スイーツECが届けるもの~働き方の変化と作り手の幸せ~

福島 れい

株式会社ECホールディングス 代表取締役 井関 貴博さん

見た目の可愛らしさの一方、販売にはハードルも多いスイーツEC。そんな「スイーツECは何を届けているのか?」に迫る連載企画!今回は、スイーツ・ベーカリー専門のECサイト構築パッケージを提供する株式会社ECホールディングスを取材しました。

 かわいらしい見た目と甘い香りや味。スイーツの魅力と言えばこれらを想像する方が多いのではないだろうか。このスイーツの魅力をECで届けるには、スイーツECならではの困難があり、克服するための工夫が必要になる。そこで今回は、スイーツ・ベ―カリー分野向けのECサイト構築パッケージ「EC Challenge」を提供する株式会社ECホールディングス 代表取締役 井関 貴博さんにスイーツECならではの難しさと、それでも取り組む意義を伺った。

スイーツECが抱える”生もの”ゆえの課題

 今回、井関さんに取材依頼をしたのは、「EC Challenge」がスイーツECに特化した唯一とも言えるECサイト構築パッケージだったからだ。井関さんは他の商材では課題とならない、スイーツECならではの難しいポイントとして”温度帯”、”配送”、”製造カレンダー”の3つを挙げる。

 購入するときに気にかけることは少ないが、ほとんどのスイーツ店ではクッキーなどの常温保管商品、ケーキなどの冷蔵保管商品、アイスクリームなどの冷凍保管商品など温度帯の異なる様々な商品を扱っている。そのすべてを適切な温度で管理、配送するのは決して簡単なことではないのだ。

 例えば発送時、送料をできるだけ抑えるため、”同梱”する場合が多いが、温度帯が異なる商品では骨の折れる作業となってしまう。クッキー等であれば温度帯に関わらず同梱できることも多いが、もし、食感を売りにする冷蔵保管商品を間違って冷凍便で送ってしまったら、せっかくの商品が台無しになってしまうのだ。このように商品の組合わせによって判断が必要になるため、商品数、注文件数が多ければそれだけ負担が大きくなるのに加え、発送ミスのリスクも高まる。
 
 さらに気を遣うのが、製造・材料仕入れのタイミングだ。賞味期限が短いスイーツは作り置きをすることができないため、仕入れや製造は、注文状況に応じたスケジュールに従って行う必要がある。こうした管理を行うのが製造カレンダーだが、人力でカレンダーを最適な状態に保つのは、その工数を考えれば決して賢い選択とは言えないだろう。

 見た目がきれいで、おいしい、少し幸せな気分になれるスイーツは、実はこうした数々の問題を越えてお客様の手元に運ばれているのだ。「EC Challenge」はこうしたスイーツECならではの課題に対し、システムでサポート、スイーツECの普及・発展に貢献している。

スイーツECが届ける”幸せ”、食べる人にも作る人にも

 ”温度帯管理”や”製造カレンダー”のことを思うと、スイーツECはハードルの高いビジネスのようにも感じるが、そのニーズは拡大する一方だ。その魅力に迫るべく、「スイーツECは何を届けているのでしょう?」そう問いかける記者に、「食べる人にも、作る人にも幸せを。」と井関さんは答える。これは人々の心を魅了するスイーツの華やかさの裏側にある厳しい労働環境を知るからこその言葉だ。

 クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデー。これまでに少なくとも1度は、この日にあわせてスイーツを購入した経験があるのではないだろうか?スイーツ業界の売上の約5割はこのたった3日間が占めるのだという。つまり、スイーツ業界で働く人の業務もこの3日間に集中するということだ。その多忙さを考えただけで目が回る思いになる。しかし、それにも関わらずスイーツに携わる人は「大切なイベントの日にスイーツで喜んでもらいたい」と一品一品に想いを込めて作っているのだという。

 「作る人にも幸せを。」井関さんがそう答えたのは、スイーツECによって、イベント以外の日にもスイーツが購入され、業務の偏りが改善される可能性を秘めているからだ。「スイーツをネットで売るというのは、1年中売れるギフトができたようなものです。冷凍しておいしいスイーツや地方ならではのスイーツが全国で売れる。これは働き方にも変化をもたらすでしょう。」と井関さんは話す。スイーツECが作り手に届ける幸せは、想いを込めて作ったスイーツを全国の人に1年を通して楽しんでもらえること、そして無理のない働き方が実現することだ。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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