独占!ペイパル、ヤマダ電機ECにID決済導入の真意

石郷“145”マナブ

セキュリティと安心感、クレジットカードのいらないPayPal、今こそ、飛躍の時

 PayPal Pte.Ltd(以下、PayPal)は、株式会社ヤマダ電機(以下、ヤマダ電機)が運営するネットショップ「ヤマダウェブコム」に「PayPal」をデジタルウォレット(ID決済)として導入したとの発表があった。これからのECにとって重要な意味合いを持つ「ID決済」。PayPalの姿勢を確認するべく、直接、PayPal杉江氏に話を聞いてみた。

 今回の導入を考える上で、注目したいのはヤマダ電機の「ヤマダウェブコム」にある「ゲスト購入」。これは「ヤマダウェブコム」会員ではないユーザーが、会員登録をすることなしに購入できるというもの。当然、会員ではないので、改めて、 購入者情報等を入れなければならなく、手間はかかってしまう。そこで、PayPalのボタンを作り、そこをクリックすれば、PayPalアカウントを持った消費者であれば「ペイパルID」と「パスワード」 を入力するだけで、パッと情報がそこの画面に記入される。自分の個人情報を知らないうちに抜かれるということなく、確認して安心に購入へと進んでいけるのだ。

※配送先情報等は当然、店側に行く。ただ、この購入者情報は、会員登録しない限り、「ヤマダウェブコム」が配送の手配の目的以外使われることはない。また、購入画面においては、一緒に「会員登録をする」というボタンがあるので、それを押すことで、そこで簡単に入力された情報で、「ヤマダウェブコム」 会員にもなれるのだから、便利だ。

 「最近、スマートフォンでECを活用する人が増えているんです。」と杉江さん。彼の話を伺っていて、感じたのは、スマートフォンが主流になってきている世の中においては、このような決済における取り組みが重要な意味合いをもつのではないかということだ。事実、criteoさんの調査によると、2015年1-3月期において、国内のEC取引におけるトラフィックの51%がモバイルとなり、初めてPCを上回った。最近では、ECをスマホで活用するという事例が増えていて、その際に、いちいちクレジットカードを引っ張り出して、情報を記入するなどということは考えずらい。だからこそ、このIDでサクッと購入ができるのが、良いのである。

ECに決済が重要になってくるのは、データが示している

 そして、アメリカでのデータ(出展元は *5 Baymard Institute State of E-Commerce Checkout Study 2012 (http://baymard.com/checkout-usability/benchmark )によれば「物販することになぜそんな個人情報を出すのか?」というのが普通だという。事実、日本のネットショップのように会員登録して購入する例は日本ほどは多くは見られないようだ。逆に言えば、会員登録する習慣がないからこそ、海外では特に、PayPalの支持者が多いということを裏付けている理由でもある。お客様が抱くセキュリティの不安などを考えれば、日本においても、もっと会員登録にしばられることなく、商品を購入する環境があっても良いだろうし、あれば、もっとECが発展する可能性を秘めている。

 複雑な操作、セキュリティの問題は、日本でもリアルに「カゴ落ち」という問題で露呈している。データ(*2 BI Intelligence “Shopping Cart Abandonment Study – March 2015”)でも、カゴにまで商品を入れておきつつも、結果、購入しない「カゴ落ち」が年々増えていることが明らかになっている。だからこそ、今回のヤマダ電機の決断は、そうした動きを受けてというのもあるのではないか。先ほど触れたとおり、スマホが普及すれば、ますます手間のかかる行動が増えるほどに、購入者が減っていく。今回のPayPalをID決済を「ヤマダウェブコム」に導入するのは必然だったのかもしれない。

 実際、「ヤマダウェブコム」では、複雑な操作を避けるため、PayPalのIDで簡単に記入された購入者情報を確認したあとは、すぐに決済の画面へと遷移するようになっている。カゴに入れる動作すら、スキップされているので、購入完了までのフローが実に簡潔。普段使い慣れたPayPalのアカウントだから安心であることもあって、こうした「カゴ落ち」の心配はある程度、防げるというわけだ。

 そこに加えて、PayPalを利用した場合、クレジットカード番号を店側に渡すことなくカード決済できる、 という安心感がある。例えば、今回のPayPalのIDを使って簡単に入力された情報で会員登録をしても、そもそも、PayPalはクレジットカード番号を直接ショップ側が必要としないカード決済なので、店舗にクレジットカードの情報が流れることはない。クレジットカードにおいて危険なのは、店舗自体にハッカーが攻撃した際に、そこからクレジットカードの情報自体が漏洩してしまうことなのだから、改めて、PayPalの魅力がそういう意味でも引き立つ。

 様々出てくる決済の中で、あくまでPayPalはその一つに過ぎないが、しかし、クレジットカード番号を共有する必要がないというメリットと、クレジットカードをいちいち財布から取り出して入力する手間がなくても済むような、不正使用を未然に防ぐ万全な環境は、他にはない要素だ。その意味でEC業界においてもPayPalを活用することが店舗にとってもメリットになることはありそうだ。ヤマダの今回の導入は改めてそれに気付かせくれる格好の機会となったのだ。

企画・構成 石郷“145“ マナブ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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