アパレルECの未来~技術で挑む、国産メーカーの魅力~

福島 れい

拡大するアパレルECの今と、そこでサービスを展開する5社に迫る連載企画!
今回は、長野に工場を構え、シャツの生産を行うフレックスジャパン。メーカーならではの技術を活かしたECを取材しました。

【目次】
・アパレルECの未来 1章~概論:今を知る~
 (https://goo.gl/uFvr2C
・アパレルECの未来 2章〜メイキップ:オンラインフィッティング編~
 (https://goo.gl/PabmX5
・アパレルECの未来 3章〜エアークローゼット:日常生活で試着編〜
 (https://goo.gl/1PbAlN
・アパレルECの未来 4章〜SHOPLIST:個別接客編
 (https://goo.gl/I32BBn)
・アパレルECの未来 5章〜ブランドゥール:古着EC編〜
 (https://goo.gl/Du27jj
・アパレルECの未来 6章〜フレックスジャパン:国内生産元編〜

生産者の視点で見るアパレルEC、国産技術を活かす

 あなたが今、着用しているその服、どこで作られたかご存知だろうか?デザインや素材、サイズを気にする人は多いと思うが、生産場所を気に掛ける人は少ないように思う。実はそれは記者も同じで、どこでどんな人が作ったものなのかについては今回の取材までほとんど気にかけてこなかった。

 改めてアパレル製品の生産に目を向けてみると、生産工場をコストの安い海外に拠点を移す流れ等を受け、1990年に50.1%だった国内生産比率は2009年に4.5%まで低下している。しかし縮小しつつありながらも、そこには高い技術を活かし、質の高い製品を提供し続ける国内の生産工場がある。今回注目したいのは、国内の生産工場が持つ高い”技術力”とその技術を表現する場としてある”EC”だ。

 自社の製品に強いこだわりと誇りをもって製造するメーカーはECをどのように活かすのか?メーカーの視点で描くアパレルECの未来に迫る。

メーカーECが実現、最高の”着心地”と”ジャスト・サイズ”

 今回取材したのは、フレックスジャパン株式会社 FS事業部 副責任者 堤 靖樹さん。その始まりは江戸時代の繊維商「加納屋商店」までさかのぼる、まさに老舗だ。時代の変化に合わせ、軍需衣料品や下請け工場、海外工場を展開するなど柔軟に対応、1952年以降はビジネスシーンに欠かせない”シャツ”の製造・販売を続けてきたという。そんなフレックスジャパンが何よりこだわるのは、”着心地”の良いシャツ、”ジャスト・サイズ”なシャツだ。

 ”着心地の良いシャツ”を実現するのは、70余年に渡り培われた高い技術。「平坦ではない身体に直線同士を縫い合わせた製品では、良い着心地が実現できません。”直線と曲線””曲線と曲線”を縫い合わせ立体的に仕立てることによってのみ、身体にフィットした着心地の良い製品が出来上がるのです。」と堤さん。曲線同士を縫い合わせるのは相当の手腕が必要だが、それを担うのは十数年以上の経験を誇る熟練の技術者だ。70余年に渡り培われた技術がこだわりの”着心地”を実現している。

 また、”ジャスト・サイズ”へのこだわりとして、興味深い話をしてくれた。「スーツやシャツというのは、紳士たるもの・・・というようなしっかりしたドレスコードがあるもの、スーツの袖からシャツが1㎝だけ覗くことを”1㎝の美学”と呼ぶほどに、ジャスト・サイズに対するこだわりは強いのです。」とサイズに掛ける熱い思いを語る。袖口から覗く1㎝というと、着用者の身体にぴったり合っていないと実現しないものだが、”どんなに素敵なシャツであってもサイズが合ってなければ着用している人の魅力も半減してしまう”という考えのもと、徹底的にこだわり抜いている。

 ”着心地”、”ジャスト・サイズ”というこだわりは、国内生産ならではの高い技術があってこそ実現するものと言えるだろう。「日本製だから高い」ではなく、「高いなりの理由がある日本製を選ぶ」フレックスジャパンが目指す国産シャツのあり方だ。

 このフレックスジャパンが持つ技術に”EC”が加わると何が起こるのか?それを見ていこう。フレックスジャパンがメーカーだからできること、それはECサイトでの”オーダーメイド”シャツの販売だ。オーダーメイドというと価格が高い 、納期が遅い、面倒くさいなどを理由に敬遠する人も多いそうだが、メーカーだからこそ、安く、早く、手軽に購入できる仕組みが整っている。価格と納期に関して言えば、工場に直接注文が入るためすぐに製造を開始でき、在庫を抱えることもないため、価格も安くなるというわけだ。

 ここに手軽さを加えるのが、フレックスジャパンの工夫だ。例えば「らくらくオーダー」。これは生地とデザインの組み合わせで作られた商品イメージの中から気に入ったものを選び、自身のサイズを添えて注文、注文を受けてから製造を開始するというお手軽オーダーメイドシャツだ。ぴったりサイズのシャツがほしいものの、従来のように細かく指定するのは面倒という人から人気を集めている。

 もう一つ、特徴的なものとして「自動採寸サービス」がある。これは以前ECのミカタ編集部がモニターとして参加し、記事にしているのでご存知の方もいるかもしれないが、これは着用者の立ち姿を撮影したたった2枚の写真から、オーダーメイドシャツを製造するというサービスだ。その詳細な結果には、感動を覚えた。
※自動採寸サービスのモニター記事はこちらから→(https://goo.gl/pv3s1z

 これらのサービスは”EC”でシャツを販売するからこそ求められ、実現するサービスのように思う。ECの特性上、在庫やスペースを持たずに多くの商品を展示できるため、メーカーが持つ豊富な生地やデザインをしっかり表現、楽しんでもらうことができる。一方オーダーメイドである以上、必須になる採寸については、手軽に、正確な結果を得られるよう工夫を凝らしているというところだろう。

 フレックスジャパンにとってECとは、自社の技術、日本製の価値を表現する新たな場だ。古きから伝わる技術に、新しい”EC”という文化が光を当てる。双方の良さが活きてこそ、アパレル、またアパレルECの未来が輝くのではないだろうか?


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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