ECサイトの集客が難しい……。流入を増やすために必要な観点を紹介
「これまでリスティング広告を出稿し、SNSでの情報発信も行い、SEOにも取り組んできたのに、なかなか思うように売上につながらない……。」
多くのECサイト運営者が、そんな悩みを抱えているのではないでしょうか。さまざまな施策を試しても成果が出ないのは、ECサイトならではの集客の難しさがあるからです。
本記事では、ECサイトの集客が難しい8つの理由と、効果的な改善方法を解説します。また、自社サイトとECモール、それぞれの特性を活かした具体的な集客施策も詳しくお伝えしていきます。
なお、この記事では2024年12月時点の情報を掲載しています。
ECサイトの集客が難しい理由
ECサイトの集客に悩む経営者は数多くいます。ECでの集客の難しさには、いくつかの理由があります。
ここでは8つの理由についてみていきましょう。
手段が多岐にわたり選択に迷うから
ECサイトの主な集客手法は、以下のとおりです。
- SEO(検索エンジン最適化)・GEO(生成エンジン最適化)
- SNS運用
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- アフィリエイト
- メールマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
それぞれにメリット・デメリットがあり、目的や予算に応じた選択が必要ですが、それぞれに求められるスキルや戦略が異なるため、適切な選択が難しいと感じる方も少なくありません。
例えば、SEOは長期的に効果を発揮しますが、成果が出るまで時間がかかります。一方で、リスティング広告やディスプレイ広告などは即効性が高いものの、広告費がかさむことがあります。
さらに、業界や商材によって効果的な手法が異なるため、集客経験がない方にとってはどれを優先するかを見極めるのは困難です。
KPIとなる指標が多いから
ECサイトでは、売上や利益だけでなく、アクセス数、直帰率、コンバージョン率、リピート率など、管理すべき指標が複数あります。
また、各指標の因果関係も複雑で、どの数値を重視して改善を進めればよいのか判断が難しくなります。
さらに、各指標を改善するための施策も異なるため、効果的な打ち手を見つけるのに苦労する方が多いのです。
特に、ROIやLTVなどの長期的な指標については、短期的なKPIとの両立が難しく、判断に迷うポイントといえます。
顧客のニーズや不満を理解しづらいから
実店舗と違い、ECサイトでは顧客と直接会話する機会がありません。購入履歴やサイトでの行動データから顧客像を推測することになりますが、顧客の生の声や表情が見えないため、真のニーズや不満を把握しづらいといえます。
結果として、的確なマーケティング施策を打ち出せない状況に陥りがちです。
ヒートマップツールや会員情報などからデータを収集できますが、顧客の購買意思決定プロセスや商品選択の判断基準までは見えてきません。
アンケートやカスタマーサポートでの問い合わせ内容も参考になりますが、回答者の属性に偏りが出るため、全体像の把握には限界があります。
競合と差別化しづらいから
昨今ではECサイトは参入障壁が低く、競合が非常に多い市場です。商品やサービス内容が似通っていると、価格競争に巻き込まれやすくなります。価格以外の魅力を打ち出そうにも、実店舗のような接客や店舗の雰囲気による差別化が難しく、独自の付加価値を見出すのに苦労する方が増えています。
商品の写真や説明文だけでは、品質や使用感を十分に伝えられないという課題もあります。
また、大手ECモールでは商品検索結果の表示順位も重要な要素となり、上位表示を獲得するための施策も必要不可欠です。結果として、商品力以外の部分でも継続的な改善と投資が求められる状況が続いています。
商品やサービスの価値を十分に伝えにくいから
実店舗では商品を手に取って確認できますが、ECサイトでは写真と文章だけが頼りです。商品の質感や機能性、使用感などを正確に伝えるには工夫が必要です。
特に、アパレル商品やインテリア商品は、サイズ感や色味の表現が難しく、それが返品率の上昇につながることもあります。動画やAR技術を活用する企業も増えていますが、制作コスト面で壁にぶつかるケースも少なくありません。
また、商品説明文については、SEO対策と読みやすさを両立する必要があります。
1から流入を作る仕組み作りが複雑だから
実店舗なら立地条件によっては集客が見込めますが、ECサイトの場合、開設しただけでは誰も訪れません。
検索エンジンからの自然流入を増やすにはコンテンツ作成とそれにかかる時間が必要です。SNSでの情報発信も、フォロワー数の増加には地道な活動が欠かせません。広告運用でも、効果的なキーワード選定やクリエイティブの制作など、専門的なノウハウが必要になります。
自社サイトやECモールなどによって集客戦略が変わるから
自社ECサイトとECモールでは、必要な施策が大きく異なります。自社サイトでは、認知度向上から購入までの全てのフローを自力で構築する必要があります。
一方、ECモールは出店料や手数料がかかるものの、モール内の既存顧客にアプローチできるメリットがあります。
各販路の特性を理解し、適切にリソースを配分しなければ、効率的な運営は難しいでしょう。
ECサイトの集客でよくある失敗
ECサイト運営者が陥る失敗には、いくつかの共通点があります。
ここでは、ECサイトのマーケティング現場でよく見かける具体的な失敗例と、その影響について説明します。
ターゲットが曖昧で広すぎる
ECサイトに限らず、集客戦略を立てる際には具体的なターゲット設定が必要になります。
例えば、「20代から60代の男女」「ライフスタイルに関心のある方」など、漠然としたターゲット設定では効果的な集客は望めません。
また、サイトデザインや商品説明の方向性も定まらず、結果として誰にも刺さらないコンテンツになってしまいます。
特にECサイトをオープンしたばかりの初期は、早く売上を作りたい思いから全方位的なアプローチを取りがちですが、かえって集客効率を下げる結果を招きます。
自社商品と親和性の低い集客手法を選択している
先述した通り、取り扱う商材やアイテム、ターゲット像によって選択すべき集客手法は変わってきます。
例えば、高単価なブランド品を扱うECサイトで、リスティング広告に過度に依存し、安価な競合商品と比較されやすい環境を作り、ブランドイメージを損なってしまうケースがあります。逆に、日用品や低単価の商品を扱うサイトで、インフルエンサーマーケティングに多額の費用をかけたものの、費用対効果が低くなった例もあります。
このように、集客手法が商品特性やターゲット顧客と一致していないと、効果が出にくく、リソースを無駄にしてしまうことがあります。
広告運用のコスト効率が悪い
多額の予算を投下していても、最適な運用ができていなければ費用対効果は悪化します。
具体例として、リスティング広告でキーワードを広範囲に設定しすぎた結果、ターゲット外のユーザーに広告が表示され、多額の広告費を費やしたもののコンバージョンに繋がらなかったケース等が挙げられます。
また、リターゲティング広告の配信期間が長すぎて、すでに購入済みの顧客に対して無駄な広告配信を続けているケースもみられます。
サイト訪問から購入までの動線設計が悪い
集客には成功しても、ユーザーが購入するまでのサイトの動線が複雑で離脱率が高いケースもあります。
例えば、広告や検索からランディングページに訪れたユーザーが、商品ページに辿り着くまでに多くのクリックが必要だったり、購入ボタンの位置がわかりにくい場合、離脱率が高くなります。
また、商品をカートに追加した後、入力フォームが煩雑で途中で購入を諦めるケースも典型的な失敗例です。
特に新規顧客向けには、会員登録を必須にするなどハードルを上げすぎて、購入率を下げてしまっているサイトもみられます。
集客に成功しても、訪問者がスムーズに購入まで進められなければコンバージョンには繋がりません。十分にサイト動線の設計することも重要です。
ECサイトへの集客を増やすために必要な観点
ECサイトの集客を改善するには、体系的な取り組みが重要です。この章では具体的な改善方法をみていきましょう。
ターゲットを明確に設定する
理想の顧客像を具体的に設定することが、効果的な集客の第一歩です。年齢や性別だけでなく、職業、収入、趣味、生活習慣、購買動機など、詳細なペルソナ設定を行いましょう。例えば、「30代後半の共働き夫婦、世帯年収800万円以上、オーガニック食品に関心が高い」といった具合です。
ターゲットが明確になることで、広告配信設定の精度が上がり、商品説明やクリエイティブの方向性も定まります。
既存顧客の傾向から、自社商品のターゲット像を探ってみましょう。
サイトの使いやすさを整える
集客の成果を売上につなげるには、訪問者がストレスなく購入できる環境作りが不可欠です。
商品検索機能の充実、カテゴリー構造の最適化、商品画像の見やすさなど、基本的な改善から始めましょう。特にスマートフォンでの表示は重要で、画面サイズに合わせたレイアウト調整や、ボタンの配置にも気を配る必要があります。
商品の詳細ページでは、購入判断に必要な情報を漏れなく掲載し、カート投入から決済までの導線をシンプルに設計することで、離脱率の低下につながります。
効果を測定し、改善を続ける
集客効率を高めていくには、GA4などの分析ツールを活用し、定期的な効果測定と改善が必要です。
アクセス数をはじめ直帰率、購入率、客単価など、重要な指標は漏れなくチェックしましょう。
広告運用では、広告文言やビジュアルのABテストを実施し、高いパフォーマンスが出る条件を見極めていく必要があります。
サイトの改善では、ヒートマップツールでユーザーの行動を可視化し、具体的な改善ポイントを特定します。
数値に基づく改善を繰り返すことで、効率的な集客と収益化が実現できます。
自社ECサイトの集客方法
自社ECサイトの集客では、各施策の特徴を活かしながら組み合わせることが重要です。
一般的な方法としては、短期的にリスティング広告などの有料施策で集客を行いつつ、長期的にはSEOやSNSなどのオーガニック施策に投資して、最終的にCPA(顧客獲得単価)を下げるパターンが一般的です。そして、リピート施策で安定化させ、運用を最適化していきます。
以下、もう少し具体的に紹介します。
リスティング広告(短期施策)
リスティング広告は、購入意欲の高いユーザーに即座にアプローチできる強力な集客手法です。商品名や関連キーワードで検索するユーザーに広告を表示することで、効率的に見込み顧客を獲得できます。
やること
- 広告文に商品の強みや特徴を明確に伝えることでクリック率を向上させる
- 入札価格の調整やキーワードの除外設定を行い、コスト効率を最適化する
- リマーケティング広告を併用して、一度サイトを訪れたユーザーに再アプローチすることで成約率を高める
短期的な集客に即効性があるため、広告費用を効果的に使いながら新規顧客を獲得しましょう。
SEO(長期施策)
検索エンジン経由の自然流入を増やすには、技術的な対策とコンテンツの強化が必要です。
やること
- サイト表示速度の改善や正しいHTML構造の実装をする
- 商品説明文を充実させる
- ユーザーの悩みに答える記事コンテンツを作る
SEOは成果が出るまでに時間がかかりますが、自然流入が増えることで広告に依存しない安定した集客が可能になります。
SNS運用(長期施策)
特にtoC向け商材では、InstagramやX(旧Twitter)などを活用したSNS運用が効果的です。フォロワーを増やし、ブランド認知を広げながら、信頼感を高めることができます。
やること
- 商品写真だけでなく、使用シーンやライフスタイル提案などの投稿を行う
- 動画コンテンツ(ストーリーズやリール)を活用し、商品の魅力を視覚的に伝える
- ハッシュタグ戦略や投稿時間の最適化で投稿の露出を最大化する
フォロワーとの対話を重視し、コメントやダイレクトメッセージへの丁寧な対応で信頼を築きましょう。長期的には、SNSからサイトへの自然流入も増加します。
メールマーケティング(リピート施策)
ECサイトの集客施策は新規ユーザーに向けたものだけではありません。1度購入している既存顧客へのアプローチは、コストを抑えて売上を作ることができる効率的な集客戦略といえます。
代表的なリピート施策がメルマガの配信です。過去の購入者に向けメールを配信することで、リピート購入を促進します。
CRMやMAツールを利用すれば、購入履歴に基づいて関連商品やおすすめ商品の情報を配信でき、追加購入につながりやすくなるでしょう。
メールマーケティングを行う際は、開封率を上げるためメールの件名や本文の工夫も重要です。また、配信頻度を最適化したり、特定の顧客にだけメールを送るセグメント配信を活用したりすることで、オプトアウト率も下げられるでしょう。
ECモールでの集客方法
ECモールの集客も、自社サイトの集客と考え方が似ています。しかし、プラットフォームの特性や使えるツールに違いがあるため、具体的な施策には違いがあります。
モール特有の機能や仕組みを理解し、効果的な施策を展開しましょう。
モール内広告(短期施策)
楽天市場やAmazonなど、各ECモールが提供する広告サービスを活用します。
商品検索結果の上位表示枠や、関連商品枠への広告出稿がメジャーです。モール内広告の特徴は、すでに購入意欲の高いユーザーが多いため、高い転換率(CVR)が期待できる点です。
広告費用は売上に応じた成果報酬型が一般的で、予算管理がしやすいメリットがあります。特に新商品の発売時期や、セール期間中は積極的な広告出稿で露出を増やすことで、売上アップにつながるでしょう。
モール内SEO(長期施策)
モール内SEOとは、ECモール内での検索結果順位を上げるための対策のことです。
商品名や説明文に適切なキーワードを含め、検索されやすい表現にする必要があります。特に商品タイトルは、ブランド名、商品名、主要な特徴を盛り込み、検索にヒットしやすいテキストを作りましょう。
またカテゴリー選択も慎重に行い、最適な商品分類に登録することで、目的のユーザーにリーチしやすくなります。
定期的にキーワードの検索トレンドをチェックし、商品情報を更新しましょう。
ECサイトの集客成功事例
成功を収めているECサイトには、必ず明確な集客戦略があります。
ここでは、実際のECサイト運営で成果を上げた事例を2つ紹介します。
北欧、暮らしの道具店
「北欧、暮らしの道具店」は、株式会社クラシコムが運営するECサイトで、北欧の家具や雑貨、キッチン用品など、暮らしを豊かにするアイテムを取り揃えています。
「北欧、暮らしの道具店」は、商品を販売するだけでなく、暮らし全体の提案を行うことで独自の地位を確立しました。特にオウンドメディアの活用に力を入れており、運営スタッフが制作する記事や動画は、商品の魅力だけでなく、その商品があることで得られる生活の価値や幸福感をわかりやすく伝えています。
具体的な成功要因としては、Instagramを通じて商品が使用される日常のイメージを視覚的に伝え、消費者の購買行動を後押しした点が挙げられます。
さらに、スタッフの個性が垣間見える運営スタイルもユーザーの共感を呼んでおり、月間200万人以上の訪問者を持つ人気ECサイトへと成長しています。
藤巻百貨店
「藤巻百貨店」は、元伊勢丹の伝説的なバイヤーであった故藤巻幸大氏によってプロデュースされたECサイトで、主に日本の職人が手掛けた逸品を取り扱っています。
2012年にサイトをオープンして以来、伝統工芸品や高品質の日本製アイテムを幅広く提供し、ほかにはない特別感を大切にしています。バッグや財布、衣服、伝統工芸品など、幅広いカテゴリの商品を取り揃えていますが、商品を並べるだけではなく、背景にあるストーリーや職人の思いを徹底的に伝えることにこだわっています。
藤巻百貨店では、季節ごとのテーマに基づいた特集ページを設け、消費者が商品を「物語」として楽しめるようなプレゼンテーションを行っています。例えば、「父の日のギフト」や「冬の温もりを感じるアイテム特集」など、時期に合わせたプロモーションにより、ユーザーの購買意欲を高めています。
ECサイトの集客・広告戦略はプロに相談するのがおすすめ◎
ECサイトの集客には、さまざまな課題と改善のポイントがあります。多岐にわたる集客手法から最適な選択をすることの難しさ、KPIの設定と管理、ターゲット顧客の可視化、競合との差別化など、ECサイト担当者が直面する課題は少なくありません。
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