ヤマトHDも下方修正 2024年3月期第3四半期決算説明会 EC需要のピークに備えた結果は?
ヤマトホールディングス株式会社は、2024年3月期第3四半期(10月~12月)の決算説明資料を公開した。営業収益、利益ともにマイナスの結果を受けて2024年3月期予想の下方修正を行った。第3四半期はブラックフライデーなどの年末商戦で、宅配需要は大幅に増加すると予想していたが、予想を大幅に下回り経費の増加や生産性の低下につながったという。
営業収益、利益ともにマイナス 予想を下回るEC需要で人員は過剰に
ヤマトホールディングス株式会社(以下、同社)が24年2月5日に発表した決算説明資料によれば、2024年3月期第3四半期(10月~12月)の営業収益は5002億円(前期差-119億円)、営業利益380億円(前期差-103億円)と第2四半期に引き続き、マイナスの着地となった。
営業収益の減収要因として、EC事業者の関心が高いブラックフライデーや年末商戦などの宅配需要が想定を下回っていたこと、国際輸送の減少傾向が継続したことだとしている。一方で、個人および既存法人顧客に対する価格設定の適正化や法人顧客との新規取引拡大により宅配便収入は前年より2.2%伸長した。
また営業利益の減収要因としては、宅配需要、国際輸送の需要低下に加え、11月から12月のピークシーズンにおける時給単価や委託単価の上昇、10月のふるさと納税駆け込み需要の反動等による生産性の低下だとしている。他にも23年12月にあった、仕分けターミナル「羽田クロノゲート」内の機械故障による預かり停止や配送遅延も業務量低下の要因としてあげられるだろう(※1)。これを受けて同社は、宅配便ネットワークの強靭化と業務量下振れリスクへの対応を強化していくとした。
※1関連記事:ヤマト運輸、東京都と千葉県の一部で配送遅延を発表 復旧により12時から預かり再開【2023年12月14日12時】
宅配需要は低下も、法人顧客との新規取引で取扱個数増加
小口貨物3商品の取扱商品動向を見ると、第3四半期は取扱個数が約1兆4582億個(前期差約-3423万個)、単価は724円(前期差+19円)。取扱個数を部門別でみると、リテール部門は約6億9396万個(前期差約-3989万個)、法人部門は約7億6420万個(前期差約+5661万個)と法人部門での数量拡大が特徴的だった。
また、単価については法人部門の新規取引等により増加しているものの上昇幅は鈍化する結果となった。
第3四半期では、日本郵便との協業により23年10月1日から「クロネコゆうパケット」が開始(※2)。同期初の取り組みだったが、取扱個数は約3億1197万個と前期比29万個増とプラスで着地している。第4四半期では24年2月1日から「クロネコゆうメール」も開始されるため、取扱個数の増加に期待したい(※3)。
※2 関連記事:クロネコゆうパケットの取扱開始で日本郵便とヤマト運輸の協業第1弾開始 「物流2024年問題」「環境問題の解決」に貢献
※3 関連記事:「クロネコゆうメール」を全国で発売開始、2024年2月から クロネコDM便からの移行作業は?
営業収益、営業利益ともに下方修正へ
同社は今回の結果を受けて、2024年3月期予想を営業収益は、宅配便収入の低下を見込んで1兆7650億円と前回予想-200億円の下方修正。営業利益は、委託費を中心とした下払経費の単価上昇などにより、400億円(前回予想-250億円)とした。
一方で、宅急便3商品数量は新規顧客の獲得推進により当初予想18億8580万個から18億9130万個に引き上げる。背景には法人顧客との新規取引の増加や24年1月30日に発表された「カーボンニュートラル配送」の差別化による宅配便の利用促進があげられるだろう(※3)。
第3四半期はEC需要のピークに向けて人員を増加した結果、EC需要が伸び悩み生産性の低下や委託単価が増加する結果となった。業務量に合わせたリソース配置を支える仕組みの高度化・展開(DX推進)が今後の大きな課題となりそうだ。
※3 出典元:「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」について
国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを実現(ヤマト運輸株式会社)
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