【続報】Amazonセラーカンファレンス、販売事業者が語る活用法

福島 れい

 先週金曜、Amazonセラーカンファレス2016が行われ、総勢500名の販売事業者が出席した。会場では、社長 ジャスパー・チャン氏の挨拶、ディレクター兼セラーサービス事業本部 事業本部長 星 健一氏の講演、Amazonマーケットプレイスで成果を上げる販売事業者によるトークセッションが行われた。星氏の講演については、すでにこちら(https://goo.gl/nK7YWy)にてお伝えしたため、ここでは、販売事業者によるトークセッションと、登壇者へ独自取材をお伝えしたい。

トークセッションで語られたAmazon活用法とは?

 まず2名の登壇者の紹介から。1人目はGBFT株式会社 代表取締役 松本 尚也さん。5年ほど前から、家電や日用品などの型番製品を取り扱っているという。2人目は株式会社東和食彩 山田 雅子さん。自社で開発する「非常食」を販売している。

Q.Amazonマーケットプレイスでの販売をはじめてどのような印象を持ちましたか?

A.松本さん:Amazonマーケットプレイスでは、資金力がないと売れないというイメージを持っていたが、想像していたよりも早く売れるという印象でした。

  山田さん:販売を開始してから半年間は月に1件ほどしか注文がありませんでした。ある時、別の販売チャネルで売れ残りが発生し、Amazonマーケットプレイスで思い切った値下げ販売をしたところ、非常に売れました。一度口に入れていただけるとおいしさを分かっていただくことができ、レビューがたくさんつきました。それ以降は値下げをすることなく、定価で売れるようになりました。

Q.Amazonの活用方法を教えてください。

A.松本さん:FBAを活用しています。弊社は少人数で経営していますので、自社では発送作業が追いつきません。また、越境ECも行っていますが、時差などを考えるとFBAなしでの販売は現実的に不可能です。FBAの利用コストは気にかかることかと思いますが、閑散期にコストを抑えられるという意味で助かっています。

 また、アマゾンレンディングも活用しています。民間の金融機関融資とはスピード感が違います。仕入れの際に、あと3時間で決めなければならない、という急に融資が必要になったときでも、クリックだけで融資を受けられるのは使いやすいですね。

  山田さん:シンプルな料金体系が気に入っています。Amazonでは価格を下げれば売れます。その際の赤字分を広告費と割り切って販売し、商品のブランディングをしています。

 また、レビューで消費者の声がしっかり返ってくるのも助かっています。例えばカレーのレビューに「おいしいけど辛すぎる、水のない被災地では辛すぎは困る」というものがありました。このレビューをヒントに水をつけた商品を開発するなど、レビューを商品開発に活かしています。

Q.Amazonを通じて実現したいことを教えてください。

A.松本さん:型番商品以外の商品を販売していきたいと思っています。日本の商品を海外で販売したり、海外の商品を日本で販売するなどもっと越境ECに積極的に取り組みたいと思います。

 山田さん:アメリカに進出したいと思います。日本の食文化を世界に伝えたいという夢があります。Amazonあってこそ実現できることだと感じています。

松本さん・山田さんに独自取材、Amazonの魅力とは?

トークセッションに登壇された松本さん、山田さんに講演後にお話を伺うことができた。

 松本さんは、EC事業を始める際に最も大変なこととして「資金集め」を挙げ、販売にとどまらず資金支援までしてくれるAmazonの魅力を語った。また、トークセッションでも語っていたように少人数での運営にはFBAの利用が活きていると改めて説明してくれた。その上で、「Amazonは様々なサービスがありますが、弊社に合うものしか使っていません。それができることがAmazonの強みだと思います。」とした。

 山田さんには、Amazonでのレビューを積極的に活用する意図について伺った。東和食彩ではレビューを「神の声」として大切にしているという。これは商品を購入してくれた上に、魅力を紹介してくれ、さらに悪いところがあれば率直な意見までくれる、そんな貴重なものはないという考えのもとだ。レビューが元になり開発された商品が多数販売されているのもこの考えがあってのことだという。

 また、トークセッション中に「値下げは広告費だと割り切っている」という発言について詳しく伺うと、これは東和食彩の「商品力」があってこそ実現するものだと理解できた。Amazonの特徴として、値段が安い商品やレビューが多い商品、知名度のある商品が売れるというものがある。つまり、自社開発商品の場合、知名度が低いため売れにくいというわけだ。それならばはじめは赤字覚悟で安く売り、まず認知を高める。その際に商品を気に入ったお客様がレビューを書いてくれ、売れるようになる。この仕組みであればはじめの値下げ分以降、広告費が必要ないのだ。

 Amazonセラーカンファレンス2016では、FBAやAmazonレンディングをはじめ多数の販売事業者向けサービスが紹介された。松本さん、山田さんのお話から感じることは、この多数のサービスの中から自社に合った必要なものだけを利用できることこそがAmazonの強みだということだ。自社の商品特性や従業員数などを考慮し、独自の戦略をもって販売する。この自由度こそがAmazonの魅力のように思う。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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