現金対応開始、イオンが進めるWAON決済圏

ECのミカタ編集部

WAON POINT、何が新しい?

 イオン株式会社(以下、イオン)は、2016年4月9日(土)、共通ポイント「WAON POINT」サービスを、2016年6月より順次開始予定であることを発表した。このサービスの開始にあわせ、「WAON POINTカード」(入会金・年会費無料)を新たに発行、これまでイオングループ各社で運営していた会員組織(述べ会員数約1億人、カード57種類)を順次統合していく。

 「WAON」は、電子マネーの一種で、基本の「WAONカード」の他、クレジットやキャッシュカード、その他様々なサービスと提携、イオングループをはじめ幅広い加盟店を有している。これまではカードにチャージを行い、加盟店での支払いに「WAON」を使うことにより「WAONポイント」が貯まっていく形だったが、今回の「WAON POINT」で、現金での支払いにも対応できるようになる。「WAON POINTカード」の他、イオンカードでの現金支払いにも対応する。

 電子マネーの市場は年々拡大している。総務省調査の「平成27年番情報通信白書」によると、2014年のIC型電子マネーの決裁件数は約40億4000万件、決裁金額は約4兆140億円に達し、5年間で決裁件数は約3.5倍、決裁金額は約2.9倍に成長している。電子マネーに関する各種調査を見てみると、よく使われている電子マネーは、「Suica」「PASMO」などの交通系を別として、発行枚数が多いのは「楽天Edy」、決済件数では「WAON」「nanaco」が上位に来ている。

 電子マネーを利用する理由としては、大きく2つのことがあげられる。1つは、小銭などが要らないという利便性、もう1つはポイントなどのお得さだ。特に利用者がどの電子マネーを選ぶかという点では、後者が重要なポイントになるだろう。

WAONの強さとその特徴

 「WAON」の強さは「オープン化戦略」と言われる。「WAON」を利用できる店舗は、イオングループだけにとどまらない。利用者が、全国各地、日常の買い物でいつでも利用できるように、多くのサービスと提携を行っている。また、利用者が「WAON」を利用することで、カード発行企業に一定のフィーが払われたり、提携企業がある程度自由にボーナスポイントを組んだりすることもできる。こういったオープンな姿勢が、「WAON」を利用する魅力を引き上げることにつながっているのだ。

 また「WAON」の特徴として「地域貢献」という面がある。今回の「WAON POINT」のコンセプトにも「家族や地域社会とつながり、健康生活も応援するポイント」と、地域への貢献が含まれている。「WAON」はこれまで、地元商店街と協業して地域の商店街で地域通貨的に「WAON」を使えるようにしたり、地方自治体が発行し値自体に還元される「地域WAONカード」の発行を行ったりしてきた。こういった取り組みは、ブランド作りになると同時に、地域に根ざすことで、一時的ではない末長い利用につなげることになるだろう。

電子マネーとネット通販

 以上のように、成長を続ける電子マネー市場ではあるが、 総務省の「平成26年通信利用動向調査」によると、ネット通販における決済は、クレジットカード払いが63.7%と大きな割合を占めており、電子マネーの利用は4.4%に過ぎない。確かに、電子マネーは実店舗で使うイメージが強いが、それはこれまで、ポイントを利用するには事前チャージが必要だったからという事情もあるだろう。

 「WAON」で今回、現金支払いが可能になることで、ネット通販における電子マネー利用が増加する可能性は十分にある。特に、イオングループとネット通販ということで考えると、イオンネットスーパーで利用できるという点が大きい。また、今後、新たな提携が行われる可能性もある。これまでネット通販でポイントというと、大手モールが大きな力を持ってきたが、実店舗ベースのポイントがネット通販に参入してくることで、また違う勢力が生まれるかもしれない。


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