Amazonレビュー情報開示命令へ、実名化を求める声も

ECのミカタ編集部

顔が見えない商売であるECでは、ECサイトに寄せられるレビューがとても重要である。消費者にとってはそのレビューが商品を購入するための判断材料になったり、また、EC店舗にとっては店舗を運営していくことや新商品を生み出す上でのヒントになる。そんなレビューを巡って、Amazonを対象にとある裁判が行われ、ついに決着がついた。

Amazonついに情報開示へ、誹謗中傷犯を特定

アマゾンジャパン株式会社(以下、アマゾンジャパン)が運営する「Amazon」にて、商品に対するレビューを巡り裁判が行われていたが、4月8日、ついに判決が確定した。どのような裁判かというと、Amazonに投稿されたとある本のレビューを巡って、その本の著者が所属する都内のNPO法人が本に対するレビューの内容により「名誉を傷つけられた」とし、アマゾンジャパンに対してレビュー投稿者の情報開示を求めていた一件だ。

アマゾンジャパンは、サイトの主体運営が日本だと認めたうえで「書籍が事実に反しているとは言えない」などと反論していたものの、東京地方裁判所は、「書評が真実だとうかがわせる証拠はない」として、レビューが名誉を傷つけるものだと認め、投稿者の名前や住所などの情報を開示するよう命じたことで決着がついた。

通常、匿名ユーザーを特定する場合には、基本的に2段階の手続きを踏まなければならない。

1段階目:サイト運営会社にIPアドレスの開示を請求
2段階目:プロバイダ(接続業者)にも住所・氏名の開示を請求

しかしこの方法は期間も費用もかかってしまう。なので、今回のような1段階での情報開示を認めた判決は、”画期的”と評価されつつも、一方で”言論弾圧”といった心配の声が上がっている。

しかしなぜ、情報開示が1段階のみで可能なのだろうか。それは、Amazonが単にIPアドレスを保有しているだけではなく、通販サイトであることからアカウント情報として一定の正確性を期待できるユーザー情報も保有していることから、今回の”情報開示の簡略化”が認められたのだという。

EC必須ツール”レビュー”の重要性

Amazonのレビュー投稿方法に対して消費者からは、「購入者限定」や「実名制」にすればいいのに、という意見が上がっている。というのも、例えば楽天株式会社が運営する「楽天市場」でのレビュー投稿は購入者限定に限られており、不特定多数の人による関係のないレビュー投稿や誹謗中傷などを書き込むことが難しくなっている。ところがAmazonは、ログインさえしてしまえば、誰でも自由に商品に対するレビューを書くことができてしまう。

とはいえ、この一件で消費者は、レビュー投稿内容によって自分もサイト運営側に個人情報を開示され訴えられる恐れを、少なからず感じただろう。

だが、多くの店舗が出店(出品)するモール、そしてEC店舗において、消費者のレビューは他の消費者にとってもその商品を選ぶきっかけとなり、また、また、店舗や出品者にとってもレビューが次の商品作りに活きる貴重なヒントになるわけで、今後、消費者がそういった真っ当なレビューに対してまで消極的になってしまうのは好ましくない。

そこで、今回の一件を受けて、アマゾンジャパンはもちろんのこと、EC業界全体として、消費者がレビューをしやすい環境を整えることの重要性が見直されると良いと思う。ECは、店舗と消費者がお互い顔を合わせることができない環境なだけに、レビューのような両者を繋ぐツールが重宝される。

今後、アマゾンジャパンに限らず、様々なモールが消費者と店舗が繋がりやすい環境作りに注力し、ECの利便性と、多くの店舗の発展に貢献していってほしい。


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