時代動く。ファーストリテイリングの次なる一手。アクセンチュアの協業

石郷“145”マナブ

ファーストリテイリング、アクセンチュア協業に見える、ECの多様化と今後。

 株式会社ファーストリテイリング(代表取締役会長兼社長:柳井 正、以下ファーストリテイリング)とアクセンチュア株式会社(代表取締役社長:程 近智、以下アクセンチュア)は、昨日、ファーストリテイリングの消費者向けのサービスにおけるデジタルイノベーションの実現に向けて協業していくことを発表した。また、両社の最終合意を経たのち、将来的に合弁会社を設立していくことを目指す、としている。

 ファーストリテイリングは、もとより、ユニクロを中核ビジネスとして、ジーユー、セオリー、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タム、J Brandなど複数のブランドをアジア、欧州、米国などで展開中だ。そこに加え、ファーストリテイリングは、今回の協業で、チャネル横断で、これまで以上に消費者一人ひとりのニーズに応えるべく、モバイルやアナリティクス、クラウドといったテクノロジーを活用し、アクセンチュアと共に既存のビジネスモデルのデジタル化を進めていく、としている。

 具体的には、アクセンチュアが、CRMやSCMなどのファーストリテイリングの基幹業務システムのクラウドへの移行やEコマースのプラットフォーム構築など、消費者インサイトを得ることのできるオペレーション基盤やIT基盤の構築を支援する。また、アクセンチュアでは、ファーストリテイリングがアナリティクス、モバイル、クラウドなどのテクノロジーに関する専門家を採用・育成していくための取り組みにも貢献していく、と意欲的な姿勢も見られる。

 さらに、両社は、そこにとどまることなく、共同でテクノロジーやイノベーションに関する学術機関や企業、有識者や起業家などが持つ最先端の事業構想や先進事例を世界中から収集し、ファーストリテイリングの将来の消費者サービスに反映していくことを目指す、とし、かなり踏み込んだ動きとなっている。

リアルとネットがボーダーレスの時代に

 これにあたり、ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井 正によれば、「ファーストリテイリングは、バーチャルとリアルが融合し、お互いの機能がより高まった新しい産業を創造していきたいと考えています。このたびのアクセンチュアとの協業により、従来の小売業の枠を超えた全く新しい産業の可能性を国内外に示し、世界最高水準のビジネスモデルを構築するとともに、デジタル時代に求められる革新的な消費者体験を実現するための店舗の構築や物流網の整備、イノベーションを創出できる人材の育成に取り組んでいきます。新しい産業の変化は日本だけでなくグローバルな波であり、世界中で事業展開を進める企業にこそ、ビジネスの仕組みを根本から変える力があると信じています」と述べている。


 また、アクセンチュア 成長市場担当 グループ・チーフ・エグゼクティブ ジャンフランコ・カサーティ(Gianfranco Casati)は「デジタル時代の消費者は実店舗でも、オンラインでも変わらないシームレスに統合された顧客体験を求めています。ファーストリテイリングのような先進企業ではこうした高度化する消費者ニーズに応えるため、積極的に全社的なデジタル化を推進しています。アクセンチュアはこの度の共同事業を通じて、ファーストリテイリングがデジタル時代の革新的なアイデアを事業モデルとして昇華させ、常に進化する次世代の経営モデルを構築していけるように支援をして参ります」と説明する。

  思うに、実店舗をあらゆるところに積極的に展開し、様々な層にアクセスし、売り上げを作ってきたファーストリテイリングが、次なるフェーズとして、自ら開拓した顧客のライフスタイルにより密着し、利便性を向上させるべく、ネット通販を効果的に活用しようということだろう。これは、「ECのミカタ」でも書き続けてきた、オムニチャネルなど、リアルとネットのボーダーレスな時代になっていること、それを象徴する出来事と言っていいだろう。

(参考記事)JECCICA講演大盛況!カメラのキタムラ、ECも実店舗も店員も大変貌!?
http://ecnomikata.com/ecnews/detail.php?id=5352


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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