているようだ。そうした企業は高単価商品や戦略商品を軸に客単価などが伸びているよう。無論、各社の訴求力の高い商品や見せ方の工夫が売 り上げ増に貢献していることは間違いないと思われるが、10月の「消費増税」の決定を受け、すでに駆け込み需要が始まりつつあり、高価格帯の商品の売れ行 きを押し上げているのでは、との声もあがっている。現状ではまだ限定的なものであろうが冬季にかけて「増税前の駆け込み」の影響が強く出てくる可能性は高 そうだ。
今秋の各社の売れ筋商品は?
明暗が分かれた今秋商戦。ではそうした難しい状況の中で各社はどのようなジャンル、商品で売れ行きを伸ばしているのだろうか。
千趣会では残暑の影響からファブリック(寝具やラグ)などは苦戦しているようだが、ブラやショーツなどのインナーやボトムのほか、タオルやスリッパなどの 売れ行きは好調に推移しているようだ。中でも売れ筋となっているのは「吸汗速乾ウルトラストレッチ裾くしゅレギパン」(=画像、価格2990円~3790 円)。同社によると"キレイめ"のシルエットで初秋にコーディネートできる商品でありながら、吸汗速乾という残暑対策の機能性などが受けたとしており、ま た、以前からストレッチ系ボトムを強化してきたが、競合他社の類似商品が拡大したことの相乗効果もあり、売れ行きが伸びたとしている。加えて「カタログだ けでは配布のタイミングにより季節のズレが発生する」ため、通販サイトなどで戦略的に販促を強化したことなども奏功したようだ。
ベルー ナでは低・中価格のチュニックやワンピースの売れ行きが好調のようだ。同社によると中でもプリント柄などを使ったデザイン性のあるものや異素材をミックス したり、ボア素材を使用するなど"素材"に特徴のある商品が好調のようだ。「『冒険』まではしないものの、『定番の中でもいつもとちょっと違うものを』と いう傾向が出ているよう」(同社)としており、具体的な売れ筋商品として、流行のプリント柄を取り入れつつ1990円と低価格な「シフォンプリントチュ ニックワンピース」や「異素材ドッキングワンピ」などをあげている。
ディノスでは各商品ジャンルともに堅調なようで比較的高価格帯の動 きもよいようだ。具体的にはグレードの高い羽毛布団や高機能ミキサー「ヴァイタミックス」の新機種で税込9万6600円の全自動タイプ、高額のジュエ リー、昨年に発売した新型EMSマシン「シェイプビートコア5000」(税込8万8000円)や美容機器「アセチノスリムタップグランデ」(同1万 2600円)、老舗の高価格帯生おせちの予約などが順調に売れ行きを伸ばしているとしている。
セシールでは化粧品が好調のよう。具体的 にはオリジナル商品の卵殻膜コスメ「AlmadoLaDina」シリーズで新たに薬用商品を投入したことや、定期販売の伸びで売り上げを伸ばしたとし ている。化粧品のほか、衣料品でも従来からの人気商品を中心に売れ行きはよく、今期から柔らかさとストレッチ性を向上させるなどのリニューアルを行い、主 力カタログ「レディースセシール」の秋号で表紙や巻頭に掲載したり、通販サイトで特集を組んだ「スマートニットジーンズ」や従来から人気の「3Dブラ」に 新機能を加えた同シリーズの新商品などの売れ行きよいという。
スクロールでは拡販を強化しているカットソーの売れ行きがよく、具体的にはカタログ「ラプティ」秋号の表4でも掲載した「Vネックカットソー30」は売れ筋となっているという。
オットージャパンでは「昨年よりもアウターを含め高額帯の動きがよい」としており、具体的には主力カタログ「Otto」秋号で掲載した「ジャガードワン ピース」(1万9900円)や今年に新設した同社の新ブランド「FABIA(ファビア)」では、同ブランドのイメージモデルを務める山田優さんが同ブラン ドのカタログ表紙やイベントなどで着用した「ジャージーワンピース(ベルト付き)」(6900円から)が人気となっているという。
高島 屋の通販事業では衣料品は苦戦しているとしているが、宝飾品や大型家具、寝具などの高額品の動きがよいという。具体的には「南洋黒蝶真珠ネックレス・イヤ リングセット」(価格3万1500円)や機能寝具の「エアウィーヴ」(シングルで6万6150円)のほか、食品では松茸やカニ缶詰などの高単価商品が売れているとしている。
秋商戦の着地と冬商戦の出足は
秋商戦も終盤に差し掛かったが、各社では今秋商戦の着地についてどう考えているのか。また、これから本格化する冬商戦の各社の立ち上がり状況はどうなっているのだろうか。
秋商戦の着地を前年比で横ばいまたはプラスと予想するのは千趣会、ディノス、スクロール、オットージャパン、生協連。「立ち上がりはやや悪いが、気温の低 下とともに秋商材が動き出し、ほぼ前年並みで推移すると思う」(千趣会)、「全般的にこのまま堅調に推移する」(ディノス)、「初動の結果から予測ではや や良い、と見ている」(スクロール)、「売り上げ増を見込んでいる」(オットージャパン)、「前年比10%増程度で推移」(生協連)とする。一方、カタロ グの発行部数を削減したベルーナと高島屋は「ややマイナス」(ベルーナ)、「カタログ通販は10%減の見込み」(高島屋)などとしている。
冬商戦の出足は10月からの開始直後で「まだ何とも言えない」とする企業も多いが「前年並み」(千趣会・ベルーナ)や「おせちの予約受注は高価格帯が順調」(ディノス)などの声が出ており、まずまずの立ち上がりとなっているようだ。